第二十九話『機動力』

「よっし、ケンジの新しいスキルもあるし、今度も楽勝ね!」

とユカが微笑む


「今度『も』??」

と僕が笑う。


「そう、今度『も』よ!」

とユカは笑う。


「そうだね、戦闘開始だ!」

と僕がつぶやく。


-


「さてさて、どう料理してあげましょうかね!」

と、美少女剣士のユカがにっこり微笑む。

いままでとうってかわって大分元気だ。

やっと、ユカにふさわしいぐらい強い敵が出てきたと思っているのだろう。


「先に言っておくけど、油断しちゃダメだよ!」

と僕が言うと、彼女はすでに走り出していた。

そう、その忠告は無駄だった。

届く前に彼女は行動に移していた。


その行動力は見習うべきものではある、と一瞬思った。


「言っくわよー!」

と美少女剣士のユカが言いながら、どんどんビッグワイルドフォックスに向かっていく。

あまりの機嫌の良さに、口笛を吹いていたとしても不思議でないぐらいだった。


そのユカをビッグワイルドフォックスはしっかりと目で追っていた。


「グオォォォォォォ」

とワイルドフォックスが吠える。

ワイルドフォックス三体分を倒した僕達に対する恨みもあるのだろう。

最初から、怒っている。


「よっと!」

と言いながら、横にジャンプする美少女剣士のユカ。

行動力はめちゃくちゃあるから、慌てん坊なのかと思いきや、意外と冷静なユカだ。


「グオッ」

と、ビッグワイルドフォックスが唸る。

迫りくるユカに対して、前足で攻撃しようとしたところ、その瞬間には、もうユカはそこにはいなかった。


大きくビッグワイルドフォックスの前足が空を切る。


「やっぱり大きいから遅いわね!そのスピードじゃ私は捉えられないわよ!」

とユカは言って、更にもう一度ジャンプして、ビッグワイルドフォックスの方に向かって斬りかかった。


つまり、一回横にステップして、前足の攻撃をさけてから、しっかりとビッグワイルドフォックスに斬りかかったのだ。


「グオオォォォォォ」

ビッグワイルドフォックスは吠える。

ユカの斬撃による痛みをかき消すかのように。


「ユカ、すごい!」

と僕が言う。


彼女の機動力と攻撃力があれば、あっさり倒してしまうのではないか・・・


「グオオォォォ」


そう思った瞬間、美少女剣士のユカの方に、ビッグワイルドフォックスは突進していった。



「まじか!」

と僕は叫ぶ。ユカの斬撃を食らっても、それを耐えてそのまま、突進して攻撃してきた。


「なんていうタフさなんだ・・・」

と僕はつぶやく。


「うあぁぁぁぁぁぁ」

と、美少女剣士のユカは吹き飛ばされてしまう。


「グオォォォォォ」

と、ビッグワイルドフォックスは唸りをあげ、さらにユカを標的にして攻撃しようとしている。


「まずい!」

と僕が言う。

ビッグワイルドフォックスは、美少女剣士のユカの落下地点に向かって、突進しようとしている。


「次は私が行く」

と、小さい美少女斧使いのシズクが走り出した。

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