第3話I hate army、I hate・・・・・
「今日付で除隊になった。」ピーターはそういうとロジャーとミヒャエルの前にどかっとあぐらをかいた。ごうごうと、室外機が唸る。兵舎特有の臭気が立ち込めるなか、ピーターはぼんやりと壁の染みを見つめていた。
「当たり前じゃねーか。」口をひらいたのはロジャーだった。ニヤニヤと笑いながら、タバコを差し出す。ピーターは一服、深く吸い込んで交互に二人を見て、ゆっくり煙を吐き出した。
12時間ほど前、ピーターたちの小隊は、港上空を航行中の航空漁船からの救難信号を受信して、スクランブル発進、飛行していた。機影を見つけた時、明らかにエンジントラブルを思わせる黒い煙を巻き上げながら漁船は港に向かって墜落しかかっていた。
「こちら帝都防衛隊所属、ハインツ小隊。聞こえるか?」
ザー‥ザザー‥
ノイズしか受信しない。目視。船長と思しき人物がデッキに出て叫んでいる。聞こえるはずはないが、航行不能、という状況と理解する。
「管制塔からスクランブルリーダー、応答に応じない漁船、墜落の危険あり。港に入る前に撃墜されたし。」
耳を疑った。「おい!人が乗ってるんだぞ!?武器の使用はできない!」「応答に応じないため、生存確認もできない。撃墜されたし。」「できない!目視で人がいるのを確認した!」
轟音と黒煙、どんどん高度が下がって行く。何とかできないか‥‥!
「スクランブルリーダー、離脱されたし。繰り返す、離脱されたし。」
そうか、水面に軟着陸、その手があったか。「了解、離脱する。」
高度をあげて、スロットル全開、落ちて行く漁船のそばをかすめて、離脱した。船長と思しき人物と、目が合った気がした。
高々度の眩暈。眼下に広がったのは、爆炎だった。「な‥‥」
港の砲台から一斉射撃、漁船は炎を上げながら、水面に落ちて行った。
上官の顎を砕いてやった。もう2度と、一流のイヤミを聞けないのは残念だが、ともかく、ピーターは除隊になった。軍規違反者にも軍規が適用されるのも皮肉な話だが、2時間ほどの簡易裁判の末、書類上は「自主的に」申請書にサインをした。
「俺らも辞めるぜ、飽きたし。」そういうとロジャーは兵舎の外に立っていた憲兵を呼び、ミヒャエルの分と一緒にIDを渡した。「いつのまに。」ミヒャエルは苦笑いして、ボリボリと頭を掻いた。
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