あんこと餌付けと下心(6)

 “戦闘代理人”は女官候補の代わりに『想い』を『玉』に封じる者。

 “情報提供者”は読んで字のごとく情報を提供する者だが、ここでは女官候補の正体を知り、納得した上で情報を提供する契約を結んだ者を指す――と、一応説明してやったものの、食べ物に関係ない事柄だととことん淡白ないそもは、

「へぇ、そうなんですかぁ。でもぉ、あたしには必要ないかなぁ、って」

 やっぱり興味なさそうにそう言って饅頭に齧り付いた。

 まぁ、私もここまでの経験からしてこうなるだろうというのは大体想像がついていたのだが。

「わかりました。下がりなさい」

 とりあえず、ここは一旦引いた方がいいだろう。

 というわけで、ええぇまだ蜜饅頭食べ終わっていないのにぃ、くれが誇る銘菓ですよお? と不満を口にするいそもを少々強引に局から追い出し、私は脇息を引っ張り出してきて一息つく。

「さて、どうしたものか……」

 いつもいつもいそもの食欲に目を奪われて、それを取り除くことに心血を注いできたような気がするが、そろそろ意識して方針を変えた方がいいのかもしれない。

 すなわち、あれの食欲はあえて抑えず、むしろそれに迎合するような形で『玉』を収集させる方法を模索すべきなのではないか。

「……」

 いや、本当にそれしかないと思う。思うのだが、しかし、具体的にどうすればいいのか。

 たとえば、食べ物に未練を残した者の『想い』を見つけ出させて――いかん、大食い競争するさましか思い浮かばん。

 大体それは勝てば『玉』に封じ込めるのか……? というか、そういう問題か?

 前代未聞というなら、そもそもいそもの存在そのものが前代未聞のような気がするが――ダメだ、話がそれていく。

 『玉』だ、『玉』を集める方法を考えるのだ。

 でも、だから、どうやって?

 あいつ食うためだけにオーバーワークして、はては友人に白餡食わせまくって物理的に食おうと企んでそうな奴だぞ?

「……」

 外見ばかりはいそもに瓜二つ。だが、別に破壊的な食欲を持っているわけではない私には皆目検討もつかず、頭を抱えるしかなかった。

 

 ――ただ、転機はそれからほどなく訪れた。

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