第29話 radio,radio

細身のトロージャンが酔って話したことが印象的だった。

俺は嫁を好きになるまで誰も好きになったことがなかった

嫁と過ごすまで俺は楽しいことが何なのか分からなかったんだ

誰もが気持ちに正直でありたいのならば提案はひとつだけ

音楽を大音量で流すことさ

音楽が心に響けば俺の心の痛みは全て消えるから

暑い夏の夜

俺は父親と飲んでいた

父親は俺に俺が今まで受けることがなかった愛を

与えようと努力していたが

彼はワインボトルの方が気になって仕方がなかったようだ

だから俺は家を出て

別の種類の愛を見つけなければならなかったんだ

いつもラジオの前で俺はそこににいるから

ラジオのボリュームを想像を絶するほどまで上げるんだ

そう、ラジオ、ラジオ・・・

俺が音楽を見つけた時

俺は自分が行くべき場所を見つけたんだ俺は小さい頃に聖歌隊で

歌っていたが天国を見ることはできなかった

全く天賦の才がなかったんだ

後悔はない

無駄になった労力はなかったことにしよう

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