第30話 召喚契約(仮)
殺せと、殺してこの苦しみから解放してくれと、そう俺に願ったダンジョンの主。
しかし俺は別の答えに辿りついていた。
「あー……よし、やっぱりお前出してやるよ」
「は……?」
「いや、だから出してやるっつのこの檻から」
「い、いやいや! お前が!? この私に手も触れられなかったお前がか!?」
「……うっせ。いいから黙れなんか良い方法ないか考えっから」
「希望を持たせるのは、もうやめて欲しいのだが……」
ふぅ……こいつの話を聞く限りリアの友達らしいしな。助けるのもまぁ、やぶさかではない。
それにコイツの境遇は俺と同じなのだ。
長い長い時間を無為に過ごしてしまった。
いや、むしろ意識があっただけ俺よりはるかに辛かったろう。
リアももういない。
こいつは裏切られたままに千年間も生きてしまった。
じっちゃんが言っていた正義になると信じ。
俺は先が折れた無銘の刃で檻を叩き切った。
しかしやはりと言うか檻は壊れない。
どうしようかと悩みに悩んだ挙句到達したのは一つの答え。
『召喚魔法契約』。
じっちゃんには知識ならば召喚に頼れば良いと言われていた。今回はバカな俺が召喚に頼って檻を壊すのではなく、召喚魔法そのものでコイツを檻から出そうとい思ったのだ。
知能のある生物は自由のために、己自身を縛る契約をめったに結ばない。しかし、今回は了承を得たことでそれが出来るようになる。召喚の儀式自体もレッドドラゴンに指摘され、姫様の魔力を利用することで見事成功したのだった。
契約を行うとその魔物の全てを支配下におけるが、コントロールには莫大な魔力を必要とする。そのため実質的には俺に操れるわけもなく、自由にさせる他ない。
他にも強請転移(召喚)が使えるが、これも召喚対象の質量や保有魔力を越える魔力を必要とするためそうそうに扱えなかった。
そういうわけで実質上の解放が成ったのだった。
「ふ、フハハハハ……青い空はこんなに爽やかだったか、日光はこんなに目に染みたか!? 鎖は千切れ、自由となった。ありがとうウィリアム。私は今こそ、空を飛べる、長き時間が嘘だったかのようだ。こんなににも心躍ったのはいつぶりだろうか! アハハハハ!!」
大空を飛ぶレッドドラゴン。
日光があまりに滲みたのか、瞳から溢れた2筋の大粒の雨が彼女の下へと降り注いでいた。
俺達はやっと和解した。
リアと心通わせた竜と俺の関係は確かに召喚契約のそれである。
でも、そこには確かに、じっちゃんがいてリアがいて、俺が武闘大会で戦っていたあの遥か過去の時代に結ばれた旧友との“絆”があるように感じた。
最強剣士は男の絶滅した世界で目を覚ます。 御影石 @eishi
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