第23話 Enter 「The sandman」

砂漠の民の生業として一般的なものは、オアシスで得た水を売るキャラバン、通称「レザボア」が有名である。この土地の海まで続く陸地は方舟の墜落の影響により急激に砂漠化してしまった。

砂漠には危険も多く、水分なしでの旅は、即ち生存の危機を意味していた。

砂漠の旅は何度も経験していたが、それでもカトリーヌは緊張していた。陸路を選ぶのはよほどの大馬鹿者か、無法者である。陸路は空からの襲撃には、ほぼ無抵抗になるからだ。カトリーヌは常識人であったが、極度の高所恐怖症であった。エアロスピーダーバイクが性に合わないのだ。


弱点は人を強くする。と誰かが言ったか今となっては解らないが、ともかくカトリーヌは愛車を限界までチューニングした。オレンジ色の愛車は、いわばクラシックカーの部類だが、

錆を纏った外観からは想像できないほど、タフなマシンに仕上がっていた。Division CGから戻る道すがら、空賊を撒いたカトリーヌは、飲料水が残り少ないことに気付く。砂漠で水を得るには、レザボアを探すのが一番だが、中には良心的でない輩も存在した。


遠目に見えたテントに、レザボアたちを見つけたカトリーヌだったが、シートの下から愛用のショットガンを取り出し、装填を確認して慎重に近付いて行った。ストックを短く切り落としたショットガンはソードオフと呼ばれ、狭い車内でも片手での射撃が容易なため、トランスポーター達に愛用された。


特徴的な4輪駆動車にポリタンクを満載したレザボア2人組、髭を蓄えた浅黒い肌にカーキ色のシャツ、そして、頭に巻いたターバンが、彼らが「Sandman」のメンバーであることを示していた。良心的なレザボア。カトリーヌは安心した。彼らにショットガンは必要ない。

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