第1話 ロスアンジェルスで初めましての日
猫たちとのはじめての出会いはLAに住んでいた7年前だった。
この日のことはエッセイ「アメリカンおとうたんとの日々」と重複してしまうが書いておこうと思う。
(アメリカンおとうたん)とは夫のことである。こちらのエッセイには、アメリカ人の夫と息子とのおかしい日々とアメリカで驚いたことなどを書いた。
夫は空軍を26年勤めて軍曹長までのぼりつめたガチガチの軍人だった。軍の下士官という仕事は上から命令され下からはつつかれ、アメリカで一番ストレスのある仕事となっている。 警察や消防士よりもストレスは上のランキングなのだ。
異動も多く6年住んだハワイからロスアンジェルス基地に移ることになった。同時に日本から母を呼び寄せて一緒に暮らすことになった。
そのために私が市民権を取らなくてはいけないことになった。
高齢で急に生活が変わった母はふさぎがちになった。猫が大好きな母に喜んでもらおうと猫を飼うことに決めたのだった。
ところがどこを探しても猫がいない。ハワイにはのら猫がたくさんいた。実家で昔飼っていた猫は拾った猫だった。なのにLAでは一匹も見かけない。ペットショップにも行ったが犬も猫もいない。正確にはケージの中にいたのだが値段はついておらず(アダプション済み)と書いてあった。
そこで詳しく話を聞いてみた。
1 ペットショップでは犬猫は売れなくなったこと。
2 今までのケージを利用して日本で言う里親会をしてアダプションを週末していること。
3 子猫は春にたくさん来ること。
子猫希望だった私たちは春を待ち、アダプション会場にやってきた。そこに里子に出された子猫5匹が段ボール箱に入れられてやってきた。ちなみに段ボールはカップヌードルUSAだった。
5匹の小さな子猫たちその中の1匹に決めた。それがコタローだった。
「最初は一匹だけね」と厳しく言っていたのにもかかわらず、抱き合って寝ていた茶トラのチャチャを夫は見捨てられなかった。
普段厳しい鬼軍曹はクネクネしている。目が赤くなっている。
「ツーいいですかあ?だって一緒にスリーピング、かわいそう」と。
このことはブログや他のエッセイでも書いたけれど何回でも言う。何回でも書く。私はしつこいのだ。
「泣いたよねーあの時泣いたよねー」と事あるごとに言っている。
でもその後に「ありがとう」を忘れない。 だってチャチャはあの一言で家族になったのだから。
それなのに恩知らずなチャチャは夫にしばらく冷たかった。夫にツーンとして私の後を追いかけ回していた。ツーンならまだしも、シャーもする。
しかし、夫は最近引退し事態は一変した。
ほとんど家にいなかった(おとうたん)が毎日家にいる。 そしてにゃんずにご飯をあげる係になった。
おとうたんの猛烈なモテ期がやってきた。
2匹がにゃあ~んと甘い声で足元にまとわりつく。目尻を下げて「な~に~ごはん~?」とすごく嬉しそうだ。椅子に座ってテレビを見ているとぴょーんと乗ってくるようにもなった。しかも2匹で。
「うわあ~見てえ~」頬がピンクに染まり乙女のようだ。こんな嬉しそうな顔見たことない。
近いうちにきっと号泣する。そう信じている。
軍曹でメディックだった夫。 毎日ストレスとの戦いだった夫。 引退してしばらく腑抜けになってしまっていた。 どうしていいかわからないように、ボーッとしていたこともあり、鬱になったらどうしようと心配したけれどニャンズに癒やされ、今は引退ライフをエンジョイしている。
にゃんずに助けられたおとうたん。良かったね。
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