第16話 激闘の果て…
「『
『
十数台の土色のミニチュア戦車が一斉に守銭奴ラゴンに向けて砲撃を開始した。
発射された砲弾は岩石へと姿を変え次々と守銭奴ラゴンに襲い掛かる。
「だんちゃーーく!! 今!!」
グエエエエエエ!!!
引っ切り無しに浴びせられる岩石砲弾、頭部と翼に攻撃が集中され守銭奴ラゴンも奇声を上げて苦しそうだ。
ガチャガチャと鱗コインが大量に剥がれ落ちる。
どうやら攻撃が効いている様である。
「凄い…!!」
息を呑みその光景を見守る『
「あっ…!! でもこれじゃ中に居るツバサちゃんが…!!」
我に返って慌てて『
「あの…!! 済みません!! …どなたか分かりませんが…ちょっと攻撃を止めてもらえませんか!!」
「むっ…? お主は確か『
と言ったか…何故だ?我が方は優勢であるぞ?」
「僕を知ってるの…? いやそうじゃなくて…今僕の友達があの怪物のお腹の中に居るんです!!」
「何? そうか…攻撃中止!! 攻撃中止だ!!」
彼女の号令で一瞬にして攻撃が止む。実に統率が取れている軍勢だ。
守銭奴ラゴンもダメージが大きかったらしくうずくまって動きを止めている。
「ありがとうございます…ところで何故僕の事を知っているんですか?
どこかでお会いしてましたか?」
「うむ…お主とは会った事は無いな…ただちょっと吾輩の副官に調査を依頼していたのだ」
スッと黒ローブを着たマスコットが『
「あっ…!! あの黒装束…見覚えがあるぞ!!」
「あの人物は…よく『ワンチャンス』で見かけましたね!」
「えっ? あんなのいたっけ…?」
ダニエルとピグには見覚えがあった様だがユッキーは覚えていなかった様だ。
「お初にお目に掛かる…俺は『タカハシ』と言う…以後お見知りおきを…」
ローブをはぐると鷹の顔が現れた。
右目はアイパッチをしており、顔には無数の傷跡がある。
「悪いとは思ったがアンタ達の事を少し見張らせてもらっていた…
アンタ達は元よりマスター達の人と成りも知っておきたかったからな…」
煙草を吸いながら渋い声で語るタカハシ。
「タカハシ…目の前に未成年が居るんだから煙草は控えてくれないか…」
「おっと!…これは失敬…」
『
「吾輩はある目的の為に同志を募っている…」
「何でそんなスパイみたいな事を…?普通に話しかけてくれればオレたちは話位聞くのに…」
ユッキーが疑問をぶつける。
「同志には強靭な精神力と強大な魔法力を兼ね備えた人物が望ましいからだ…口頭ならどうにでも取り繕えるからな」
「………」
『
「それでどうするのだ…このまま放っておけばまた守銭奴ラゴンが行動を開始するぞ?」
「そうだった!!今はどうなって…ツバサちゃん…!!」
一同は守銭奴ラゴンに注目した。
「ふぇ~…凄く揺れた~…」
外で『
眼下に広がるマグマ溜まりのような解けた金のプールに危うく落ちる所だったのだ。
「きっとお姫ちゃん達が外で戦っているんだ…これは早く脱出しないと…」
やるなら揺れが収まっている今…『
「大気よ!! その膨大に広がる自らの可能性を示せ!! 『エアバースト』!!」
ステッキの先に空気が集まり球形を成していく、それはどんどんと大きくなっていった。
「それ!! 行きなさい!!」
その空気の球を高熱の金塊プールに打ち込む。
すると瞬く間にそれは膨張、周りの壁をも外側へと押し広げ亀裂を入れて行く。
「わっ…!! これは危険かも…『エアリーガード』!!」
今目の前に起こっている事態は、テレビのバラエティー番組でよくある人が入った大きなアクリルケースに大きな風船をいれ膨らませていき破裂させるのを『
果たして『エアリーガード』で耐えられるだろうか…やってしまってから思ったが後の祭り…『
「おい見ろ!! 奴の腹を!!」
ユッキーが声を張り上げる。
守銭奴ラゴンの胸のやや下辺りが急激に膨張を始めたのだ。
グエエエエエエ!!!
守銭奴ラゴンが苦し気な叫びを上げ上体をのけ反らせ悶える、
先程の戦車の攻撃時とは比べら物にならない程に。
膨らんだ部分の鱗コインが盛大に剥がれ落ち、本来の皮膚が露出している。
その皮膚も急激な膨張に耐えきれず遂に…!!
ボバアアアアアン!!!
グガアアアアア!!!
大爆発を起こし胸に大穴が開いてしまった!!
