第三十〇話『もう知ってる』

「まずい!」

と僕が言う。

ビッグワイルドフォックスは、美少女剣士のユカの落下地点に向かって、突進しようとしている。


「次は私が行く」

と、小さい美少女斧使いのシズクが走り出した。


-


「ユカ!!」

と言いながら僕は、美少女剣士のユカの元に走っていく。


「『加速移動 - アクセルダッシュ』!!」

と僕は言って、彼女の元まで加速する。


「またお姫さま抱っこするよ!」

と言って、素早く美少女剣士のユカを抱きかかえる。

そして、そのままスキルを発動させる


『加速移動 - アクセルダッシュ』


高速移動するスキルを使って、その場から離脱した。


「ナイス、ケンジ!」

と言いながら、小さい美少女斧使いのシズクが、ユカがいた場所、つまり、ビッグワイルドフォックスが向かっている場所に向かって、大斧を構えていた。


そう、そこには僕とユカはもういない。

しかし、ビッグワイルドフォックスはそこを目指したままだった。


「いく」

と言いながら、小さな体ながら、大きく回転力を発生させて、大斧を振り回した。


「す、すげぇ」

と僕がつぶやく。


何回見てもすごい。

自分の身の丈よりも大きい、大斧をブンと振り回して攻撃する姿は美しいとさえ言えるものだ。


「筋肉に頼るわけじゃなくて、体のバネと、回転力を使って、うまく斧をコントロールしているんだな」

と僕は言う。

一朝一夕で出来ることではないな、と思った。


「あのー、シズクに見惚れてるならそろそろおろしてほしいんですけど・・・」

と、僕の腕の当たりから声が聞こえた。

当然声の主は美少女剣士のユカだ。


「あ、ごめんごめん!」

と僕は言いながら、ユカを優しく下ろす。


「もう、堂々と触ってくるのね・・・」

と、ユカは呟いている。


「いや、毎回緊急事態になるからだよ・・・緊急避難だよ・・・四回目だけど・・・」

と僕は言う。

そう、前回の戦闘で三回、今回の戦闘で一回。

ことあるごとにユカをお姫さま抱っこしている僕であった。


「はい、おしゃべりしてるとやられちゃうわよ!」

と。おっとりお姉さんのハルカが言った。

おっとりしている割にはちゃんとしているハルカだ。


「グオオオォォォォ」

とビッグワイルドフォックスの呻き声が聞こえてくる。


そう、僕らはまだ、戦闘中だ。

先程のシズクの斬撃がしっかりとビッグワイルドフォックスにあたっていた。


「シズクの攻撃は当たったけど・・・」

と僕は言いながら、走り出す。


「え?」

と、大斧で破壊力の高い攻撃を当てた、小さい美少女斧使いのシズクが、怯まないビッグワイルドフォックスを見て驚いている。


「ビッグワイルドフォックスのタフさは尋常じゃない!」

と言いながら、僕はスキルを発動させる。


「『加速移動 - アクセルダッシュ』!!」

と僕は叫びながら、シズクに向かっていく。


「こんどは、ダメージを受ける前に助ける!!」

と僕は言いながら、小さい美少女斧使いのシズクをキャッチして通り抜け、ワイルドフォックスの攻撃を空振りさせた。


「ビッグワイルドフォックス、君のタフさはもう知ってる!」

と僕はそう言って笑った。

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