いつかきっとハマグリになる(6)
私といそもは瓜二つ。
そんないそもと仲がいいという男――脳裏をよぎるのは、かつて女官候補であった私を自由に扱った人間の男は、私の容姿だけを愛していたという事実。
それにもかかわらず、私は普段いそもが人界で身につけているようなAラインのミニのワンピースに華やかなメイクをして、いそもと仲がいいという男に会いに行く。
薬でぐっすり眠っているいそもに代わり、何としてでも男の素性を確かめて、そして、いそもの女官候補の仕事を補佐する“情報提供者”に仕立てるために。
きらから深水清雅という男に連絡を頼み、いそもと男の次の予定を釣りと民宿から散策に変えてもらった。
待ち合わせ場所は呉の中央桟橋近くのショッピングセンター。役目を終えた潜水艦が傍に展示してある。
近くから見ると何なのかさっぱりわからないその潜水艦を眺めつつ、私は覚悟を固めていく。
覚悟――何のだ?
「いそもさん?」
訝しげな声。
顔を上げると、人間の男。
あの男だ。
女性的であると言い切れるたおやかな顔には、ためらいを含んだ表情が浮かべられている。
おそらく一秒か二秒か、ほんのわずかな間、お互いを見つめていたと思うのだが、次の瞬間、男はパッと相好を崩して私の右の手を両手で掴んだ。
「まあこさんですね!」
「……え?」
ギョッとする私の手をぶんぶんと上下させる男。
たおやかな笑顔を私は呆然と見つめた。
い、いそもじゃないとバレたのか。ば、バレたのだろうな……。
いや、もしや瓜二つの私といそもを簡単に見分けるほどに、それほどまでにいそもと仲がよいのか、と――
「いやぁ、いそもさんから聞いてはいたんですけど、困惑すると本当に眉間に縦皺がくっきりと刻まれるんですね。見事です」
「なっ?」
「何でも元マアナゴだとか」
──ていうか! どこまで喋ってんだいそもォォォオオオッ!
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