宙に舞う大量のコインや金塊。
「いてて!! いてて!!」
「こりゃ敵わん!!」
雨あられと降り注ぐ金のシャワーに頭を押さえながら逃げ惑うユッキーたちマスコット。
ギョエエエエエ…。
堪らず流石の守銭奴ラゴンも仰向けに卒倒する。
「一体どうなっている…」
『
「あっ…!! みんな上を見て!!」
上空にフラフラと漂う球状の竜巻があった。
やがて竜巻が解け、中に居た『
「ツバサちゃん!!」
「ツバサ!!」
「ツバサ殿~!!」
次々と落下地点に向かう仲間たち。
「『バブルガード』!!」
『
それがクッションになって無事『
「はぁ…はぁ…はぁ…ありがとうお姫ちゃん…」
「いいえ…無事で良かった…お疲れ様ツバサちゃん…」
『
『
無論、疲労困憊ではあるが…
「まさか…あの状況から生還するとは…『
「中々の豪の者ですな…」
『
「ちょっと皆さん…!! まだ終わっちゃいないよ!!」
ダニエルが大声を上げる。
何と守銭奴ラゴンが立ち上がって来たのだ!!
「何?あれだけのダメージを負いながらまだ立ち上がるだと?!」
『
「『
魔法を唱えると先程の豆戦車が多数現れる。
「てーーーーーーっ!!」
発射を指示した刹那、守銭奴ラゴンが高速で間合いを詰め戦車隊の目前まで迫った。
「は…早い!!」
ガアアアアア!!!!
咆哮しながら鋭い爪で戦車を薙ぎ払う。無残にも粉々になり土塊に戻っていく戦車達。
腹に穴が開いた状態で何処にこんな力が残されているというのか…
続けざまに高速で長い尻尾を振り回す。
「きゃあああ!!!」
「うわあああ!!!」
その凄まじい風圧で全員が吹き飛ばされてしまった。
地面に叩き付けられる魔法少女達。
「ううっ…しまった…!! このままじゃやられる…」
ズンズンと地響きを上げこちらに近づいて来る守銭奴ラゴン…万事休す…。
「あっ…!!」
『
「お姫ちゃん!!『アクアマイン』はどうなってる?さっきアイツに飲み込まれちゃったヤツ!!」
すぐ横に倒れている『
「えっ…? あれはまだ存在しているようだね…少なくとも爆発は確認していないけど…」
「イチかバチか今すぐ起爆して!!」
「あっ…はい!!『アクアマイン イグニッション』!!」
『
ゴワアアアア!!!
すると今度は守銭奴ラゴンの喉元が吹き飛んだ!!
空いた穴から大量の水が噴出する。
どうやらアクアマイン等を異物と判断して消化器官の方には入れない様に分別する器官が喉にあったのかもしれない。
「今こそ好機!! 『
戦車の一斉射撃!!
キュワアアアアアアアアンンン!!!!
守銭奴ラゴンの断末魔が響き渡る。
「たっ…倒れるぞ!!皆の者退却だ!!」
完全に生命活動を停止した守銭奴ラゴンの身体がこちらに向かって倒れて来る。
皆は激痛の走る身体に鞭をうち大急ぎでその場を離れた。
数秒後、ちょっとした地震並の揺れを起こし守銭奴ラゴンは倒れ込んだ。
「あああ…間一髪…」
遂に『
だが充実感や達成感を感じるよりも疲労感と恐怖心が上回り、出来ればもうこんな大掛かりな討伐などはやりたくないと思うツバサであったのだが…
キュオオオオン!!!
「きゃあああ!!!今度は何?!」
轟く爆音…。
空から巨大な隕石が高速で落下し守銭奴ラゴンの躯に命中したのだ!!
ゴウゴウと音を立て炎に包まれる守銭奴ラゴン。
やがて金で形成されていた部分は解け落ち、恐竜のような骨格だけが残った。
「待て!! これは自然現象じゃないぞ…誰かが魔法でやった事だ…」
声を荒げる『
確かにピンポイントで守銭奴ラゴンに隕石が当たるなど人為的以外に考えられない。
「ああっ!! あそこを見て!!人が浮いてる…!!」
『
両手で握っているのは赤と黒で彩られた巨大な鎌、全身も黒と赤を基調としたマント、ミニスカートのコスチューム、脚には黒のオーバーニーソックスを履き足の裏から炎を噴射、これで飛行しているのだろう。
ただ一番目を引くのは禍々しい顔の仮面だ。
悪魔や魔物を連想させる仮面は口元以外頭をすっぽりと覆っていて誰だか判別できない。
「あれはまさか…!! 『
その姿を見てうわ言の様につぶやくユッキー。
「ユッキー何それ? あのコは知り合い?」
「そんなんじゃない…あいつは魔法少女の身でありながら魔法少女を倒している…敵だ!!」
「ええっ…!?」
驚愕する『
まさか魔法少女の中にそんな人物が居ようとは考えた事も無かったからだ。
良くも悪くも彼女は純粋過ぎるのだ。
「『ヘルズファイア』…」
抑揚のない淡々とした声で魔法を唱えたその魔法少女。
こちらに向けられた鎌の先端に火球が宿る。
彼女は思い切りそれを振りかぶると『
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