第20話 実は魔法も少々

 事実上、城に軟禁状態となった僕だったが、国王様の言葉通り午後には無事に解除された。

 特に作業もなかった僕は、なにやら危ない場所に出かけたみんなやドラゴンの負傷に備え、何棟もある厩舎を取り囲むように魔方陣を描いていた。

 これが無駄な事になる事を祈りつつ……。

「よしっと、これで大丈夫だね」

 厩舎の周りを囲むように魔方陣を描き終え、僕は小さく息を吐いた。

 魔方陣を描くために必要だったので、僕は久々に取り出した杖を片手に小屋に向かった。

 何かと便利だと手を出した魔法だったが、ついのめり込んでしまい、国がやっている魔法能力検定試験に合格したことで、大っぴらに魔法使いという事も許されていた。

「魔法使いか……。なんか偉い人っぽくて落ち着かないな。ドラゴンテイマーが一番だよ。自然でね」

 一人笑い、僕は広大なスペースを進んでいった。


 団長が遅くなるといった通り、夕方から夜に変わっても、戻ってこなかった。

「遅いな。心配だよ」

 杖を出したついでに、僕は小屋の外で明かりの魔法を何回も使った。

 真昼とまではいかないまでも、これで上空からも見やすくなったはずだ。

 そのままどれほど待った事だろう。まるで厩舎に突っ込むかのような勢いで、続々とみんなが帰ってきた。

「うわ、ただ事じゃないぞ。正規の安全な着陸じゃない!」

 僕は杖を片手に厩舎に向かって走った。

 続々と戻ってきたみんなは、程度こそ差はあったが手傷を負っていた。

 僕はそれをみて、迷わず呪文を唱え、杖で魔方陣を描いている線を突いた。

「……描いておいてよかった。一応、これは禁術に指定されちゃったけど」

 僕が小さく笑うと同時に、魔方陣が優しく光った。

 次々に戻ってきたみんなは、魔方陣に飛び込むように着陸していった。

「それにしても、なんでこんな……」

 術が解けないように気をつけつつ、僕は呟いた。


「そうだな、よくある小競り合いに巻き込まれたといったら分かるかな。大した事ではないのだが、油断していたものでな。竜騎士の姿をちらつかせれば、敵が静かになると思ってであろうが出撃命令が出たのだ。しかし、それが逆効果になってしまってな。怪我はしたが問題ない」

 結局、全て落ち着いたのは、夜も明けて空が白んできてからだった。

 僕の魔法で全員の傷は治り、いつも通りの朝といえば朝。小屋で休憩していた、団長がなんとなくそんな話をしてくれた。

「しかし、あんな魔法もあったのだな。まあ、お世話にならない方がいいが、今回は助かった」

「い、いえ、こういう時の魔法なので」

 僕は笑みを浮かべた。

「うん。では、今日は休暇としようか。さすがに、これで訓練というわけにはいかないからな。酷くゲッソリしてしまっているぞ。魔法は分からぬが、休息が必要な事は分かるぞ」

「はい、無茶かなとは思ったのですが……では」

 僕は椅子から下りて、ベッドに横になった。

「ゆっくり休んだ方がいい。また、あとでな」

 団長が小屋の外に出ていった。

「あーあ、完璧に魔力切れだよ。休みでも寝るしかないのか。もったいない!!」

 僕は笑って、そっと目を閉じたのだった。

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