第32話 アニマルホーダーという病気


(この回はいつもと違い真面目な内容になっています。残酷な表現も含まれます)


 日本ではまだあまり知られていないかもしれないが、ホーダーという物を溜め込む病気の人達がいる。


 強迫性貯蔵症という一種の精神病だそうだ。物ではなく(動物)に執着する人もいる。これがアニマルホーダーと呼ばれる人たちだ。


 商品としてなどではなく、ただただ動物を手放せない人たち。私がアメリカのテレビで見たケースはひどいものだった。時々見ているホーダーズという番組だ。ホーダーズ。物が捨てられずに溜め込んでいく人たち。日本でいう(ゴミ屋敷)に当たると思う。


 いろいろな理由で何十年も溜め込まれた(もの)たち。中には目を背けるような汚いゴミも多い。怒って怒鳴る家主など見ていて辛いことも多いけれど、家に訪れる精神科医やカウンセラーと話を重ね、心を開いていき、家がきれいになっていく様子がとても感動的な番組だ。


 その番組でアニマルホーダーズという言葉を知った。


 Hoarders (A&E) 2012年のエピソード Terry/Adelle より


 見た回では猫だった。どうしてもどうしても猫達を手放せないと飼い主。とても優しげなテリーという女性だ。猫が大好きで最初は数匹。それがあっという間に数え切れないほどに増えてしまった。


 依頼主は息子さん。テリーは一人暮らしの初老の女性だ。飼っている猫は50匹前後。本人も正確な頭数を把握していない。


 テレビクルーがドアをあけて家に入ると、目を疑う光景が飛び込んできた。どこもかしこも猫の糞尿が重ね上がりアンモニアで息もできない。床だけではなくテーブルもキッチンもどこもかしこも山のようだ。あまりにも不潔な室内。


 ここで生まれた子猫たちはアンモニアの刺激で目が潰れてしまっていた。どの猫達もひどい状態になっている。アニマルポリスの権限もあり一匹一匹保護されていく様子が撮影された。家の中も地獄のような有様で、猫の死体もたくさん見つかる。この飼い主はもともと優しい性格の女性で、ただただ猫が好きなのと泣きながらやめてと訴える。動物保護団体がこれは虐待だ、猫を思うのなら諦めて欲しいと説得する。


 この女性は亡くなった猫達も手放すことができなかった。クルーが冷蔵庫を開けた時におびただしい猫の死骸が発見された。食品の隣で何匹ものかちかちになった猫達。保存された猫は100匹近くもいた。テレビはモザイク無しで放映する。テリーはカチカチの死体を愛しそうに泣きながら撫でる。それどころか道路脇ではねられた小動物も冷蔵している。家の中からはジップロックに入ったものもあった。


 かなり重い病気だろうと思う。きちんとした治療を受けるべきだ。そしてこれは(虐待なのだ)と気が付かなければいけない。


 見ていて気分が悪くなり、途中で一度やめて数日後にまた見た。結果を見届けたかったからだ。テリーはずっと泣いていた。「連れて行かないで」と。次々に運び出されケージに一匹づつ入れられる猫達の状態は野良猫よりも悪かった。どの猫も病気や怪我をしていた。


 カウンセリングを受け話し合いをして、猫は施設に引き取られ病院へ行き家の掃除が始まる。何回かの話し合いの結果、自分がどれほどひどいことをしてきたか理解し始めて涙を流しながら猫に謝るテリー。しかしここまでくると何年もの治療が必要なのではないだろうか?そうでなければ番組が終わればまた元の木阿弥だろう。

 

 猫が大嫌いだから怪我をさせるのも虐待だが、猫が大好きでも管理できずに野放しにするのも虐待なのだ。

 

 猫が好きすぎて虐待をしていることに気が付かなかったテリー。ついに理解して後悔の念に押しつぶされているように見えたテリー。その後どうしているのだろうか。優しげな風貌で涙を流しながら猫をなでていた女性。アニマルポリスや動物愛護団体がどういう措置をとったのかはわからない。厳しいアメリカだから「もう2度と動物を飼うことはできない」という判決になったかもしれない。いつの日か病気を克服して幸せになって欲しいと願っている。

 


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