第23話 天を騙る者の過失

 シナバリの樹の周辺はぐるりと石垣に囲まれていて、西側がレグナムが使用できる正式な門、東側が調停者たちが出入りする通用口のようなものらしい。かなり昔に積まれたのか石垣は低く荒く、草と木の根に崩されながらかろうじて体裁を保っているが、隔てる物としての役割を所々で放棄していた。この石垣の外周を歩いていくので、原野と森を隔てる境はとても曖昧だ。隙間が空いているところや崩れた石垣から中の様子を伺う。多くの樹木の間に木造の家が数戸立ち並ぶが、町というには物足りない。森の中に人が間借りさせてもらっていると言った方が正しい。人の姿は誰一人として見かけなかった。


「二人もここにいたことがあるんだよね」

「二年間ぐらいね。シナバリには竜樹に仕える者と誉れ子と、調停者しかいないけど、中は生活する場を仕切っているからお互いが出会うことはほとんどないの」

「もともとは俺たち調停者の土地っていう認識が強いんだ。ただ誉れ子たちの修練の場として、ずーっと昔に借用を許したらしいってのがもっぱらの説だな」


 サフィエンが言うと、珍しくイビスは素直に驚いた顔をしていた。


 そのままサフィエンはシナバリの歴史について気まぐれな講義が始める。最初の竜というのがここで生まれて、そして初めて村を作って生活した場所。それから初めて空からの使者が落ちてきて、竜たちが戦いを覚えた場所、そして竜が消えた場所、それがここだった。


 竜がいなくなってからシナバリが禁足地となり、他のレグナムは種族ごとに決められた土地に移住した。だが種族に居場所がない調停者にとっては、帰るべき場所と言えばシナバリだったという。どこまでが史実で、どこからがおとぎ話なのかはよくわからなかった。ただその軽快な語り口調が面白かった。それがふと止まる。


「あれ、門番がいない。何かあったのかなぁ……」


 崩れかけた石門を通り抜けると、立ち並ぶ木々の間に幾つか建物が見える。だがそこの人影はなかった。


「ここが歳食って外回りできなくなった爺さん婆さんと、まだ外回り出来ない子供たちが住んでるところで、ついでに俺たちがここに戻ってきたときの寝床なんだ。奥に行って、とりあえず長に引き渡すわ。俺の仕事はそこまでだ」


 言いながらサフィエンはとぼとぼと歩き、そして左右を見渡して再度首をかしげた。いつもならばここでは戻ってきた仲間のために煮炊きをしているという。今は火の気はなく、しんと静まり返っていた。奥へいくとあの一番大きな木の根元だった。


「この樹って、こっちからだとたどり着けたのかよ!」

「そういえばレグナム側は触れないよう確かに柵があったっけか。この樹はすごく大事なものを守っているって言い伝えがあるからな。お前みたいな利かん坊には触らせられねぇってことさ」


 太い根の間にぽっかりと穴が開いている。中は明かりがともされていたが薄暗くて足元がよく見えない。カツンカツンと音を立てながら中へ入って行くサフィエン。その足音で、材質が金属らしいと分かったのは恐らく私だけ。鉄板の上を歩く、響く音がする。樹の根で隠れているが、中は恐らく人工物に違いない。慌てて先を行く三人の後ろを追いかけてほの暗い洞穴の中へ足を踏み入れた。


 中は大きな空洞の広場になっていた。階段状のミニホールになっていて、奥に扉が見えた。薄暗い中に人のざわめきがこだまする。多くの人がここに集まっているのが分かった。


「長ァ、例の三人連れてきましたよ」


 彼が階段を降りて中央へ行こうとしたとき、不意に横に座っていた男が立ちあがった。


「てめぇ馬鹿野郎!」


 影からするとサフィエンよりも頭一つ分以上背の高い、ガタイのいい大男だ。その拳が彼の顔を殴って、ぶっ飛ばすのがかろうじて見えた。同時に集まっていた人々が立ち上がり、口々に彼を罵る言葉を浴びせ始める。バカヤロウ、なんてことをしてくれたんだ、これだから人間は、云々。ほの暗い中でサフィエンがどんな顔をしているのかよく見えなかったが、少なくとも事態を理解できずに呆けているのだけは分かった。殴られた方の頬をさすりながら尻餅をついて唖然と周囲を見回している。


