何も知らなかった俺に、真実が告げられている
課題が出されてから二時間。
もうお昼になろうかというのに、未だに勾玉は発見されていない。
だけど、暗号自体はみんな解けたようで、各所から石の割れる音が響き渡る。
……実に素晴らしい眺めだ。
人は、昨日と同じということに
だからたまには、嫌な思いをすべきなんだ。
苦難の日々を乗り越えれば、元の生活に戻るだけだというのに、こんなにも感動できる。
堤防のような岩の長城。
その尾根から、あの憎らしい小人どもが次々と叩き落とされている。
俺は目に涙を溜めて、感動に酔いしれていた。
ふはははははは! ざまあみろ、小人ども!
学校から北へ向かうと、幅が二十メートルほどもある大きな川が横たわる。
長雨のせいで普段より濁っているうえ、随分と水かさも増えているようだ。
普段なら深いところを狙っても怖くて飛び込むことなんかできないけど、今日なら楽々飛び込めそう。
そんな流れに沿って作られた岩の堤防からにっくき小人たちが叩き落とされる様子を、俺は橋の上から眺めているのだが……。
「ねえ、変態。ハンマーとお昼ご飯取りに戻ってたんじゃないの?」
「合ってるじゃねえか。手押し車って意外と体力使うんだな。へとへとだ」
「いやいや、姫よぅ。どうしろってんだよこんなもん」
シャマインから三十分ほどかけて運んで来たもの。
それがこれ。臼と杵。
「で、もち米っと」
俺がジャーから湯気の昇る白米を臼によそると、三人前のため息が聞こえた。
「なんだよお前ら、姉ちゃんが張り切って準備してくれたのに。しかも餅をつき終えたらこれで人形割れるだろ?」
どんだけ合理的なんだよ、さすがは姉ちゃんだ。
でも、俺がもち米を適当に潰してから三人に杵を手渡すと、またもやため息をつかれた。
「うそだろ? 臼と杵を前にしてそんなにテンション下がるやつら、始めて見た」
「……まあ、カップ焼きそば二つ分の唐揚げよりはましね」
「おぉ、そうだった! サタン様の唐揚げはまじやべぇからな、これの方が幾分ましだ。姫! しっかりこねろよ!」
「任せとけ。ほら、朱里ちゃんも振りかぶって」
「うん、分かった。それに、ちょっと楽しそうだし!」
「だろ? そう来なくちゃ! じゃあ、1、2、3、ほい、1、2、3、ほい、な?」
その言葉に頷きながら、三人が杵を構える。
俺は水を付けた手を、最初に一度、餅をひっくり返すために臼へ入れたらノータイムで沙那の杵が落ちてきた。
「1!」
「2!」
「3!」
「ぎゃー!」
「1!」
「2!」
「3!」
「ぎゃーって待てこら! 手ぇひっこ抜く暇もない連携とか、どんだけ俺をいびる時は気が合うんだよお前ら!」
いくら餅のクッションに守られてるからって、そんなんされたら手に穴が開くわ。
教科書丸めて片目に当てる必要すらねえ。
「駄目じゃない雫流。君の掛け声は『ほい』でしょうに」
「そこ!? ああもう分かった! 合わせるからせめてゆっくり目に頼む」
その泣き言に頷きながら、三人がふたたび杵を構える。
俺は水を付けた手を、最後に餅をひっくり返すつもりで臼に入れずにいたらノータイムで花蓮の杵が頭に落ちてきた。
「へっくち」
㊎ごんっ
「……花蓮。味噌は、餅がつきあがってから準備しようぜ」
「失礼ね。私は砂糖醤油派よ?」
「だったら味噌壺を狙うんじゃねえよ!」
「そこには味噌なんか入ってないでしょうに」
「じゃあ砂糖醤油が入ってるのか!? 俺の頭ん中は甘くてほんのりしょっぱい少女漫画か!」
「ばかね、少女漫画にこんな不細工出ないわよ。モブまできっちりイケメンであってこそ少女漫画と呼べるのよ?」
俺が花蓮とにらみ合いの口喧嘩を始めたってのにまったく気にせず、朱里ちゃんが餅をこねて沙那がつき始めた。
お前ら、すげえ冷たい。
あっという間に役立たずにされた金バカコンビ。
仕方が無いので最後にお互い一瞥をくれた後、仲良く並んでタレの準備を始めた。
