第8話 The World is not enough
狭い階段を上へ、上へ。ピーターは走っていた。
「くそ、またかよ。」
追い詰めたと思ったエレベーターシャフト内、奴は笑ってこう言った。
「ここは私の城だぞ?」
電源が落ちたはずのエレベーターがやつを乗せて上昇して行く。
青白い警告ランプが笑い声とともに遠ざかっていく。
「くそ!ミフィー、他にエレベーターは?」
ヘッドフォンからミフィーの声。
「他のは全部、つかえない!さっき配電盤を吹っ飛ばしちまったからな。」
嫌みも言いたくなる。
「さすが、いい腕だな!くそー!!」
腹を決めて、螺旋階段を駆け上る。いつだったか、似た状況が・・・
そうか、あの時は倉庫で多脚戦車か。あの時も走っていたな。
68階をすぎ、上昇するエレベーターのなか、ガブリエルは残弾を確認した。
時代遅れのリボルバーには彼特製の徹甲弾が装填されている。
ガブリエルの存在は帝都防衛隊にとって脅威であった。
防衛隊のボディアーマーや多脚戦車の装甲にはFRPに準じた素材が多用されている。レーザー兵器には無敵といわれるが、旧来の実弾には意外と脆かった。彼特製の徹甲弾は一撃で装甲を粉砕した。
一階のエントランスから大胆にも入ってきた、3人組。新参者の海賊。元帝国軍人。なかなか喰えないガキどもだ。エレベーターシャフト内での会話を思い出す。
「あんた、ドレッドノートの持ち主だよな?」
「‥‥船のことか?あの船はドレッドノートではない。それは儂の名前だ。ガブリエル=ドレッドノート。それが儂の名だ。・・・・・貴様のことは噂に聞いているぞ。‥‥スペースラビッツだったかな?」
「おお、俺らも有名になったもんだ!はは、おっさん、俺らと組まないか?」
「‥‥せっかくのプロポーズだが、同性に興味は無くてな。」
「おい!真面目に言ってんだよ!あんたの船の機動力と俺らのチームワークがあれば、世界だって手に入るぜ!なあ、組もうぜ!」
「‥‥世界か。」
「そうだ、悪くねえだろ?」
ピーターは額に汗をかいていた。海賊王ガブリエル。まさかドレッドノートが本人の名前とは知らなかった。噂もアテになんねえな。
「世界だ!!俺たちの機動力と、あんたの船、最強じゃねえか。」
「若造、せっかくだがお断りするよ。世界を手に入れても、それはまだ空っぽだということを儂は知っているからな。」
そいいうとガブリエルは煙幕弾を撃ち、エレベーターで屋上へと姿を消した。
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