挿話
α.調査報告書より抜粋
『調査報告書 別途ファイル3
以下はヴェンデルス邸の使用人たちとの会話の抜粋。
当協会所属探偵L(ルードヴィッヒ)とオリヴィア(以下、O)のもの。
Oはヴェンデルス邸のメイド。二十一歳。雇われて二年ほどで、泊まりこみの生活。
<O>
テオバルト様は、たぶんアドルフ様の――女癖の悪さを知っていたんだと思います。奥様が出て行かれてから、テオバルト様はよけいに反感を持っていらっしゃいましたから。だから、そのう――私を助けてくれたんだと思います。これ以上悪い噂が広まらないように。
<L>
助けてくれたというのは?
<O>
助けてもらったなんて、おこがましいですね。私がアドルフ様に腕を掴まれた時に……そういうのはやめてくれ、と。母さんもそれで出て行ったのだから、……と。それだけです。それで終わりになりました。それ以来、お二人の仲はあまり……ええ、はい、そうです。元から仲がよろしいとはあまり思えなかったのですが、それを切欠にしてもっと悪くなってしまったように思います。それまではあまり反発なさらない方だったと聞いていましたから。
だから、私、怖くて……。テオバルト様が、「あいつさえいなければ」なんていうから……!
(Oはここで沈黙が続く)
アドルフ様が吸血鬼だったのなら……ええ、テオバルト様のあのお言葉もなくなるのではないかって……。テオバルト様はそんな人じゃあないって思えて。
<L>
しかし、テオバルトさんはアドルフさんが人間だと信じていたようでしたね。わざわざグリム探偵協会に連絡をするほどに。(ここでOはしばらく無言になった)……ええ、申し訳ありません。困らせてしまいましたね。それでは、もうこの話は終わらせてしまったほうがよろしいでしょうか。
<O>
申し訳ありません、出過ぎた真似をしました。私、ずっと恐ろしかったので……この話を聞いていただけただけで良かったと思います。すみません、そうしていただけると、助かります。
<L>
ですが、最後にひとつだけよろしいでしょうか。(ここでOがうなずく)――この文字は誰のものかわかりますか?
<O>
これは……アドルフ様の字ですね。でも、どこでこれを?
――以下省略。』
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