「しかし未だに見つからないなんて。なあ花蓮、暗号があの忌々しい連中を示してることは分かるんだけどさ、どうやって読むの?」
そう言いながら紙皿に醤油を垂らして渡すと、乗せられたのは山ほどの砂糖。
俺の神経は、花蓮の返事よりもその異様に全部持って行かれた。
いや、俺だけじゃない。
朱里ちゃんも沙那も、ぎょっとした顔で紙皿を見てる。
「さっき説明したじゃない。横棒を全部消すのよ。そうしたら、田区十下兀示天が、川1メートル小人になるでしょうに。あんたの嫌いなこいつらのうちどれかってことよ」
「……それ、多すぎねえか?」
砂糖の量が。
「そうね、百体近くあるから。しかも前のレンガの時みたいに人形が硬くしてある。ああやって叩き落してもせいぜい三分割くらいしかできない」
「甘いよな、それ」
「分かってるじゃない。地味に削っていくのが正解よ。非力な私にはそれしか方法も無いしね」
「女の子じゃあるめえしそれは無理がある」
「女の子よこれでも! あんた、あたしの事なんだと思ってるのよ!」
「……え? 何の話だ? 俺には無理だって話をしてたんだが」
「こっちだってあんたなんか願い下げよ! この変態!」
いててててっ!
鼻を摘まむな!
そんなに怒るんじゃねえよ。
悪かったよ、食べりゃいいんだろ、砂糖。
そしてめちゃくちゃご立腹の花蓮に対して、俺たちを指差して笑ってる朱里ちゃんと沙那。
「何笑ってるんだよ、お前らにも同じ量食わせるからな?」
「いらねえよ、姫が一人で食え。しかしお前ら、ほんとに相性悪いな」
そうなの?
俺はそれなり相性いいと思っていた司令官に振り向くと、ピッタリのタイミングでへたくそなあっかんベーをされた。
ほら見ろ、呼吸ぴったりだぞ?
朱里ちゃんがこの連携を見てまたもや噴き出したあと、急に真面目な顔を浮かべてひそひそと話しだす。
「ねえ花蓮ちゃん。今更だけど本当にそれで合ってると思う? 雫流が言うには、全部が赤く見えたんでしょ? あれを使ったんなら横棒は赤く見えないと思うの」
「なるほど……、Aランクだってことを失念してたわね。他に読み方があるのか」
「俺には田んぼの下にいる何かって書いてあるように見える」
「黙りなさいゲンゴロウ。
「ああ、これ、ゴツって読むんだ。パイだと思ってた」
花蓮がポケットから取り出した携帯を横から覗き込みながら、濡れ布巾で手に付いた餅のぬるぬるを拭う。
そんな仕草を、花蓮はいつもより優しく受け入れてくれたようだ。
わざわざ俺に見やすいように携帯を傾けてくれている。
ここまでしてくれてるんだ。
読めやしない、なんて泣き言はもう言わないさ。
思いついたことはどんどん言っていく。
それを取捨選択するのは花蓮に任せた。
「音読みとか、世間一般的な暗号の読み方は試したろうからな……。俺らしい、頓狂な事ばっか言うぞ?」
「どんどん言いなさい」
「ふむ。……………………やっぱり、ゲンゴロウに見える」
「二度としゃべるな」
持ち上げられたり落とされたり。
ちょっとだけ小人たちの気持ちが分かった。
せつねえな、これ。
そんな、しょぼくれた俺の顔の前に突き出された紙皿。
朱里ちゃんが渡してくれた皿には、適当に千切られた餅と割り箸が二つずつ乗っていた。
「こら、俺は落ち込んでるんだ。砂糖の山をこっちに押し付けるんじゃねえ」
「だったらちょうどいいわよ。これだけ砂糖食べたらきっと元気になるわよ?」
絶望的だ。
せめて、甘いものを食べたくなるほど頭を使おう。
「うーん……。縦棒も消してみたんだけど、違うみたいね……」
「俺としては、棒とかじゃなくてこの砂糖をどこかに消して欲しい。そしたらきっと『ちょうどいいあんばいの砂糖醤油』って字が浮かび上がると思うんだ」
皮肉に聞く耳を持ってくれなかった花蓮は、俺が突き出した皿から箸を取る。
そして未だに湯気が立つ熱そうな餅を摘まみ上げた瞬間、目を閉じて口を大きく開けた。
待て待て! 餅を掴んだままやらかす気か!
