俺を取り巻く世界が、二つに割れている


「紫丞さん! どうして受け取ってくれないの!?」

「いらねぇよバカ女! なんでウチがてめぇの作った弁当なんざ食わなきゃなんねえんだ!」


 いつもの紫がかった黒髪が、こんがらがったツタみてえになってるけど。

 どんだけ必死に逃げてたんだよ、お前。


 …………ああ、殺したいほど羨ましいっ!



 暗号が発表されるなり、三々五々と西の山へ向かう悪魔達。

 いや、結構な数の人間もいるな。


 あのさあ、一つ言っておくぞ、お前ら。

 暗号に、西風に山って書いてあるからってヒントでも転がってると思ってんの?

 そんな甘いはずねえだろ。

 知性派で鳴らす俺たちに言わせれば、それは徒労ってもんだ。


 ……だから、あれだ。

 今俺たちが向かっているのは別に西山って訳じゃねえ。

 西山の方が勝手に俺たちの前に突っ立ってるだけだ。


 チーム・ヴィーナスの後ろをついて歩くチーム・ロワイヤル。

 有名人である七人の後をついて歩いていた連中も、俺たちのやる気の無さそうなやり取りを聞いて次々と足を速めて行ってしまった。


 ……そして共闘を受け入れてくれたチーム・ロワイヤルも、そろそろ俺たちを見限りたいと言わんばかりのオーラを放ちだしていた。


 遠いよお前ら。

 綴夢ちゃんの身代わり射程外じゃねえか。


「紫丞さん、朝から何も食べてないでしょ? あたし、心配よ!」

「うるせえ。それを食うぐらいなら、ウチは餓死を選ぶ」


 ああ、ほんと羨ましい。

 俺も朱里ちゃんのほっぺ、そんなに膨らませてみたいもんだ。

 そしてほっぺたをつついて、とんがらせた口からぶぶぶぶぶって。

 くをっ! 萌えるっ!


🐦がんっ!


「……んだよ、姫。なぁにを想像して伸ばしてんだよ」

「おお、鼻の下、伸びてた?」

「いや、下半身」

「おげれつっ!!! てめえ、たまには自分が女子だってこと思い出せよ!」

「お? なんだよ、ウチを女子扱いか? こんな事して欲しいのか?」

「いだだだだだだだ! 腕を組むなバカ王子っ!」

「ちょっと雫流! あたしの紫丞さんを取らないで!」


 取ってねえし。

 取って欲しいくらいだし、この電気ウナギ。


 立ち止まって腕を引っ張り合う俺たち。

 呆れ顔のまま振り向いて仁王立ちの花蓮。

 そんな金パツインテが、溜息と共になかなか面白い事を言い出した。


「……大岡裁きにしては、真ん中の子供が親よりも大きいわね」

「この子はあたしの子です!」

「うるせえ! ほら、ほんとのママ! なんか言えコラ!」

「いだだだだだだだ! 一両払うから、この子を今すぐ引き取って下さい!」


 頭を抱えた大岡忠相が、溜息と共に目を向けた物。

 それは愛情たっぷりの朱里ちゃん弁当だった。


「……朱里。沙那はいらないって言ってるから、それは私が処分するわ」

「いだだだだだだだ! そうはさせねえ! 俺が番組終了後に美味しくいただく!」

「変態。私に譲ってくれたら、一回だけなんでも言うことを聞くわ」

「なんだと!? そういうことならもちろん譲ってやろう!」


 何たる破格な条件っ!

 何でも…………。


 うおお! 何っ! でもっ!!!


🐦🐦🐦🐦🐦がんっ! ごん! げん! こん! かーん!!!


「じゃあ願い事を早く言いなさいな」

「せかすんじゃねえよ! ちょっと待て!」

「簡単な願い事ね。……はい、ちょっと待ってあげたわ。じゃあいただきます」

「詐欺だーーーーーーーー!」


 大騒ぎする俺たちを見ながら笑い声を残していく人影も随分と減って来た。

 なあ花蓮。

 かなり出遅れてるんだけど、そうまでして空腹を何とかしたいの?


