第27話 悲願のキャットタワー


 念願のキャットタワーをやっと購入した。ニャンズはキャットタワーを持っていなかった。もう7歳なのに。もうシニア(認めたくないけど)なのに。もう遊ばないかもしれない、しかし今買わないと自分が一生後悔すると思い購入した。


 猫達をアダプションしたのはロスアンジェルスに住んでいた頃で、夫は空軍に勤めていた。キャットタワー買おうかと決めた頃にオハイオに移動が決まった。軍の引っ越しというのは基本無料なのだがランクによって持っていける重量が決まっている。では大きいものだから現地についてから買うほうが良いだろうと購入は保留になった。


 オハイオに着き、ホテル暮らしが2週間。空軍基地の中の宿泊施設に1ヶ月。その間に借家を探した。その頃は独立した息子も一緒に暮らしていたし、日本の母も一緒だった。なので4ベッドルームの家を探した。それから竜巻と嵐のことも考え地下室アリにこだわった。


 思った通りの家が見つからずに、ついに家を建てることになった。その家ができるまで5ヶ月だけアパートを借りることにした。引っ越しコンテナの荷物は全部ここに来たけれど荷解きは最小限にして、全部ガレージに詰め込んだ。


 そうしている間に猫達はどんどん大きくなっていった。やっと家ができて引っ越しも済ませた頃にキャットタワーを見に行った。ペットショップにはものすごく高価なものか、そうでなければ子猫でゆらゆら揺れそうな作りの悪いものだった。


 心配になったおとうたん「自分で作る」と木材やカーペットなど買い込んできた。しかし夫の仕事は忙しく、全然作る時間なんてない。ある日ついに「何年経ったと思うの!!」と鬼嫁の爆弾が炸裂した。


 このままではおぢいちゃんになってしまう。ああ、キャットタワーさえ買ってあげられなかったんだと後悔したくなかった。もう猫のためというか自分のためだ。

そういう過程がありついに購入することになった。


 検索したのは Cat tower for large cats(大きい猫のためのキャットタワー)


 デブ猫専門店もあったがこちらはすごくお高かった。アマゾンに頑丈そうな良いのがあった。181センチでベージュのタワー。コンドという箱状の部屋が2個ついている。コンドには前と後ろに2箇所穴が開いている。大きい猫にはこれは助かる。なんせ我が家のコンドは小さくて(というか普通サイズで)チャチャもコタロウも頭を入れたら体が半分出てしまうのだ。上に乗るとお尻がはみ出している。


 キャットタワーは土台もしっかりしていそう、カスタマーレビューの動画を見ると大きな種類の猫が乗っていた。お値段もなんと78ドル。8000円位でこのクオリティーはすごいとすぐにオーダーした。


 来た途端、夫は鬼嫁に怒られる前にすぐに組み立てた。そしてなんとビビリのコタロウさんが一番乗りをした。次にチャチャも乗ってきた。フンフンと匂いをかぎながらのぼったり降りたり。一番上まで登ったチャチャはこのタワーをものすごく気に入ってしまった。


 そしてなんと、もっと遊ぼうとするコタロウの背中を噛んだ。


 こんなこと初めてだった。ご飯もおやつもコタローに譲るチャチャ。おもちゃで遊んでいても横取りするコタロウに「いいよ、いいよ、兄ちゃんは後で」って感じに譲るチャチャ。いたずらはハードでも絶対に誰も傷つけないチャチャ。(おとうたんの心以外は)


 そんなチャチャが7歳にして初めて自己主張をした。「この城をこの宮殿を譲ることはできねえ」と。

MINEマイン(ぼくの)アメリカの子供が反抗期に使うNOの次に多い言葉。シニアにしてはじめて目覚めたチャチャ。


 今日も一番上までダダダと駆け登り、一番上からマイン!「ふん」と鼻息を荒く見下ろしている。多分気分はライオンキング。


 かわいそうなコタロウちゃん?いいえコタロウさんはちゃっかりしているので、いない時ちゃんと遊んでいる。2個も買わないので、仲良く遊んでください。

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