「ふぇ……、へっくち!」
「うわ! あつ…………く、ない?」
それどころか、餅もぶつけられてない。
でも、花蓮の箸からはしっかりアツアツの餅が消えている。
……この現象、思い当たるふしが一つだけある!
「あづぐない! いや、あち! あち!」
「とへっ♡」
「綴夢ちゃぁぁぁぁん! うわ、髪にこびり付いちまってる。待ってろ、今取ってやるからなちちちち!」
そんな俺と綴夢ちゃんを見てニヤニヤ笑う金髪男と水色女。
お前らいつもいつも、綴夢ちゃんの事ないがしろにし過ぎ!
「こら、キース! てめえも手伝えよ、あちちっ!」
「オレ様が触ったら火傷のダメージがこいつに移っちまうだろうが」
「ああそっか。じゃあ絵梨さん!」
「私が触ったら、可愛いチビちゃんの泣き顔が拝めなくなるじゃないの」
「最悪だなお前ら! あちち!」
綴夢ちゃんと二人であちあち言いながら餅を剥がしていたら、絵梨さんがいつもの無表情を寄せてきた。
性格はともかく美人さんだから、危うくタライを落としかけちまった。
今あんなの落としたら、綴夢ちゃんの餅まみれ頭にぴったり張り付いちまう。
どえらいバランスの合体ロボ、とへっと爆誕だ。
「変態バカの英雄。お前にお願いしたいことがあるんだが、ちょっと手伝え。もちろんタダで」
「なあ、頼み方と条件によっては考えてもいいっていう定番の返事くらいさせる気ねえのか? どっちも払う気ねえとか驚きだよ」
絵梨さんの頼みごとを頭ごなしに断ったら、寂しそうな表情を浮かべられた。
色素の薄い水色髪が、いつもよりさらに儚げに透き通りながら左右に振れる。
「そうか、なら仕方ない。破格の条件を出そう。面白い芸を見せてやる」
「右手にヘルメット、左手にハンマー? 叩いてかぶってじゃんけんぽんって、どっちが勝っても叩かれるの綴夢ちゃんじゃねえか!」
で、いだぐないからのとへっ♡ か。
たしかにちょっとだけ面白そうだけどよ。
「見ないでも想像がつくっての。ほんとにおもしろい芸ってのはもっとよく練習を重ねたものじゃねえと。よく見とけ。……いや、綴夢ちゃんは念のために射程外まで離れとけ」
俺の言葉に、オレンジ髪のチビ助が真っ青な顔で橋をかけていく。
……あれだけ離れてりゃ、もういいいかな?
頃合いを見計らって、俺は携帯画面を絵梨さんに向けて構えた。
その画面に表示されているのはタライの写真。
「で、携帯をこうして高く持ち上げる。そんで、キース。タライを指で押しっぱなしにしてくれ」
「あぁん? 面倒だな……、これでいいか? お、タライが画面の中で動く」
「そうそう。じゃあ、そのまま画面の下まで落としてみ?」
「こうか?」
🐦がんっ!
