第11話 仕事仕事
「……よし、掴んだ」
首に縄を掛け、四人がかりで抑えていたドラゴンが、急に大人しくなった。
僕は小さく笑い、そのドラゴンに近づいて巨体に手を当てた。
ここは、城からひとっ飛びした場所にある、小さな村の広場だった。
「それにしても、人里に警戒心が強いグレースドラゴンが現れるなんて、絶対とはいわないけど、まずないはずなんだけど……」
僕はドラゴンから手を離した。
「よし、もうどこかにいきなよ。またね」
僕の声に反応して、派手に羽ばたいてからドラゴンは飛び上がり、そのままどこかへと飛び去って行った。
「よし、ここからは俺たちの仕事だな」
「任せろ」
僕に同行していた竜騎士二名が腰の剣を抜いて、村の中に散っていった。
ドラゴンがいきなり村に下りてきて、ブレスこそ吐かなかったが、暴れて手に追えないという通報が城にあり、僕と二人の竜騎士が急いで駆けつけたというわけだ。
ドラゴンが多いこの国では珍しくはないが、その品種が珍しいというパターンだった。
「……任せておくわけにはいかないね。危険すぎるよ」
僕は小さく頷き、さっきドラゴンに触れたときに感じた魔力の波長をそっと探った。
しかし、広場には全住民に近いであろう数十名が固まっていたが、そこにはいなかった。
「あの、ここにいない人で、魔法に長けた人はいませんか?」
「ああ、ナリムのクソジジイだな。村の外れに住んでる、気持悪い奴だ。挨拶程度にも応じないからな。なんだ、あのジジイの仕業なのか?」
筋肉の塊のような、みるからに強そうなオジサンが応じてくれた。
「い、いえ、そうと決まったわけではないです。ただ、ドラゴンは偶然ではなく、なんらかの魔法で呼び寄せられたというのは確実です。手がかりはありますが、上手くいくか分かりませんが……」
前置きをしてから、僕は周囲に漂う微少魔力を辿ってみた。
「えっと、あっちからですね」
僕は広場からある方向を指で示した。
「やっぱり、あの爺さんだな。そっちには、バカでかいアイツの屋敷しかないぜ」
僕の言葉に、群衆の一人が返してきた。
「いってみます。危ないので、皆さんは待っていて下さい」
普段はマントに隠れてみえないが、鞘から剣を抜いて広場の皆さんに声をかけ、僕はその老魔法の家に向かったのだった。
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