 ふくれた顔をした朱里ちゃんから弁当箱を受け取った花蓮が手近なベンチに腰を下ろす。

 ちきしょう、今日はどんなパンダが入ってるんだ?


 つまみ食いに備えて指をバキリと鳴らしながら近寄った俺の目の前でパカンと開かれた蓋の中。

 そこには、冷めてもおいしいから揚げが八個ほど転がっていた。


「詐欺よーーーーーーーー!」


 がっくりとうな垂れたまま弁当箱を俺に突き出す花蓮。

 いらねえよ俺だって。

 今日はインナーにダックスフントのTシャツ着てるんだから。


「あれ? 朱里ちゃん、今日の弁当はパンダにしてないんだな」

「あたり前でしょ、好きな人にあげるんだから、そんな冗談みたいなことできないでしょ」

「くそう! このっ! このっ!」

「やめなさい、変態。その木に罪はないわ」


 悔しがる俺の後ろに立った発電所。

 なんだよ、もじもじしやがって。


「う、ウチが作ってやろうか? 弁当」

「いらねえよ。なんで俺が王子弁当なんか食わなきゃならんのだ」

「くそう! このっ! このっ!」

「やめなさい、沙那。地球に罪はないわ」


 んだよ、地面叩いて悔しがってんじゃねえよ。

 冗談じゃねえ。そんなに俺に押し付けたかったのかよ、唐揚げ。



 どたばたと遊んでたら、西山への踏み固め道を通る人がいなくなっちまった。

 つまり、俺たち最後尾。

 そろそろ急がねえとまずいんじゃねえの?

 なんて思っていたら、花蓮が呑気に携帯を見始めた。


「おい、急がねえでいいのか?」

「人目から離れるにはこの作戦がいいと思ってね。さあ、暗号解読よ。今回は協力無しだからその辺りは注意して。絵梨たちは、道の反対側でここを通る人の目を引き付けて。もちろん先に暗号が解けたら勝手に動いて頂戴。私たちが後を追うから」


 おお、さすが司令官。

 よくもまあそういう事思い付くもんだよ。

 じゃあ、俺たちはもうちょっと奥まったあたりで暗号を解きますか。


 俺が少し離れたベンチへ歩き出すと、涙をたぷんたぷんに溜めた朱里ちゃんがハンカチを噛み締めながら離れて行く沙那に手を振ってる。


 くっそ。

 やっぱりあいつ、殺したいほど羨ましい!

 ……でも、しばらくは俺が朱里ちゃんを独り占めだ。

 いいとこ見せて振り向かせてやる…………、ん?

 さっき、花蓮に言われてたっけ。

 アレ、使うなって。


「しまった! 司令官に、俺のチャームポイント封印されてたんだった!」

「ちょっと雫流、うるさい。こそこそ隠れる意味が無くなっちゃうじゃない」

「それよりも、朱里ちゃんに見せたい俺のいい所が……」

「雫流のチャームポイントって、へその緒でしょ? 見たくないわよそんなの」

「切れて無くなってる!? いやいや、俺たちそんな生まれ方しねえから!」


 ああもう、朱里ちゃんが冷たい!

 俺にも沙那みたいに接して!


 肩をがっくり落とす俺の前でベンチに腰を下ろした赤髪ポニテ。

 それがにっこり笑って見上げてきた。


「今日はアレ、使っちゃいやだからね? いざって時まで大事に取っておいてよね。頼りにしてるんだから!」


🐦がんっ!


