巫女てんてこまい
けろよん
第一章 巫女てんてこまい
有栖の新しい仲間達
第1話 プロローグ
古来より巫女と呼ばれている少女達がいる。
白衣を着て緋袴を穿き、神事に関わる仕事を行う者達だ。
巫女達は霊的なものと関わり、神秘的な役割を担ってきたが、現在では神職の補佐として年末年始に神社で売り子をしているだけとも思われている。
だが、もちろん巫女の仕事はそれだけではない。
世にはびこる悪霊達を退治する。それもまた現在も続く巫女の仕事なのだ。
文明の発展とともにその存在感を薄れさせ、人々からは忘れかけられている悪霊達だったが、彼らは今も町のあちこちに潜んで悪さをしている。
それに気づき、悪霊を退治できる霊能力を持った術者に依頼して、悪霊を退治してもらっている町の人達もいる。
伏木乃神社の巫女をしている有栖もまたそんな仕事に関わりを持っていた。
と言っても有栖に出来ることは有能な神主であり霊能力者でもある父の後をついて仕事を手伝うことぐらいだったが。
それでも彼女は勇敢に戦う父の背中を見ているだけで満足だった。
父の持つ悪霊祓いの霊力を込められた棒の先の白い紙が踊るように舞う。
「悪霊退散! ハア!」
彼がお祓い棒を振り、退魔の声を発するだけで悪霊達はいとも容易く昇天していった。
辺りから悪霊達の気配が去り、平穏の夜の静寂が訪れる。
その現場の仕事もあっという間に片付いてしまった。
有栖の父は本当に有能な霊能力者だった。
どんな仕事もすぐに片づけてしまう。どんな悪霊も彼には敵わない。決して揺るがない有栖の自慢の父親だ。
その父が訊く。
「有栖、悪霊はまだ残っているか?」
「ううん、全部片付いたみたい」
有栖は目覚まし時計ぐらいの大きさの悪霊レーダーを手に持って確認する。
「そうか」
父の能力なら機械など無くても分かるだろうに。
わざわざ確認させる父のことを有栖は不思議に思う。
それは娘に仕事を与え、教育をしている父なりの配慮だったが、有栖がそんな父の想いに気づくことはなかった。
仕事だと言われているからやっている。
有栖にとって巫女の仕事とはその程度の認識のものだった。
父が娘に微笑みかける。今日の仕事も順調に終わった。
「では、依頼人に報告に行くか」
父が歩き、有栖は後をついていく。
依頼人のところに行って報告を行うと、依頼人はとても喜んでいた。
そして、父の事をさすがだと褒めていた。
また父の勇名が一つ広がった。
有栖はずっとそんな偉大な父の手伝いをしていくのだと思っていた。
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