第9 いつもの朝

 アレス王国には戦列に並ぶだけでも、百五十騎以上の竜騎士がいる。

 他国にも竜騎士は存在するが、その扱いの難しさから「軍」の戦力としては使えず、それなりの地位にある人の趣味という感じで、いても十騎程度だった。

 その多数いる竜騎士は全て国王直轄で、城の敷地に身を置いていた。

「ふぅ、今日も全員元気だね」

 日も明けない時刻に早起きしてから、他のみんなが朝ご飯を終えて厩舎にやってくる頃まで、僕はドラゴンたちの様子をみて記録を付けて回っていた。

 ずっとやっている事なので、今日もまたいつもの予定通りだ。

 これから全員が訓練に飛び立てば、今度は僕の朝ご飯だった。

「よし、団長がきてるとまずいから、早く小屋に帰ろう」

 僕は仕事道具のオンボロ馬車に乗り、小屋に向かって走っていった。


 小屋に着くと団長が苦笑して扉の前に立っていた。

「こら、新入りドラゴン三頭と仲良くしすぎだ。ここで寝泊まりして、どうすれば遅刻できるのか、ぜひ教えて欲しいものだ」

「ご、ごめんなさい!!」

 僕は慌てて馬車から飛び降りて、団長の前にビシッと敬礼した。

「戦列の全騎異常ありません。騎乗する騎士が二日酔いでなければ、なにも問題は起きないでしょう」

 僕は少し右側の口角を上げた。

「よろしい、少尉。今日もそつなく頼むぞ」

 団長は笑みを残し、僕の前から去っていった。

「少尉なんて、僕の事を呼ぶのは団長くらいだね。柄じゃないよ」

 僕は笑って小屋に入った。

 竜騎士も軍の一部ということで、それに倣った階級がある。

 竜騎士は特殊なので、いきなり士官スタートになる。

 つまり、僕は平のペーペーというわけだ。

「さてと、これからが自分の時間だね。まずはご飯だ」

 僕はコンロ火を起こし、適当に料理を作った。

 出来上がった玉子料理をもそもそ食べ、一息入れた。

「……ヤバい。今日から二十歳だよ。だから、どうって事はないけどね」

 そう、今日は僕の誕生日だ。

 二十回目となる今日は、同時に成人になるという節目だった。

 もっとも、堂々とお酒程が飲める程度で、これといった事はないけどね。

「よし、今日も気合い入れて掃除するか」

 僕は一人笑い、小屋を出たのだった。

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