「鎮まらんか!」


 重みのある老人の声が聞こえて、罵声は小さくなった。なったが、今度はすすり泣く声が聞こえ始める。拉致されてきた私たち三人はもちろん、当の本人のサフィエンですら何が起こっているのか理解できずにいる。


「サフィエン!」

「は、へい!」


 中央に座すのが声の主のようだった。長に引き渡すと言っていたが、恐らくあの老人が長なのだろうと推測される。その口調は苦々しいのを通り越していた。


「しでかしてくれたな」

「俺なんかやりましたっけ……」


 私たち三人を捕まえてくるのは、幾人も天の声を聴いたうちで最も近くにいた彼が行っただけ、と話を聞いていた。その間に何か手違いがあったらしいことは本人が気が付いたらしく、立ち上がって服を直す。


「お前、その三人を捉える際、人を逃がしたか?」

「無用の殺生は、その、……好きませんから」

「しかもローブを着ずにあのナイフを使ったな?」

「あの日差しの中、塩湖付近でこの分厚いローブを着るのは自殺行為ってもんですよ」


 ぐっと怒りを堪える息遣いが幾つも聞こえた。正直なところ彼の行動に非は認められない。変な言い方であり、おかしな感想なのは重々承知の上で言わせてもらうならば、連れてこられた側の私としても、特に彼が失態を犯したとは思えなかったのだが。


「しかし今回はそれが仇となった」


 彼は首を傾げている。ローブは衣服としての役割よりも身分を示す役割の方が大きいため、着ていて損をするなら脱いでいたし、着ていなければならない時には彼はちゃんと着用していた。あの大きな目玉模様を最大限利用するために、着用の有無を決めているところがあった。


「その三人を捕えたことが、烏族クーウ四肢族オグに知れた」

「それは……」

烏族クーウの王妃と姫君、四肢族オグの王子を誘拐したと、そういう話で世間は持ちきりじゃ」


 声がしぃんと響く。長の言葉を聞きつつ、今度は私が首を傾げていた。うまく物事が飲み込めていないことに、いやに自覚的だったのでもう一度順を追ってもう一度考えてみる。


 サフィエンは理由があってローブを脱いでいた。そして武器を使って私たちを誘拐した。だから調停者としてのサフィエンの性質が消えて、単純にどこの者とも知れぬが王族を誘拐したと、そういう話が広がっている。そういうことだ。


 それだけでこんなに大事に? これではまるで戦争でも始まるような、と言葉を自分の頭の中で読み下し、そして納得した。


――そうか、これは確かにそう考えてもおかしくはない……。これじゃ、人間種がレグナムに宣戦布告したのと変わりないじゃないか。


 ようやく頭の中でキーワードが繋がり始める。一度繋がり始めた思考は連鎖的に先へ先へと状況を予想していく。それはまるで頭の中のドミノ倒しのようだった。


「王族の、しかも誉れ子を質に取られたと血気に逸る烏族クーウ四肢族オグ の戦士たちがそろって川を越えた。人間種への報復が目的だ。鱗族ホヌも血の気の多い一部の戦士たちがこの戦列に加わっている。甲族オフスも同調して動き出しているという話だ。これがどういうことか、分からぬお前でもあるまい」

「そんな、まさか」


 自称能天気なサフィエンでもその後が言葉にならず、ひざから崩れ落ちた。私の腰帯にイビスが、腕にフェーが縋り付くのが分かった。二人とも音を立てて震えている。この広場にも彼への怨嗟がぽつぽつと聞こえ、すすり泣く声が四方から聞こえていた。たった一人の行動で火蓋が切って落とされてしまったのだ。


