第16話 Fight for the........

その日、ガブリエルは方舟を中心にかつて栄えた、旧市街の商業ビルの屋上にいた。かつての遊園地の名残りである観覧車の前に立ち、拡声器を通して、集まった人々に語りかけた。

その演説は以下のようなものだった。

「偉大な先人の言葉を借りて今、ここに宣言をしよう

兄弟、姉妹たちよ、よく聞いてほしい


申し訳ない 私は独裁者になりたくない

支配はしたくない

できれば援助したい 若い人も老いた人も

人々はお互いに助け合うべきである

他人の幸福を念願として お互いに憎しみあったりしてはならない

方舟には人々を養う力がある


本来 人生は自由で楽しいはずなのに

欺瞞が心を毒し 憎悪をもたらし混沌を招いた

発達したネット世界も意思を通じさせず

知識を得たのに人々は懐疑的になった


思想を毎日唱和しても感情がなく

人間性が失われている

なにより思いやりが必要である

思いやりがないと疑念だけが残る

ネット世界は世界と我々を接近させ

人々の心に呼びかけて ひとつにする力がある

私のこの声は人々に伝わり 失意にある人にも届いている

失意にある人よ 聞いて欲しい

失望してはならない

貧欲はやがて姿を消し

恐怖もやがて消え去り

マンモスは死に絶える

世界は再び力を取り戻し

自由は決して失われない!

諸君 犠牲になるな

奴隷になるな!

諸君は機械ではない!

人間だ!

心に愛を抱いてる


愛を知らぬ者だけが憎み合うのだ!

自由の為に戦え!

"本当の平安は人間の中にある"

すべての人間の中に! 諸君の中に!

諸君は幸福を生み出す力を持っている

人生は美しく 自由であり すばらしいものだ!

諸君の力をこれからの未来の為に集結しよう!

よき未来の為に戦おう!

人々に希望を、保障を与えよう


かつての帝国の支配層も同じ約束をした

だが彼らは約束を守らなかった。

ただ彼らの野心を満し 人々を奴隷にした!

方舟の再興を見て、強く感じている。

暗い雲が消え去り、 太陽が輝いてる

明るい光がさし始めた

新しい世界が開けてきた

赤子のようだった人々の意思は本当はずっと前に翼を与えられていた

やっと飛び始めた 希望に輝く未来に向かって

輝かしい未来が君にも私にもやって来る 我々すべてに

Fight For LIBERTY」


群衆から割れんばかりの拍手、そして歓喜の声が上がった。

スペースラビッツ、鎮圧屋マックス、そしてヴィクセン、運び屋のカトリーヌにドーザー。バーテンダーのウルフに元帝都軍人たち。


人びとは聴き、そして理解した。この1人の海賊の発した言葉はネットを通じて

各地に中継された。未来とは、「未だ来ていない」と書く。

新しくページを紡ぐのは人びとの力強い意思なのだ。



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