第10話 Bar「The law of the jungle」
Division AK には刺激的なスポットが沢山ある。とりわけ、最高のカクテルと怪しい取り引き、また頼れる仕事仲間を探すなら、Bar「The law of the jungle」に行ってみるといい。宇宙海賊やデブリ回収業者、レインメーカー、いわゆる荒くれ者たちの間ではとかく話題に上がるバーが旧市街の一角にある。
バーのマスター、ウルフはかつてレインメーカーだった。ニコラス ゼクスとは旧知の仲らしい。彼の「雨乞い」は独特で、エアロスピーダーバイクに搭載したハロゲン弾をまさに「雨のように」撃ち込み、落ちてきた雨粒が時間差で氷になり、雨と雹を同時に降らせることができた。大空に壮大なアートを作って見せることで有名だった。(ウルフがレインメーカーを廃業したエピソードは、またの機会になってしまうが)ともかく、タフでボーリングシャツの似合う男だった。
ガブリエルはビールを煽りながら、ある男を待っていた。今日はなかなか賑やかな連中が集まっている。
入り口に一番近いカウンターには「The Damned」の連中がキャプテン・センシブルの今日の収穫について談笑している。
カウンターの向かいのテーブルには「Nasty Cowboys」の二人、ジェシーはタバコを吹かしながら、眠りこけたウッディをぼんやりみている。
ガブリエルの背中側のテーブルには、ターバンが特徴的な「Sandman」の二人、新聞のトップ記事で乾杯している。「motorhead」でジャマダハルが優勝したらしい。
ウルフはガブリエルにビールを差し出しながら、ドアのほうに目配せをした。ガブリエルが視線を送ると、長身のトロージャン(モヒカン頭)が入ってきたところだった。すぐにガブリエルを見つけると、手に持っていたケースをカウンターに置き、中を見せた。伝説のガンスミスの手による、サブマシンガンだった。
「旦那、注文の品だ。」
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