Emergency Doctor　救命医。もう二度と戻らぬ愛する人へ。そしてつなぐ想いを今ここに。

上手な文体でストレスなく物語が進み、臨場感が伝わってきます。程よい緊張感をもって読み進めることが出来ます。ドキドキハラハラでおもしろいです。

作者は、医療従事者なのでしょうか。
医療系の物語は、専門用語が出てくるので理解しにくいかと思いましたが、とても解り易く書かれていました。

本作品は、医師の成長と恋の物語です。
主人公の医師。田辺光一は、自らに向けた課題と苦悩に、長い時間をかけて向き合っていきます。
生真面目で、それでいて臆病で、とても優しい田辺。
恋愛では、恋人を亡くし、小さな命までも喪い。悲しみにくれる日々を送りつづけます。
しかし、彼女が残したノートと、彼の周りを取り囲む人たちに助けられながら、成長を遂げていきます。
この物語は、諦めない粘り強さと、周囲の助けや厳しさを受け入れ、向き合う強さを教えてくれているように感じ…続きを読む

本作は恋愛に軸を置いているが、その手段として医療が用いられている。

その医療描写が本当にいい。リアリティとファンタジーをうまく混ぜ合わせながら、医療関係者にも恐らく一般の人にも分かるように書かれている。

私は医療関係の人間だが、

今作の描写は小説のカテゴリーの中で比較的現実に近いと言える。

最近はファンタジーに寄りすぎておかしくなっている昨今の医療小説に一石を投じてほしい。

短い文章なのに、ER現場が的確に、無駄なく、精緻に描写されている。
スタッフ全員の動きがテレビ・ドラマの再現のごとく目に浮かぶ。然し、患者の１７才の少女の未来、飛び入りの海外から帰国したような女医と男性の処置医の関係など、気になることを多く残した作品である。
長編に発展しそうですね。