「いつつ……、どうだ! 芸という物はこうでなければ!」
「ははっ! おもしれぇ! 画面と超シンクロしたタイミングで落ちてきやがった」
俺が頭上にサムアップすると、相棒はこの程度で満足してもらっちゃ困るとばかりにアクロバティックなターンを決めて飛び去って行った。
「ははっ! すげえぞ、インメルマンターンとかハトでもできんのな!」
「普通のハトにはできねえだろうよ」
「で? 今の芸、全部ハトが凄いだけじゃないのかしら?」
「この痛みに耐えられる俺の頭こそ、影の主役!」
おいこら絵梨さんよ。
なんだよその苦い顔。
「治人様の様子がおかしい件について手を貸して欲しいことがあったんだけど、考え直すわ。どう考えてもお前は使えない」
「失礼な。そこまで言われちゃ黙ってられねえ、相談に乗ってやろうじゃねえか」
俺はちょろさを自覚しながら聞いてみると、返事が絵梨さんの遥か後方、綴夢ちゃんの隣から返って来た。
「そうだね、話してみると良いよ。君は、雫流に何を手伝って欲しかったんだい?」
治人だ。
どんだけ地獄耳なんだよ、よくそんなに離れたとこで今の会話聞き取れたな。
この声を聞いて、絵梨さんは雷にでも打たれたように体を硬直させた。
ってことは、こいつに内緒で何かを俺に頼みたかったってわけか。
残念だったな、またの機会にこっそり話してくれ。
それにしても……。
「治人。どうしたんだよその格好」
遠目に見ても分かる。
いつもおしゃれなこいつがボロボロじゃねえか。
黒っぽい服が至る所破けて、裾とか飛び出しちまってるし。
なんか、全身赤黒いシミで汚れてるし。
まるで三人娘に絡まれた後の俺みたい。
綴夢ちゃんに、その位置から動かないよう指示した後、治人はふらふらとした足取りで俯いたまま近付いてきた。
「おいおい、猛獣とでも戦ったのか? お前のことだから勝ったんだろうけど」
小走りに近寄って肩を貸してやると、シミがバリバリと崩れて手にかかった。
ペンキでも被ったのか?
「……そうだね、何かと戦ったと言えば、そうなんだろう。僕は、自分の心と戦ったのさ。……そして、負けたんだ」
様子がおかしいとは思ってたけど、ほんとにヤバいかも。
「ひとまず落ち着け。ほんとどうしたよ?」
「僕の目の前で、大切な人が危うく命を落としかけたんだ。その時、僕は動くことが出来なかった。……情けない話だ。でも、おかげで一つの答えにたどり着いた」
「昨日の沙那の事か? あれはたしかに反省してる。二度と同じ過ちはしねえ」
こいつ、沙那の事好きだから、突き落とした俺に怒ってるのか?
