第8話 毛深いキス
チャチャはキス魔だ。チャチャの話ばかりだが、変なことをする担当なのでしょうがない。
「おなかすいたよ」と毎朝起こしにやってくる。
どーんとベッドに飛び乗り、顔の横へ。
ふんふんと荒い鼻息が近づいてくる。ふんふん、ふんふん、ふんふん。鼻息に合わせて、頭のなかにはジョーズのテーマが鳴り響く。髭がもしゃもしゃ顔に当たる。
そしてバフンと言う感じにキスされる。
「うわあ~やめて~」と起き上がる。
動物好きな人は「え?そこ反応違うでしょう?」って言うかもしれないが、熟睡からの毛モジャモジャキッスはやめていただきたい。
「やめてえ」と言うと、夫は「でも君がはじめたんだよ」という。
「え?そうだっけ?」
「そうだよ、嫌がるチャチャにチューって口を近づけてたじゃないか?」嫌がるって。
確かにそうだった。 可愛くて、よく頭の上にキスをする。その時は顔の前にチューっと口を近づけたんだった。そうしたら本当にチューってされた。
嬉しかったけれど、驚いて思わず「きったねえ」って口を拭いて言っちゃったんだった。 そうだった。
「ひどいよねえ、自分でチューなんて言ったくせに、汚えなんて、ね、チャチャ、ママはひどいねえ」
「う!だってだってえ、そのすぐ前にコタロウのお尻に顔突っ込んでたもん!まさかチューってすると思わなかったんだもん」
しかし、賢いチャチャはこのリアクションを忘れなかった。
「ニンゲンのくちにボクのくちをくっつけると、どひゃーとかやめてえと言いながらおきるよ」
また一つ学んでしまったのだった。
キスの後は
「痛いよ!やめてよ。はっ! これが(あなたが噛んだ小指が痛い?)って、ちが~う」昭和の歌を思い出しつつ一人ツッコミ一人ボケしながら起き上がる。
起きるとチャチャはすっごく嬉しそうにベッドから飛び降りて「はいこっちでしょう!」と振り返りながらトイレに誘導する。介護されてるおばあちゃんの気分だ。その間ずっと見ている。近くにちょこんと座って。 手を洗う時は洗面台に飛び乗る。
「終わった?」と顔を見上げながら飛び降りる。ドッスンとすごい音がする。なんせ9キロだから。ファーットチャチャがどこかから飛び降りると、必ずドッシーンと音がする。
後ろを振り向きながら階段へと誘導される。階段の前にはコタローが待っている。起こすという大変な作業は全部チャチャにやらせて、コタローは「ごくろう」と言う感じで、じっと待っている。そして興奮しすぎて
「まにゅんがにゃんごろにゃんぷるみゃ~」とだいたいこんな感じの発音で何かを言う。通訳・・たぶん「おはよう早くご飯ちょうだい」と言っている。目がキラキラしている。食いしん坊め。
階段を降りだすと2匹は尻尾をぴーんと立ててドドドと一緒に降りていく。あのおしり、あの後ろ足。この光景が毎朝の楽しみなのだ。
夫が引退してから朝ごはんは夫の仕事になった。なので激烈チューはあまりなくなったのだが、そうなるとそれはそれで寂しい気もするのだった。
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