第27話 僕が一番怖いのは両親かも……

 手痛い失敗をした夜。寝られるか心配だったが、重傷を回復魔法で治したため、自覚しているよりヘトヘトだったらしい。

 ベッドに入ると同時に、僕は深い眠りに落ちたのだった。

「ん……」

 何かの拍子に目を覚ますと、国王様が小屋の入り口に立っていた。

「起こしてしまったか、すまぬ。かなりの重傷を負って、危なかったと聞いたものでな。ただ様子をみにきただけだ。そのままで構わん。傷はどうだ?」

「は、はい、もう問題ありません。明日には元通りかと」

 国王様が笑みを浮かべた。

「ならばよい。この件は、さすがにご両親に報告せねばならない。結果どうなるかは、正直考えたくはないな。最悪、親元に返さなければならないだろう。元々、ここに置くのは反対だったからな」

「そ、そんな……でも、特にお父さんはいうかもしれません。困ったな……」

「うむ、わしも困る。手を尽くしてはみるがな。明日はここから出ないでいて欲しい。団長にはもう話してある。よほど気に入っているのだな。一緒に嘆願するとまで言い出しておるぞ。まあ、任せてくれ」

「は、はい、お願いします。せっかくここで色々経験しているのに、ここで引き離されてしまっては……」

 僕がいうと、国王様は小さく笑みを浮かべた。

「うむ、さっきもいったが、ここでお主を失うわけにはいかぬ。ワシも調査が甘かったな。申し訳なく思っている。では、まだ夜も深い。ゆっくり休むがいい。城内とはいえ小屋の鍵は忘れぬようにな」

 国王様は笑って出ていった。

「ああ、扉の鍵を忘れてた!」

 僕は慌ててベッドから下り、出入り口の扉を施錠した。

「どうも習慣がなくて忘れちゃうんだよね。まあ、それはいいや。お父さんとお母さんか……特にお父さんは言い出したら聞かないからなぁ。この小屋から出るなといわれたからには、出ないけどね」

 僕はため息を吐き、ベッドに横になった。

 今は失われた体力の回復が必要な時だ。

 普通なら寝られるわけがないのだが、僕は再び深い眠りに落ちたのだった。


 ふと目覚めると。窓の外の景色が朝になっていた。

「ああ、また寝坊!?」

 全身がギシギシいうような鈍い痛みと闘いつつ、僕はベッドから下りて出入り口の扉に向かうと、施錠されている事に気がついた。

「ああ、自分で鍵をかけたんだっけ。忘れていたよ、今日はここにいなきゃいけないんだった。今頃は僕のお父さんとお母さんがきてるかな。早起きだからね」

 僕は部屋の時計をみて呟いた。

「やることは……ドラゴンとの接し方のマニュアルでも更新しようかな。ずっと、やらなきゃって思っていたからね」

 僕は机に向かい、本棚からマニュアルを取り出すと、それの加筆修正を始めた。

 しばらくするとお腹が空いたので、僕は玉子を使った簡単な食事を作って食べ始めた。

「ちょっと、塩加減を間違えたな。まあ、食べられなくはないからいいけど」

 僕はチラッと時計を確認し、そういえばみんな日誌を取りにこないなと、今さらながら気がついた。

「あれ。取りあえず、小屋の鍵は開けておこう。

 小屋の鍵を開けると、苦笑したみんなの姿があった。

「うわっ、ごめんなさい!」

 僕は慌てて謝ったが、特に怒られるような事もなく、みんなは日誌を取って小屋から出ていった。

「だ、だから小屋に鍵は出来ないんだよね。悪いことしたな……」

 僕はため息を吐き、朝ご飯の残りを食べた。

「さて、あとは待つだけか。僕の姿をみせたら、問答無用で連れ帰りかねないって感じなのかな。確かに、お父さんならやりかねないから、大人しくここでマニュアル作りをしようかな」

 僕は苦笑して、再び机に向かったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る