第21話 train kept a rollin'

帝都に続く、長いレイルロード。かつては方舟から東西に鉄道が走っていた。周辺の土地から労働者が集められ、方舟回収の作業従事と引き換えに、帝都市民権とクレジットが得られた。方舟墜落の翌月から作業は開始されたが、当時の科学、技術力の粋を極めた超巨大宇宙船を回収することは困難を極め、結果的に帝都は方舟の廃棄を決定するに至った。


一説には増えすぎた労働者の居住区の確保とクレジットの配給が回収作業の予算をはるかに上回ったため、と目されているが、この時を境に帝都も様変わりする。

王政を敷いていた帝都であったが、当代の君主であるジブリール公が崩御した、という噂が流れ、政権を引き継いだのは家臣であるセバスティアン公であった。


セバスティアンはまず帝都防衛隊に鉄道の空爆を命じ、方舟もろとも破壊しようとした。しかし当時の爆撃では線路を破壊できたものの、方舟本体は破壊するに至らなかった。この騒乱のあと、方舟周辺の街から人々は帰る場所もなく、独自の発展を遂げて行ったのであった。

方舟の回収作業は続けられ、宇宙に行くはずだった科学者や軍人などは、帝都に帰る術もなく、知識と技術を伝え、開発することで命を得た。

ただでさえ帝都市民に良からぬ感情を抱くものも少なくなかったので、ギャングやギルドに囲われた科学者たちは長い長いレイルロードを暗闇の中進んで行くような感覚を味わったことだろう。

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