「報復なんて、愚かなことを……」


 私の口を吐いた言葉を聞いた調停者たちが色めき立つ。どの面下げてここへ来たのかこの外敵が、と口汚く罵られて、衆目が私に向いていることに気が付いた。


「外敵のお前がそれを言うか!」

「お前さえこの土地に来なければ!!」

「いや、サフィエンにこそ罪がある。そもそも人間種であるこやつこそが元凶だろう」

「天の怒りを納めるためなら、その者たちを空返しすればよいのでは、長」

「その人間種も一緒に天に返してしまおうではないか」


 彼らの罵詈雑言を甘んじて受けるとしても、それで事態が収拾するわけがない。口々に私とサフィエンを呪う調停者たちは、しかし彼らもまだ事態をうまく飲み込めずに混乱している様子だった。幾度となく戦火を未然に防ごうと尽力してきた彼らでも、一度火蓋が切られてしまった戦争に対してはどう対処していいのかきっと分からないのだ。おそらく一番長く生きているであろう長でさえ、大規模な戦争が進捗する事態には初めて直面しているのだろう。てんでんばらばらなことを言いながら、共通しているのはともかく誰かを責めること。どうしようもない現状をどうにかしようとする者は見当たらなかった。


 だがというべきか、だからというべきか、いっとう諦めの悪い私は、ここへ至ってもまだ彼らの言葉を反芻して考えをめぐらせ続ける。罵声を浴びながらもずっと考え続けていた。


 本当にもう戦争は止められないのだろうか。


――いや、正確にはまだ火蓋は切られていない……。相手はリンネ川を渡っただけで戦端はまだ開かれたとは話は出ていない。ということは、まだ止められる可能性があるってことだ。


 痛いほどのどに力が入る。そうでもしないと、緊張で心臓が口から吐き出しそうなぐらい音を立てていて、気持ち悪いのを我慢しているのがつらかった。生唾を飲み込みながら、父の手記の内容を思い返してみる。


 この実験場の意義は、生き物が自ら矛を収めることができるかどうかという点だったはず。だとしたら具体的に血が流れる事態に発展する前に、止められるならきっとセーフだろう。だがそのためにはどうしたって、攻め込んでくる烏族クーウ四肢族オグを説得しなければならない。武力に対して言葉で対峙する必要がある。その役割は、今ここで諦観と間違った責任転嫁で騒いでいる調停者たちが担うべきものだ。


 彼らの力がどうしても必要だと確信し、私は懐に入れた父の手記をローブの上から握る。父が残してくれたこれさえあれば、をここにいる全員が信じてくれるのなら、あるいは戦争を止めることが可能かもしれない。そして、いま眼前に差し迫った戦争を止めることと、私はさらにその先を見据える。だから彼らを味方につけるためには、希望を提示する必要がある。


 愕然とするサフィエンの隣へ立ち、私は彼の肩に手を置く。単に震える手が彼の方にぶつかっただけなのだが、置き場に困った手はいい具合に彼の肩に収まって震えをごまかしていた。周囲の鋭い眼光が私の方へと向けられる。それを全て弾き返すように意識を集中させ、額にぐっと力を込めた。


「戦争を止めるのなら、私たちが無事であることを示せばいいのでしょう。簡単なこと、私たちが勝手に彼についていって、シナバリに来たと言えばいい」

「そなたがカルセラ王妃のまがい物、天の声が言う恐ろしい外敵か」


 舌打ちでもしたくなる。外界の者からすると、私はこの実験の箱庭の中では混ざりものでしかないのだ。それを拘泥するつもりは毛頭ない。この場にいる誰しもに私は聞こえるようにと、腹に力を込めた。


