第30話 再びコーティアロー先生と肛門


 2017年年末。そうつい最近の出来事だ。コタローさんのお尻が濡れていた。


 どちらの猫も汚したことはないので『珍しいね、どうしたの?」とティッシュで拭いたら、なんと赤い!血がついていた!え??とよく見るとお尻の横に穴のように深い傷もある!!


 「きゃあああああああああああ~!!!すごい怪我してる!病院!!」夫がすぐに私達がお世話になっているコーティアロウ先生(コタローと発音できないので命名)のところへ電話をして説明をした。


 外に出さない猫だし、兄弟のチャチャとは仲が良いのでこんな怪我は初めてだ。それなのに、コーティアロウ先生は元気だったら明日で良いという。こんなに深い傷なのに!!パニックになり涙が出て来る。


 「ERに連れて行こうよ、心配だもん、もしも手遅れとかなったら」自分で言ったToo lateという言葉にショックを受けて、ブワッと涙が出てきた。夫は元メディックという軍の医療班なので冷静だった。


 「深い傷ではないし、すごく元気だから様子を見よう」という。


 「バカー!一晩で具合がわるくなったらどうするのお??」


 プリプリと怒りながらグーグルで調べてみる。検索ワードは

『猫のお尻の横に深い傷』すると出てくる出て来る。多いのが

『猫のお尻の穴の横にあいた穴』だ。


 そしてグーグル先生すぐに

『肛門嚢炎』というワードがついたサイトを沢山教えてくださる。ふむふむと読み進めていき、その後画像を開くと、画面いっぱいの犬と猫のお尻の穴とその隣の大きな傷が目に飛び込んできた。


 「うわああああ~~~これだああ~~~!」


 すぐに夫に「これ!この傷そっくり。これだと思うよ」とスマホ一面の犬や猫のお尻の穴を、いや、その画像をぐいっと顔に押し付けるように見せた。


 「う、近いよ。うん、本当だ確かに似てる。これかもしれないけど、チャチャが噛んだかもしれないし、バイキンが入りやすい場所だしね。明日病院へ行こう」ということになった。


 そして雪が舞う-15度の中病院へ行ってきた。


 コーティアロゥ先生はコタローのお尻を覗き込み(すごく近くてドキドキした)指でグイグイと毛を広げて患部を観察して、すぐに「肛門のそばにある匂い袋の炎症と破裂」と言った。ただ言っただけではない。

 

 「ニキビみたいなのよ、でさ、化膿するんだけど、ある時ボンって破裂するのよ~痛って~て、ねえ」と素晴らしい擬音付きだ。ボンってところで手でボンと破裂するさまを見せてくれた。あいかわらずな先生だ。 


 「大丈夫だけど、抗生物質は必要よ。注射と薬どっちがいい?注射のほうが高いんだけど」

 「どのくらい違いますか?」

 「20ドル位だったかなあ、まあ1000ドルも違わないけど、がはは」

 「じゃあ注射で」2人で声が揃った。


 放り出してある体温計をお尻の穴にブスリと刺した時に「それ、ちゃんと消毒したよね?」と前回の記憶が蘇った。コタロウのお尻に刺した体温計そのまま突っ込んだからだ。この先生は動物扱いのうまい名医なのだが、ちとだらしないのだ。


 注射を打ち、患部に「清潔にするためと抗生物質が入ってる」というスプレーをブッシャーブッシャーとかける。先生、もう少し優しくして~。


 お会計は約100ドル。良かった良かったと車で数分の家に帰り着いてケージからコタローを出すと当然のようにペロペロ薬のついているところを舐めだす。うわああ、だめだめと止めながら、夫が先生のところへ電話をした。


 『大丈夫よ~』と言ったそうだが本当か?日本ではエリザベスカラーというのをつけるそうではないか。大丈夫なのか?日本のほうが細かくケアしてくれるような気がする。


 動物病院と言ってもオハイオとLAしか知らないけれど、LAは大きな病院だった。そして頼んでいないことまで調べて(レントゲンとか)とてもお高かった。このコーティアロー先生のところは、古くからやってる個人の町医者という感じで20ドル位の違いでも「どうする?」と聞いてくれる。近くに信頼できる先生がいるというのはとても心強いことだ。ちょっとくらいのだらしなさは目をつぶろうと思う。ちょっとだけね。


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