 …………おお、素晴らしい。

 これがツンデレという奴か…………。


 タライの痛みさえ心地いい。

 もう、何発落ちてきても構わない。

 俺は開いてはいけない扉に人型の穴をあけて飛び込んだ心地になりながら、朱里ちゃんの携帯を覗き込む。


 そして、一気に眠気に襲われた。



 西風は山へ強く頂に騒ぐ虹の下 孤独にべん当蟹もちる嵐 長蛇の東京蝋燭も嵐の山に属し ~虫は触る物濁し己掻消す蛇~



「字、多いよ。なんだよこれ」

「文句を言わないの。早くヒントを……、じゃなかったね。んと、今日はあたしがヒントを見つけるから雫流が推理しよう!」


 しよう、じゃねえ。

 推理なんかできねえっての。


 朱里ちゃんの健忘症、ここに極まれりだな。

 俺がバカだってことまで忘れちまうなんて。


「よし! それじゃ雫流の気持ちになって……。あたしはバカ。あたしはバカ。あたしは……」

「……覚えてやがったか」

「うーん。虫も蛇も嫌い……。蟹弁当は美味しそう……」

「俺、そんなだっけ? なんだか不憫に思えてきた」


 首を左右にカクンカクンさせる朱里ちゃんを見ていたら、明日からはもうちょっと一生懸命生きようって気になって来た。


「この、へろへろって記号が気になる……」


 さすがにそこまでバカじゃねえ。

 それ、『から』って漢字じゃねえか。


 しかし困ったな。

 ほんとにこんな戯言たわごとから、俺が推理するの?


 ……いや、違った。

 戯言なんかじゃねえ。

 いつも俺が口にすることを、朱里ちゃんはまっすぐに信用してくれていた。


 今日は俺が……。


 ここんとこ、ずーっとみんなに頼りっ放しだったからポケットに突っ込んだままにしていたルーズリーフ。


 俺は久しぶりにプラの表紙を捲って、シャーペンを走らせた。


「……そう言えば久しぶりね、それ。あたしを助けてくれた夜以来?」

「おお、かもな。ほれヒント担当。もっと絞り出さねえか」

「うん。まじめに言えば、このヘロヘロで挟まったところがヒントになってるような気がするの。触る物を汚す」


 言われるがままに『虫』の字の両端を塗りつぶしたら、叱られた。


「ちょっと! 読めなくしてどうする気よ!」

「あれ? 俺、また何かバカなことした? でもさ、こうして減らすと読みやすくなるかと思って。『虫』の字、多いし」

「一つしかないわよそんなの! …………ちょっと、なにやってるのよ」


 ■風■山■強■頂■騒■虹■下 ■独■べん■蟹■ち■嵐 ■蛇■東■■■■嵐■山■属■ ■虫■触■■濁■■掻■■蛇■


「……おおう。漢字ばっかりになった。パス」

「押し付けないでよこんなの……。ん? ああ、なるほどね。ほんとに虫ばっかり」

「おお。三文字ほど読めない」

「……うそでしょ? 雫流、ほんとに高校生?」


 呆れ顔になった朱里ちゃんが、俺からルーズリーフをひったくってにらめっこ。

 ちょっと、それ取られたら困るっての。


 しょうがねえ。

 俺は携帯で暗号読むか。


 ……あれ?


「おいおい、ちげえじゃねえか。ヘビが自分を消すって書いてあるぞ」

「消す? …………まさか」


 朱里ちゃんはシャーペンまでもぎ取って、さらに字を消していく。

 おお、これくらい減ったら俺にも読め……、る。


 ■■■山■■■頂■■■■■下 ■■■べん■■■ち■■ ■■■東■■■■■■山■■■ ■■■■■■■■■■■■■■


「よめ……、読めた!」

「凄い! やっぱりあたし達、最強ペむぐっ!?」


 慌てて朱里ちゃんの口を押えて、逆の手で一本指を立てる。

 コクコク頷いたのを見てからさりげなく伸びなんかして、ゆっくり歩き出したらみんなが付いてきた。


 よし、上手くいった。


「……おお。ちょっとかっこいいじゃない、雫流」


 俺はこの言葉に、平静を装ったまま返事をしなかった。

 だって、ハトが騒いで他の連中に見つかったら台無しになるからね。


 そんな様子に何を思ったのか、歩きながら俺の顔を下から覗き込む赤髪ポニテ。

 アーモンド形の瞳をにっこりさせて。

 ピンクの唇をにっこりさせて。


 ……ピンクの、唇を……。


「俺! さっきこの手で唇をっ!? どうしよう! 早くパウチしなきゃ!」


 そしてドキドキした俺の正面から飛んで来た無数のボクシンググローブ。


🐦ごふっ!