俯いたままの治人の表情がまるで読めない。
でも、なんとなく俺ではない何かを見つめているような気がする。
この異様に、みんな怪訝な表情を浮かべて近寄って来た。
沙那だけはちょっと離れた欄干にもたれかかってるけど、いつもの剣幕で怒鳴りつけるような真似はしてこない。
「そう、僕も反省したんだ。大切な人が傷ついたなら戦おうと、この力を使おうと。そして、使ってみてから気が付いた。……こんな僕はもう、愛される資格なんかない」
頭を掻く事しかできん。
ほんとになに言ってるのか分かんねえよ。
治人の体重が段々重く圧し掛かるようになってきた。
息も荒くなってきてるし、どこか近くに天使でもいねえかな。
病院に連れて行かねえと。
「さっぱり分からんが、ひとまず病院にでも行こうぜ」
「病院ではこの胸の痛みを拭うことはできないだろうね。僕を助けることが出来るのは、ただ一人。……この三角関係にピリオドを打つことが出来るのは、何も知らない君だけなんだ」
「えっと…………、わりい、ほんとに何言ってるのか分からねえ」
「そうだね。いろいろ分からないままではいけないね。……まずは、君の『罪』を教えてあげよう」
そうつぶやいた治人が顔を向けた先には、欄干にもたれかかる沙那の姿。
見つめられた沙那は、いつもの怒号を上げてきた。
「なに企んでるか知らねえが、その辺にしとかねえと鎌でぶった切るぞ!」
「ふふっ。なにを言うんだ、沙那。君の望みを一つ叶えてあげようと言うのに」
「はぁ!? いい加減に……」
「雫流。沙那の罰は、男に触れると相手を『かるく』感電させて、自分には『気を失うほどの』ショックがくるというものだ」
「てめえ!」
沙那の、殺意に満ちた咆哮が地を揺るがす。
これを受けて、治人はいやらしい笑いを口から零した。
ちょっと待て。
俺は、こいつの罰をずっと勘違いしてきたっていうのか?
でも、だったらなんでこいつは俺に触っても気絶しねえんだ?
いやいや、それよりも……。
「治人! なんてことすんだ! 罰の正体を言ったりしたら……」
「問題ないさ。だって、もうあれが最大値だからね」
「え?」
「君が、いちいち突っ込んでたじゃないか。電気やめろとか。感電させるなとか」
「あ…………」
そうか。
俺は考えなしに、こいつの罰についてしゃべり続けていたのか!
「うそ……。沙那、俺は、なんてことを……」
「騙されるんじゃねえぞ雫流! そいつの言ってることは全部でたらめだ!」
必死に叫ぶ沙那の目を見ればわかる。
嘘をついているのは、お前の方だ。
「……待ちなさい、白銀治人。あなたはなぜそんな話を始めたの? 目的の推測がまったくできないけど、場合によってはあたしたち全員があなたの敵よ?」
花蓮が冷静に指摘しながら手近にあった杵を掴む姿を見て、朱里ちゃんはおろか、キースも絵梨さんも身構えた。
そんな空気の中、治人は引き笑いと共に自分の身を掻き抱く。
「……おい、治人」
「くくくっ……。僕はこれでも、沙那も大切に思っていたんだ。彼女を傷つけないためには、どうしたらいいか必死に考えた。……でも、三角関係に答えなんか無いんだ。だから、三角形の頂点をふたつ、消すことを選んだのさ!」
「お前、ほんとどうしたんだよ! 落ち着け!」
「じゃあ! 君ならどんな答えを出すんだい? ……見せてもらおうじゃないか」
そう話した治人の姿が、一瞬で目の前から消えた。
それと同時に、
「ぐあああああああああああっ!」
沙那の叫び声が響く。
長い黒髪がかかる肩に手を乗せているのは、間違いなく今の今まで体を支えてやっていた治人だ。
ヤツの言った通り、そしてあの晩に見た通り、力などどこにも入れていない。
ただ触れているだけ。
なのに、沙那は苦悶という言葉ではあまりにも足りない表情で欄干に背を預ける。
……そして、橋から落下した。
「しゃなーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
昨日の今日で、体が学んでる。
間違えるはずなんか無い。
俺は必死に走って、欄干へ足をかけた。
俺たち悪魔の身体能力は人間のそれと大差ないけど、朱里ちゃんのように足の速い奴もいれば、俺のように傷の治りが早い奴もいる。
でも、一瞬で十メートルもの距離を瞬間移動できるはずなんか無いんだ。
…………たった一つの例外を除いて。
「君だったら三角関係という物にどういう答えを出すのか。それを見せてくれ」
川へ飛び込む俺に声をかけてきた治人。
その瞳は、血塗られたように赤く光っていた。
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