第17話 ORENGE 9km
カトリーヌ=オランジュの愛車はガソリンエンジン搭載の極東製品だ。いわばクラシックカーだが、彼女はこの橙色の相棒を信頼していた。この時代、陸路は様々な危険が多く空から襲撃されれば一溜まりもない、というのが常識だったが、頑なに彼女がガソリン車に乗っているのは、彼女自身が高所恐怖症で、エアロスピーダーバイクが性に合わないためであった。陸路はこの世界では快適とは言い難いが、空路よりも移動している実感はあるかもしれない。つまり、運び屋稼業も陸路が最高、と考えるタフな人間だった。
それに見た目のくたびれた印象とは裏腹に、エンジンから足回りに至ってフルチューンされたクラシックカーは並のエアロスピーダーバイカーでは追いつけなかった。
この日、カトリーヌは方舟から東、9kmの地点にある、Division CGのブラックマーケット、通称「Blood Park」に荷物を届けることになっていた。今までのヤバめな依頼に比べると楽勝な仕事だったが、何となく違和感を感じてはいた。積荷はチョコレート。依頼主はDivision AKの老人。孫にお土産をということだったが、「Blood Park」にチョコレート、どうにも似つかわしくなかった。
通常、荷物の集荷、配送は「Postman INK」に依頼するのが普通だが、いわゆる規格外のもの(いろいろあるが)はトランスポーターが請け負っていた。トランスポーターに依頼するメリットは、一番にそのスピード、そしてIDが不要なことであった。しかし報酬額が法外なことで有名であり、走行距離に合わせてクレジットが加算されるというシステムだった。
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