🐦ごはっ!

🐦どふっ!

🐦げはっ!

🐦カーンカーンカーンカーン!


「ぐほおおおおっ! それはパウチじゃなくて、パンチ! ロケットパンチを食らうロボの気持ちが痛いほど分かったわ!」

「なんでゴングなんか鳴らしてるのよバカ!」


 せっかくの計画、すべてパー。


 俺たちは周囲にいた何十人ものみんなに追いかけられながら、東山の山頂を目指すことになってしまった。




  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 やっとの思いでたどり着いた山頂。

 空気……。

 もっと、空気!


 呼吸が激痛を伴う程激しい音を鳴らす俺の横で、涼しい顔の赤髪ポニテ。

 決めたよ俺。

 鍛える! 走り込みする!


 ……明日からねっ!


「べん……、ベンチ……」

「情けないわね。そんなに座りたい?」


 おお、なんという揮発性記憶バカ。

 もう忘れちゃったのかよ目的地。


 後ろから追いすがる連中は、キースと絵梨さんがなんとか足止めしてくれている。

 二人のためにも急がなきゃ。

 ……途中で脱落した綴夢ちゃんのためには、ちょっとだけ頑張らなきゃ。


 でも、目的地まであと一歩というところでふと思い出す。

 それは教室で言っていた、花蓮の言葉。


 俺、エサって言ってたよな?

 なんのことだろ?


 そんな疑問が、ベンチを視界に捉えたところで一瞬で掻き消された。

 そこに悠々と腰かけていたのは……。


「は、治人……」

「やあ、待ちくたびれたよ、雫流」


 白い前髪を人差し指で掬ったイケメンがベンチを立つと、チーム・ヴィーナスが総出で身構える。


 こいつ、昨日も先に暗号を解読したってのに、俺たちが来るのを勾玉のすぐそばで待ってやがったし。

 今日も同じことを……。


「どういうつもりさ」

「言ったじゃないか。最高の舞台を整えるって。……そのためには演出だって凝らないとね」

「……ここが、お前の言う最高の舞台なのか?」

「いや? ……今回は、役者をご招待するために伺ったのさ」


 どういうことだ?


 そう口にするより早く、赤い瞳が真横に立っていた。

 そして後から吹き付ける風圧に吹き飛ばされる。


 なんて速度だ!

 尻もちだけじゃ飽き足らず、二回ほど転がってやっと停止。

 そのまま見上げた先では、微動だに出来ない沙那の肩に、真っ白な手が乗せられようとしていた。


「治人! やめろーーーーーーーーー!」


 ……まるで、声が魔法になったよう。

 俺の頭上から轟音を率いた黒い霧が襲い掛かると、咄嗟に治人が距離を取った。


 でも空から舞い降りて地に落ち、沙那を救った黒い霧。

 それは俺の声でもなんでもない。


「……この子を苦しめておいて……、楽に死ねると思うなよ、小僧」

「姉ちゃん!」


 その右の腕に控えしは、アーティファクト・『風殺し』。

 あたかも手のひらを倍するほどの黒い手には血管のように赤い光が脈動し、その長い爪に切り裂かれたものは、それが風であっても動きを止めると言われる魔具。


 そして姉ちゃんの左右に音もなく現れた二人。


 天使の武器、レイピアを胸に構えた美嘉姉ちゃん。

 徒手ながら、あらゆる魔法と科学のエキスパート、飛鳥さん。


 魔界の王と天使長を前にした治人は……。


「くっ……。ふははははははははっ! なんということだ! 世界の全てが、僕の敵になった! ……ふふっ……。そうまでして否定される恋だいうのか……」


 顔をゆがめて笑ったと思うと、右手を天にかざす。


 それと同時に、轟音と振動とが山を埋め尽くした。



 ド・ゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!



