第4話 猫に日本語を教える
私は国際結婚をしている。夫はアメリカ人で非常に面白い日本語を話すので、会話にならないことも多い。なので普段ほとんど英語で話をしている。
結婚して以来英語ばかりの生活に疲れ切ってしまった。子供が生まれて、息子には日本語を話してもらいたいと、毎日使い面白おかしく教えた。
猫関係ないやんけと思われるかもしれないが、実は猫にも日本語を教えているのだ。こいつ頭おかしいと思われたあなた!動物は言葉を覚えるのだ。
特に犬は有名だ。 命令をドイツ語で言わなければ言うことを聞かないとか、決まった言葉を訓練で使うという。
しかし猫だって同じだと思う。絶対に理解しているのだ。 犬は返事をし、おいでと言われたら走ってくるけれど、猫だって本当は言われたことをわかっていると思う。犬と違うところは
「聞こえてるけどお~わかってるけど~めんどくさいなあ、あ、そうだ今わからなかったふりして寝てようっと」という猫的性格によるのだと思う。
LAで生まれた猫達の最初の家庭はスペイン語だった。5匹連れてきた時に奥様の方はスペイン語で泣きながら囁いていた。猫達はわかったような顔をしている。
いかん、この子達と言葉が通じないと本気で思った。
LAのローンデールにあるペットショップで里親会が行われたのだが、その日猫達を連れて帰ることができなかった。2ヶ月以上ではないと譲歩できないのだそうだ。
「一週間だけよ、うちで面倒見るからね」と5匹に
いかん、このままでは英語脳になってしまう、とこれまた本気で思った。
一週間経って我が家に来た2匹。 当時私の母が一緒に住んでいたので、すぐに(おばあちゃんの日本語)の洗礼を受けた。
母も私としか日本語が話せず日本語に飢えていた。起きている時はずっと日本語で猫に話しかけていた。
そのおかげもあり、日本語をかなり理解していると思う。そしてある日食いしん坊のコタローはついに「ごはん」という発音を物にした。
控えめで、もの静か。愛されキャラのコタローさんだが食べ物への執着心が凄い。
家に来たその日に最初に威嚇したのはコタローだった。しかもチャチャにだ。 そして2皿のキャットフードをどっちも自分の物にした。
夫は涙目で「きっと他の兄弟にいつも取られていたんだよ、お母さんのミルクもいつも押しのけられて、だからこんなに小さいんだ」と素敵な物語を作っていたが、そんなわけねーだろ。単に意地汚いだけだと思う。
そんなコタローはついに
「お、ご、ごあん、ごあん、ごはん」
「うわあああ~~~やった~~しゃべったああ~~」
世の中には「まぐろうまいにゃー」なんて言える猫もいるので今更なのだが、はじめての言葉が「ごはん」はやはり嬉しかった。
すぐにキャットフードをあげた。
「ごあん」といえば{ごあん}が出て来る。
パブロフの犬ではなくオハイオの猫だ。
それいらい時間になるとお尻をフリフリ「ごあん」とやってくる。発音も上手になってきた。ごにゃ~~ん ん、ん、ごあん! 上手に発音できたらキャットフードがさっと出てくる。
息子は「かわいそうだよ~虐待じゃないの?」と言った。ち、違うよコミュニケーションだよねえ。
それ以来ごはんの時間じゃないのに首を傾げて「ごあん?」なんて言われると「かわいい~」とあげてしまう。学んだのは発音ではなく人間の操り方だった。
やはり猫は賢かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます