第34話 8歳の誕生日


 2010年2月6日はニャンズの誕生日だ。アダプションの書類に書いてある。


 4月6日きっちり2ヶ月で我が家の家族になった。覚えているのは受け渡し可能の一週間前に会場にやってきてからだ。


「あと一週間は渡せません」と言われた私達は(へびのなまごろし)状態で一週間待ったから日にちは絶対に忘れない。でもこの一週間があったからチャチャも我が家の家族になったのだ。


 最初は一匹と決めていた。もしこの日に受け渡し可能だったらコタローだけを連れて帰っていたはずだ。それから、もし一週間後に初めて来ていたら、また違っていたかもしれない。チャチャも我が家へと決めて契約書を書いている時に真っ白なフワフワの子猫がやってきたのだ。それはそれはモデルのような器量良しだった。もし、この日初めて来ていたらこのフワフワたちが家族になっていたかもしれない。長毛種の真っ白とグレーの子猫たち。猫缶のモデルのようだった。


 「ひいい~~かわいい、せめて写真を撮りたい!!」とカメラを向けて息子に怒られたのも良い思い出だ。


 「なにしてんのママ!うちの子はもうこの子だよ」とちょいひねた顔の茶トラの子猫を愛しそうに撫でていた。


 縁というのは不思議だなと思う。運命だったのかなと思う。


 もしあの日タイムマシンで当日に行けたとしても絶対にコタロウとチャチャがいい。その運命の日からもうすぐ8年。


 ロスアンジェルスで出会った。2年間暮らしてオハイオに引っ越してきた。猫のために飛行機の座席やホテルも一緒に泊まれるように予約した。家ももちろん人間家族と猫家族どちらも考えて決めた。


 大切にしているつもりだけど、猫達はどう思っているのかな? 


 猫の8歳はもうシニアだという。人間の年齢にすると48歳だという。


確かにあまり遊ばなくなった。まだ紙のバレーボールやヒモ遊びはするけれど、延々走り回るようなハードな遊びをしなくなった。


 先日コタローがベッドの下でずっと寝ていたので心配になったのだが、ただ寝ていただけだった。長く寝るようになった気がする。


 なので8歳のプレゼントはフカフカのねこベッドにしようと決めていた。コストコでもらうダンボールが大好きで、いつも箱の中に入って寝ている。


喜ぶよ~!と夫とペットスマート(アメリカの有名なペットショップ)に行ってきた。ここでも、もう犬も猫は売られていない。かわりに里親募集のかわいいネコたちがいた。どうかこの子達も良い家族が見つかリますようにと心から願う。


 家に帰り「ほら新しいベッドだよ、誕生日おめでとう!」と目の前に差し出した。猫達は怪訝な顔をしてフンフンと匂いをかいで、ついでに買ってきた猫トイレの方にストっと入り寝そべった。そっちじゃ、ない…。


 いつの間にか高齢になってしまった猫達。うんと長生きして欲しいと思う。いつか来る別れの日など今は考えたくもない。というか考えるだけで涙が出てくる。一日でも長く元気でいてほしい。ずっと一緒に暮らしたい。


 あの運命の日「2匹も助けちゃったよ~」と浅はかだった私は思った。とんでもなかった。


 2匹に助けられたのは私達だった。悲しいことや辛いことがあるたびに寄り添ってくれた。家族のいろいろな問題を解決してくれた。


 すごく大きな幸せを運んできてくれたのだ。


 ありがとう。


 うちに来てくれてありがとう。


 私達を選んでくれて本当にありがとう。


 ずっと一緒だよ、ずっと家族だよ。


 これからも楽しく幸せに暮らそうね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アメリカで猫と暮らす タミィ・M @lovecats

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