第9話 Man That You Fear


昔、こんな歌があった。

「砂糖に群がる蟻どもは「武器」が無いのでお互いよろしくやって行ける。ところが「武器」を手にした俺たち人間の世界は酷いものだ。愛したわが子が、恐怖の存在に変わりさえもする。恐怖を排除するには自らか、それとも相手か、終末を選ぶしかない。しかし笑うが良い。お前の人生は所詮 夢でしかないから。なぜなら恐怖に任せて「武器」に頼れば、いずれこの世から誰もいなくなってしまうから。」



父親と会ったのはいつだったか。

この世界で一番有名な海賊。ガブリエル・ドレッドノート。


もっとも海賊の間では、ドレッドノートは彼の船の名として浸透している。帝都の軍艦を改修したその巨大な船体は、ほかの海賊船とは明らかに違う威圧感を放っていた。


子は親を思うものだ。どんな形でも。ただ、この父娘に関しては、ふつうではなかった。


会った、という表現も、遭遇、のほうがしっくりくるかもしれない。


とある日のミッション、育ての親、また師匠であるマックスとdivision AKの暴徒鎮圧の依頼を受けて行動中だった。雑居ビルの非常階段から、彼は現れた。濃紺のロングコートにトライコーン、金髪ドレッドヘア、手には血みどろのロケットハンマーを持っていた。

「ガブリエル。」

声を発したのはマックスだった。

「マックスか。久しぶりだな。」口元に笑みを浮かべながら、宇宙海賊は歩み寄ってきた。

「ヴィクセン。わが娘よ、聞け。もうすぐこの古い帝都の統治の時代が終わる。その時にはお前たち、若い世代が人びとを導くのだ。」

「娘!?どういうことですか?」

「今は時間がない。説明はマックスから…」言いかけて、宇宙海賊は追っ手の気配を感じていた。

「強く育ったな、娘よ。また会おう。」

そういうと彼はビルの脇に下がっていたロープに掴まり、上空に駐機させた船に戻っていった。

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