第7話 そして、交渉で……
僕の所属は紛れもなく竜騎士団だけど、ドラゴンテイマーの腕を買ってもらっているので、戦いはどう頑張ってもせいぜい自衛程度の事しかできない。
実際、そんな強いわけではないし、そういうのは得意ではないので、これでいいと思っている。
今もこうしているように、地上で戦っている連中のドラゴンたちを、上空で統制を取りながら上空待機させているのも、僕の大事な仕事だった。
「みんな無事だといいけど。ドワーフは、戦士としても強い事で有名だしね」
激しくもみ合っている眼下の様子を見つめて、僕は首から下げている笛を手にした。
「押し合っている間に、揺さぶりをかけておこう」
僕は笛を吹き、先頭になって全てのドラゴンを率いて地上スレスレを飛び抜けた。
武器を持って押し合いへし合いしている双方の頭を、ドラゴンの群れが飛び抜けていった形になったのだが、威嚇のつもりが逆効果になってしまった。
「いった……やっちゃったか」
やはり、ドワーフは強かった。
僕の左肩には、なにかで抉られたような傷痕が出来ていた。
「矢が掠ったかな。かえって、ドワーフのテンションが上がちゃったか……」
雄叫びを上げながなら、いよいよ本格的な斬り合いに発展しようかというドワーフの一団をみて、僕は洞窟を指差して笛を吹いた。
全てのドラゴンが一斉に動き洞窟の前に正対すると、ほぼ同時に派手な光を放った。いわゆるブレスだ。
ドラゴン族では最弱といわれているが、それでもブレスはブレスだった。
光が洞窟周辺の斜面に突き刺さった瞬間、爆発と共にちょっとした土砂崩れが発生した。
「あれ、洞窟が半分埋まっちゃった。計算違いだね」
全員の動きが止まり、特にショックだったらしいドワーフなど、手にしていた武器を取り落としてしまっていた。
「次やったら、また計算間違えて今度はどうなっちゃうかな。さっきもいったけど、僕たちは貸して欲しいんだ。そこのいかにも魔法使いっぽい人と、誰か話してみたら。ダメなら、殴り合いでケリをつけるしかないけどね」
僕は首から下げた銀色の笛を手に、笑みを浮かべたのだった。
金鉱を巡る人間とドワーフの争いは、結局話し合いで決着がついた。
それぞれの代表が覚え書きを交わしている間、僕はもみ合いで怪我をした人間やドワーフを回復魔法で治療していた。
竜騎騎士の面子は面倒がって魔法を覚えようとしないか、ど派手で見栄えがいい攻撃魔法しか使えなかった。
必然的に、僕が細々したところを埋めていくしかったのだった。
「よし、総員帰投する。朝メシがまだだからな」
竜騎士団長が自分のドラゴンに跨がった。
「……こんなの、朝メシ前っていいたいんだね。微妙に分かりにくいな」
僕は小さく笑い、ファルセットの背に跨がった。
程なく全員飛び立ち、上空で編隊を組んで、一路アレス王国の城を目指した。
「今回の出動は楽だったね。いつもこうだといいけど!」
僕は小さく笑った。
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