「ええ、私がオルティリア・マンジャロア。先日あなた方が殺した使者の娘よ」


 言い放つと周囲にいた者たちのとげとげしい視線が一斉に私に突き刺さる。薄暗い中、獣たちの瞳が爛々と輝いている。食うか食われるか、そういうにらみ合いの視線には圧力がある。全身に突き刺さる圧力に屈することなく私は彼らに、少しでいいから希望とそれを支持する証拠を示さなければならなかった。


「聞いて。信じてもらえないかもしれないけど、私たちはこの星の全てを知った。この星が管理された箱庭であることも、あなた達が管理者の手足として動かざる負えない現状も、知っているの」

「絵空事を抜かすな!」

「証拠を出せ!」


 広場のそこかしこから、罵声が飛んでくる。言葉に質量があるのならとっくに頭を打ち砕かれているところだ。頭を振ってそれを払いのけ、負けじと言葉を続けた。


「私の父は、あなた方の言う天の一部だった。あなた達が処刑した父の手記が、ここにある」


 そう宣言して、私は高らかに手記を掲げる。小さな黒いノートと私の言葉に、明らかに戸惑いの空気が生まれた。彼らが初めて見せる、少し期待の入り混じった動揺だった。


 それもそのはず。今まで手の届かない観測者を漠然と感じることはできても、それが自分たちの認識できる場所へ降りて来たことなどないはずだ。既に死んでいるとはいえ、観測者の一部が私の手の中にある。空から落ちてきた流れ星がこれですよと言っているのと、差して違いはない。


「父はこの人体実験を今すぐにでもやめるべきだとここに書き記しているし、私も同じく、そう考えている。この手記を持って外界に帰ればやめさせることもできる。あなた方をここから解き放てる!」

「まことなのか……?」

「そんな馬鹿な」


 否定と肯定の反応は半分ずつといったところだった。これに対して無言でうなずき返す以上のことはできなかった。本当にノート一冊から、この研究を行っている人物たちを特定して辞めさせることができるのか、正直なところ確信には程遠い。どこかで私の方が潰されるかもしれないし、あるいは荒唐無稽な話だと信じてもらえないかもしれない、そもそも惑星を脱出する手段すらない状態では不可能なのだから。できるなどと言っておいて、私の腹の中はできないと思う要素で満杯だった。


 だから信じてほしいという言葉が喉まで来て、胸の内へ帰っていく。理論上はできるはず、つまりただの希望的観測じゃないかと自分の中で叫ぶ声が聞こえた。それでも可能性がゼロではないと言い聞かせ、自分の中で再度思考を展開させて言葉を紡ぐ。彼らに示すべきは希望と、一つでいいからそれを立証するものだ。


「だって、天が争いを禁じているのに、なぜ天の指示に従ったサフィエンの行い一つで争いが起こるの? おかしいじゃないか」


 ハッと息を飲む声がいくつも聞こえた。これで彼らの趨勢を捕えたと思って、私は見えぬところで拳をグッと握りしめる。


 ここへ来る道中、ずっと違和感と闘い続けてきた。なぜこんな実験が行われているのか、と考え続けてきた。戦争は悪だ。命を奪い合うのだからそれは間違いない。ただそれを封じようとするのがこんな方法であってよいのだろうか、という違和感がずっと心の中でくすぶっていた。人間は進化の過程で本能というリミッターをリストラしたのだから、それを無理やり再雇用というのは、言い知れない居心地の悪さがあるのだ。言い方を変えれば、うまい話過ぎた。


 だがここへ来てその違和感が確信へと変わった。これは直感に近い確信だった。


 これは争いを回避するための実験。その実験を純粋なものとするための作業の一つとして、今回サフィエンが私たち三人を連行するに至ったわけだ。だがそれを指示したのは何を隠そう外界の実験者たちであるのを忘れてはいないか。そしてこの作業自体が今回戦争の引き金となったわけだ。だから今なら、この一つだけは胸を張って言える。


