第6話 飛行機に乗った猫達 LAからオハイオへ



 オハイオはアメリカの中西部なのだが、どちらかと言うと東に近い。LAのあるカリフォルニアは西海岸だ。


 LAに三年住んでオハイオに異動が決まった時に悩んだのは猫達のことだった。飛行機に乗せる場合、貨物室にケージごと入れられる。寒すぎたり暑すぎたり脱水になったりして死亡事故が大変多い。


 心配した私たちは車での移動を考えた。カリフォルニア州からオハイオ州。四日から五日間くらいかかる。高齢の母と猫達のことを考えるとぶっ通しで走る訳にはいかない。途中モーテルに泊まるとしても、ペット同伴OKかどうかを調べなければいけない。アメリカのホテルはペット同室OKのところが多いのだが、モーテルはわからない。


 それに車はカローラだ。大人四人と大猫二匹(キャリーで乗せる)はかなり無理がある。数時間ならまだしも一日何十時間も走るのは辛い。


 その時に素晴らしいアイディアがひらめいた。 キャンピングカーを借りて楽しみながら移動するというものだ。たとえ五日かかったとしてもキッチンもシャワーもあるし、何より猫達にもストレスが少ないだろう。「いいね、いいねえ」とさっそくレンタカーを調べた。


 自分たちの車も持っていかなければならないので、移動式の引っ張るタイプのものを調べた。しかし西からほぼアメリカ横断でオハイオで(乗り捨て)という選択はないことはなかったけれど高額だった。


 飛行機会社に問い合わせたところ、一社が六時間以内のフライトの場合足元にキャリーを置いて一緒に乗れるという。ただし猫席はないのに席代は取るという。 それでもこれが一番良い選択だと大喜びして即決した。


 LA空港でキャリーを手に下げてセキュリティーを通ろうとすると猫は出して抱っこしてくれと言われた。これは想定外だったので緊張した。こんな場所で逃げ出したら大変だ。私がコタローを夫がチャチャを抱っこしてセキュリティーを通ることにした。意外とおとなしく、どちらかというとしがみついていた。


 空港の職員さんたちはチャチャを見てでかい!とかガーフイールド!と言って笑っていた。アメリカでは意外と茶トラ猫が人気がある。


 その後キャリーに入れて空港のベンチに乗せていたら、小さい女の子が「ああ~なんてかわいいキティーなの?」と寄ってきた。間髪いれずにウシャ~!!と威嚇するチャチャ。

ごめんね、このキティーちゃんは乱暴なの。


 飛行機では足元にキャリーを置けるので私達も猫達もすごく安心だ。隙間からずっと背中をなでていた。テキサスで乗り換える時に夫とは離れた席になった。 


 夫が猫と一緒に乗るからと、私と息子と母は3人がけの席だった。

しばらくして夫が青い顔で私達の席までやってきた。

他の乗客がわからないように日本語で


「ファブリーズ、ある?」と小さい声で聞いた。

ピンときた私は


「あ、やっちゃったの?」と聞き返す。


「うん」


「こ?」


「……面白くないよ、早くして」


 いつもは笑うのに、夫はちょいキレ気味だ。


 犯人はチャチャだった。

一人のんびり映画など見ていた夫、突然の異臭に

 What that hell!!なんじゃこりゃあ~ すぐに事態に気がついた夫はすぐにキャリーの掃除をして、漂う香り対策に私が持っていたファブリーズを求めてやってきたのだった。


 こういう事件に夫が当たるときが多い。 猫達は選んでいるのかもしれない。

こんな思い出を作りつつ私たちは無事にオハイオにたどり着いたのだった。


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