概要
町には掠奪者だらけだ。吸血鬼、炭鉱の奴ら、偽善者たち。
ここは福岡天神。
かつてはこのあたりで一番栄えていた町……らしい。
荒廃した世界を、
生きるために、守るために、復讐のために、
少年少女が駆けていく
ポストアポカリプス青春群像劇。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!最後の風景がきれいでかなしい
滅びた世界で必死に生きる人々の姿が生々しく迫ってくる気がしました。みんな生きるために必死で、でも世界と同じようにどこか荒廃していく心も抱えていて、苦しんでいる姿が容赦なく描かれていきます。
吸血鬼と人間の間の憎悪、人間同士の争い、吸血鬼同士の争い。闘争と憎しみに満ちた世界で、ひとときの人間らしいふれあいがあたたかくも悲しくて、だからこそその後に描かれる葛藤が苦しい……。
ラストシーンの静けさと美しさが私はすごく好きです!
これから彼らがどうやって生きていくのか……人間だからやっぱり、なんらかの社会や秩序を打ち立てないと生き残っていくのは厳しいんじゃないのかなあ、とか、人間と吸血鬼が争い合…続きを読む - ★★★ Excellent!!!おにぎりとコーヒーの味
作中語られる「おにぎりとコーヒーの味」についておもった。
うんそうだよね、と。
そんなふうに、とても「ただしい」小説として読んだ。
吸血鬼とヤクザの関わるディストピア活劇だと思うのだけれど、
第二部からアクションシーンが迫力を増すのと同時に
ポスト終末を描く作品が背負うテーマやストーリーも浮き彫りになる。
それは「人間」そのものであり、
同時に「人間扱いする」ということだ。
この作品に「人間」でないものは存在しないにも関わらず
それでも「人間扱いされない」ことが存在する。
弱肉強食ではなく適者生存を生物の系譜の公式として当てはめるならば
適者とは「人間扱いされる側」なのか「人間扱いされな…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生きたい。ただそれだけが難しい。全力で終末を駆けるボーイミーツガール!
未来のない終末の福岡を、一匹狼の主人公はるまが自転車で駆け抜けます。というと、さわやかで切ないアンニュイ終末っぽいですが、めっちゃくっちゃ血なまぐさくて地面に這いつくばって闇を駆ける終末です。
闇といっても夜じゃないのがポイントで、満月とか流星とか、北極星を見あげて「変わらないもなんてひとつもないんだ」とか、そういうビッグなものに思いを馳せる系ではありません。この作品の闇とは、すなわち、太陽がないということなのです。建物の中、日陰、帽子そしてサングラスなどなど……太陽を避けて生きているのですよ。終末のボーイミーツガールだけど、キラキラロマティック~とかもないです。はるまとさなちゃんは、そう…続きを読む - ★★★ Excellent!!!生きるべき者が生き延びる、とは
福岡には、行ったことがない。
しかし、この物語を読みはじめてすぐに、わたしは荒廃した「天神」なる通りに"居た"。
なるほど、著者は福岡に住んでいるらしい。それなら、と、容易に納得できるようなレベルでは無い。圧倒的な色彩や空気感をもって町は描き出され、容赦なく読み手を引きずりこむ。
ある吸血鬼への復讐心を胸に戦う主人公・榛真、彼の前に現れた紗奈の葛藤、敵対する組織、組織と相容れずもがく者、自分の存在すら憎む吸血鬼。
だれを信じ、どう行動すべきか。どのように己が命や大切なものを守り抜くか。物語は常に登場人物たちに、そして、読み手であるわたしたちに問いかけ続ける。
目の前にいるのは、ほんとうに…続きを読む - ★★★ Excellent!!!吸血鬼がグーで殴ってくるぜヒャッハー! 必死で生きる人間たちの姿が熱い
舞台が、滅亡後の福岡……。
福岡が滅亡するとどうなるのか、想像したこともない私には、まずそこが「どんな世界!?」といきなり気になるのです。
読むと、今現在の現実の空気を半分残したまま、誰もいなくなり、文明生活が消えてしまった、知らない世界がそこに。災害で突如、平穏な生活が奪われた街のような、人々が逃げ去った後の街が、読者の前に現れます。
一体この街に何が起きたの? と不安な気持ちで読み進むと「教えてやろうか!!」みたいな感じで、畳み掛けるようなアクションシーンが!
こっ、コイツ、モンスターなのにグーで殴ってきやがるぜ!? 物理!? ああだめ死んじゃうううっ!?
という、良質アクション・…続きを読む