「これは、天の過ちが争いを起こしたも同然なのよ!」


 サフィエンは指示通りに動いただけで、何も悪いことをしてなどいないのだ。なのに戦争が起こるのなら、それは実験自体が悪い。サフィエンがミスをしたのではなく、天がミスをしたのだ。完全なヒューマンエラー。


「聞こえてきた天の声を思い出して、もう一度よく考えてみて。サフィエンじゃない誰かが代わりに私たちを捕らえに来ていたら? それが例え人間種じゃなくったって、王族を捕らえたら烏族クーウ四肢族オグがいい顔をするわけない。後々に禍根を残すようなことを、なぜ天が、なぜ争いごとを戒める側が指示するわけ?」


 いったんそこで言葉を止める。すーっと、肩で大きく息を吸った。それでも酸素が足りないのか、少しくらくらとしている。だがここで止めるわけにはいかず、ざわめく彼らを見てもうひと押し、私は再度口を開いた。


「天は間違いを起こすってことなの!」

「まさか、そんな……」

「元々、争いを戒めてるわけでもなんでもない。天はただ争いの有無を観ているだけ。でもそれとは別に、この箱庭を純粋なものにしようとして、その過程で間違えて争いを起こしたりするようなもの、それが天なのよ!」


 父は暴力に対するリミッターを体の延長線上の武器とともに付与した新しい人間を作ったつもりで、やはり心を持った以上それはどんな動物の形をしていても人間でしかないのだ。心を制するのは心であって、どんなに優秀な本能リミッターに頼っても、いずれにどこかで心が本能を凌駕してしまう。畢竟、この箱庭は心というヒューマンエラーを抱えて、最初から破綻していたということ。


 実験において、環境を一定にするというのがとても大事なことだと知っている。だが実験者自身が自ら環境に手を加えてどうするつもりだったのだろう。矛盾することをやろうとして根本が破綻していることにも気が付かないまま失敗を繰り返す。その被害を如実に受けるこの星の生物側としてはとんでもなく迷惑だ。


 実験が失敗する、あるいは思ったような調査結果が得られないというのは、『ままならぬ』という成果なのだと私は常々思うのだが、父やミズシマ博士はままならぬままに導きたかった正解すらも見失ってしまったのかもしれない。きっと頭のいい人たちは一周回って阿呆に違いないとその時は心底思った。


 私が力強くうなずくのを見た長がひざから崩れるように倒れた。大演説をかました私も疲労の色を隠せず、肩で息をしている。びっくりした顔をしてイビスとフェーが後ろで棒立ちをしていた。何人かが駆け寄る中、ゆっくりした歩調で私も階段を下りて暗くてよく見えないその人へと手を差し伸べた。取った手にはうっすらと鱗が見える。鱗の上に転々と涙が零れ落ちてきた。いまだに周囲の人々は懐疑的な声を上げている者もいたし、私に詳しい説明を求める声も聞こえてくる。


 だがそれよりも今は先にすべきことがある。


「でもまずは戦争を止めないと、私たちはその先に進めない。馬鹿馬鹿しい限りだけど、まずは天の尻拭いをしましょう」


 外界と交渉する前に戦争が起こって滅ぼされては元も子もない。全てはその後だ。老人は力強く頷き返してくれた。


「我ら調停者は本来、戦争を止めるためにレグナム同士を取り次ぐ役割を持つ。今こそ我らの本来の役割を全うするときが来たのだ。己の種族、部族へ帰り、至急この争いをやめるように説得して回れ! 烏族クーウ四肢族オグの者たちは三人を連れて前線を食い止めるのじゃ!」


 おうっと声が上がる。三々五々に人が出ていく。数人がこちらへ来て私たちを外へ連れ出した。しかし振り返りざまに見たサフィエンは、その場でひざをついて音のない涙を滂沱として流れ落としていた。

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