 あまりの振動に、視界が像を結ばない。

 地に足が付いていることすら把握できない。


 やっと世界の振幅に慣れた俺の瞳が捉えたもの。


 ……それは、笛だった。


 俺たちの目の前に叩き付けられ、地面を抉るようにへこませた、電柱を二回りくらい太くしたような巨大な笛。


 そして、それを片手で軽々と持ち上げる癖っ毛ショートの金髪女。


「にゃははははは! 美優、メンコだメンコ! 全部ひっくり返したから総取りだかんなこれ! 沙甜のパンツゲーット! かぶらせろっ! 山田と祥子とアリクイは具の方よこせ! ハーレムだ! ハーレム王の冠、スケスケっ! うけるっ!」


 軽口はいつも通り。

 だが、そこにいたのは間違いなく、魔界三王が一人。

 くりっとしたネコ目を真っ赤に光らせた、ベルゼビュートその人だった。



 そして手にした笛を頭上で回転させると、不思議な音色が山頂を満たす。

 するとどこからどのように生まれたのやら。

 一瞬で周囲を覆う濃霧。

 そして気付けば、無数の氷の槍が全身に突き刺さっていた。


 いや、突き刺さるという表現が適切なのかどうなのか。

 痛みも何もなく、ただ身動きがまったく取れないだけ。


 それは姉ちゃん達も同じようで、四肢を封じられたまま、燃えるような怒りを声へと変じて、ベルゼビュートにぶつけていた。


「貴様……っ! 『うつ姫の檻』など持ち出しおって何の真似だ!」

「便利だなこれ! 武器としては初めて使うけど! アーティファクトって、美優がいじるとなんでもかんでも壊れっからこれくらい頑丈だとやらしいことに使い放題なんだこれ!」

「なんに使ってるんだよおい!」


 くっ!

 昔からの習慣だ、緊張感のないツッコミをつい入れてしまう。

 ……でも、そんな関係だったじゃないか、俺たち。


 だから、そんなことは今すぐやめてくれっ!


「うけるっ! ほれ、愚息っ! アリクイ持ってトンズラすんだろこれ! とっととイけっての! イけとか言ってもあれな! 公序良俗を守って健全に、まずは文通からですね……」

「ありがとうございます、美優様。……雫流。君と沙那が約束をした場所で会おう」

「てめ……、何を……っ! ぐああああああああああ!」

「沙那! 沙那ーーーーーーーーーーっ!」


 霧に掻き消される皆の叫び声。

 だが、姉ちゃんの声だけは落ち着いていた。


「美優、三対一だということを忘れるなよ? ……飛鳥!」

「うむ。一発しか持ってきていないのだが、出し惜しみしている場合ではないか。……『解呪ディス・エンシエント』」


 飛鳥さんがパチンと指を鳴らしただけで、すべての氷が砕けて蒸発し、一瞬で濃霧が消え去った。

 それと同時に姉ちゃんが『風殺し』を、美嘉姉ちゃんがレイピアを振るって襲い掛かると、美優ちゃんは巨大な『うつ田姫の檻』を器用に操って応戦する。


「しー君! あんた達は、すぐにしーちゃんを追って! 早く!」

「う……、わ、分かったっ!」


 正直、治人にどうやって挑んだものか分からない。

 それに、俺が沙那と約束をした場所ってどこの事だ?

 ……だけど、考えてる場合じゃねえ。


 行くしかねえ!


 胸中に渦巻く不安を吹き飛ばすように、俺は山道を全速力で駆け下りて行った。


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