概要
無慈悲で、不器用で、ひとりぼっちの少女、クレン。
夜空の下、出会った二人は、淡く拙く時間を重ねてゆく。
どうかご覧あれ。
不幸な彼女の結末を。
無力な彼の行く末を。
『運命は赤い棘』
舞台は2014年、冬の名古屋。
いつの間にか孤独になっていた少年、風村吹葵(すいき)は、
『白の獣』と、それを狩る『赤の人』の少女、クレンに出会う。
『青春を取り戻すように』
舞台は2014年、春。
ささやかな偶然の末、二人は共に同じ時を過ごしていた。
『写真』
舞台は2018年、冬の東京。
あの夜のことを忘れられずにいた吹葵は――
『虚ろな約束』
舞台は2022年、秋。
運命的な偶然でクレンと再会した吹葵は、衝撃の
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!青春のほろ苦さを凝縮したような、成長の物語
幼い頃に、つい口にしてしまった言葉で、人を傷つけたことがあります。
今でも、その時のことを思い出すと、頭を抱えて転がりたくなるような気持ちになります。
過去との対峙は、人間の普遍的な闘いであり、誰もが持つほろ苦い経験なのでしょう。
そんな経験を持つ人は、間違いなくこの作品に心を捕まれることでしょう。
この作品の主人公は、本当の意味で読者と同じ目線です。
特殊能力などなく、選ばれた人間でもなく、非日常のために日常を犠牲にするでもなく、それでも何かしたいと願う、普通の少年です。
だからこそ、この作品は誰もが持つ心の弱い部分を、かきむしるかのように抉ってくれます。
この作品に、解放感やカタルシ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!失われた『赤い棘』
運命は赤い棘のかたちをして、僕に忘れ得ぬ傷をつけた。
作者である沐川 九馬氏は作品の扉部にそう書いております。
ヒロインの可愛さでしたりだとか、作品の構成の巧みさなどといったことに付きましては先駆者様のレビューがありますので割愛します。また、当然小説であるがゆえ結末に至るまでに様々な出来事が存在し、当然のように全てに意味があり重要なことではあるのですが、内容そのものはレビューであらすじをなぞるより、落ち着けるような場所でしっかり本編を読んでいただいた方が絶対に良いのでそうして頂いて。
私自身、とても平凡で普通でしかない一人間です。だからこそ予想出来てしまい、かつその予想が外れることも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!身勝手で美しくて残酷な、〝運命の赤い棘〟
この物語は、「とても良くできたライトノベル」であり「ジュブナイル」です。主人公の少年は、世界の裏側で戦いを繰り広げる特殊能力者の少女と出会い、青春の時を過ごします。
世界観設定はよく作り込まれており、普通に商業誌で見れそうなほど。
そんなしっかりした世界を舞台に、「もし、バトルラノベの主人公が、ただの凡人だったなら?」という仮定を緻密にシミュレートしたら、このような物語になるのではないでしょうか。
そう、作品紹介では「無力な少年」と書かれている主人公ですが、彼は無力ですらない、悲しいほど「普通」の人間です。時折主人公らしい活躍や前のめりな姿勢も見せますが、それが時として事態を悪化させ…続きを読む