第15話 西方の大森林へ

 突然、王都を襲った魔物の群れ。

 明らかに魔法によるものだったし頭にくる話だが、そっちの犯人捜しは仲間に任せておくとして、僕は違う場所から呼び出されてしまったドラゴンを、比較的住みやすい西方の大森林と呼ばれる場所に連れていくため、ファルセットに乗りながらその子を脇に従えて空を飛んでいた。

「それにしても、災難だったねぇ。ここの気候は寒いからなぁ。南国に住むドラゴンをここに呼ぶなんてね」

 僕は時々口に咥えている笛を吹きながら、心の内でため息を吐いた。

「まあ、無駄に西方の大森林を選んだわけじゃないけどね。怒られなきゃいいけど……」

 僕は歯で笛を押さえて苦笑した。

 西方の大森林には「森の人」という意味で、グモルクという種族が住んでいる集落がある。

 もっとも、これはアレス王国の呼び方で、一般にはエルフという呼び名が親しいはず。

 人間の社会と関わりはあるが仲良しというわけでもないという、なんとも微妙な感じではあった。

「怒らせると怖いからなぁ。まあ、お願いしにいくだけだから、大丈夫だろうけどね」

 僕は小さく笛を吹き、そのまま口から放した。

 目の前の地面には、広大なまさに大森林が広がっていた。

「はい、お着きっと。ここなら、元いた場所に帰れる方法があるよ」

 僕は脇を飛ぶドラゴンをみて、小さく笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る