第40話 課金では得られない物
ツバサを抱いた『
「はぁ…何て美しいのでしょう…」
その美しさと神々しさに一同はしばらく呆然としていたがふと我に返り、『
「ツバサさん!! ツバサさん!! 大丈夫?!」
「おいツバサ!! 目を覚ませ!!」
「貴様!! 生きているよな?!」
「…ツバサ…」
「無事っスか!? ツバサ先輩!!」
みんな口々に気を失っているツバサに声を掛ける…戦闘をツバサ一人に任せてしまって皆本当に心配していたのだ。
「ツバサちゃ~ん!!!」
一際大声を上げて駆けてくる人物…チヒロだった。
どうやら無事に到着していた様だ。
今は『
勢いを付けて飛び付きギューッと『
そのまま三人は後ろに倒れ込んだ。
「…う~ん…何~?」
今の衝撃でツバサが目を覚ました。
「ツバサ~!!」
大喜びでツバサの肩に載りグイグイ頬ずりするユッキー。
「あははっ…ユッキー!! くすぐったいよ!!」
そしてみんなはツバサを囲むように並び声を揃えてこう言った。
「お帰り!! ツバサ!!」
「ただいま!! ありがとうみんな!!」
それからしばらく彼女らの笑顔と笑い声が絶える事は無かった。
「…それにしても…この水…何とかならないのかな…」
ツバサが湖になってしまったミレニアンを見下ろしながらつぶやいた。
仮にこの水を抜くとなったらどうすればよいのだろうか。
ここに居る誰もが具体案を口に出せなかった。
「…僕にやらせてくれないかな…?」
声がした方にみんなの視線が集まる。
何と声の主はチヒロであった。
「そんな…無理ですわチヒロ!! あなたは今カードリーダーが無いから変身できないのよ? それにマスコットの居ないあなたに魔法は使えないでしょう?…」
「…そうなんだけど…さっきから僕の身体の中から力が漲って来ている感じなんだ…根拠は無いけど何かが出来そうな気がするよ」
心配する『
「カオル子さん、悪いんだけどゴールドプリカを一枚もらえないかな…」
「…ええ…いいですけれど…」
チヒロは受け取ったプリカを両手で胸に当てた。
「変身…」
途端にチヒロの身体が眩い光に包まれていく…。
光が消え現れたのは美しい女神の様に姿を変えたチヒロがいた。
見た目は二十歳くらい、ウエーブの掛かったブロンドヘアは『
両耳の後ろには魚類の
純白のドレスの上に薄く青みがかったシースルーの衣を纏い、
肩や腰の両サイドには鱗を模した甲冑を装着している。
そして右手には
「『
チヒロは両手や身体などを見回して一通り自分の姿を確認すると感極まって目に薄っすらと涙を浮かべた。
チヒロが初めから女性だったら恐らくこの姿で魔法少女になっていたはずだ。
今ならきっと他の魔法少女に引け目を感じる事は無いだろう。
「…よし…じゃあ今度はツバサちゃん…『トルネード』と『ミキシング』の魔法を貸してもらえない?」
「えっ? …うんいいよ!」
ツバサはカードリーダーを操作して『
「ありがとう…じゃあ『トルネード』と『ジェットストリーム』と『タイダルウエーブ』を『ミキシング』して…と」
色々と呟きながら
「では始めます!! …『スーパータイフーン』!!」
湖に向かい両手を広げ今生まれたばかりの新魔法『スーパータイフーン』を唱えると湖の中心に竜巻が発生…水を吸い上げながらどんどんと大型化していった。
まさに天まで届く勢いだ。
湖の水かさも急激に減っていく。
「それっ!! このまま海まで持って行きなさい!!」
『
その遥か先には海があるのだ。水はまるでポンプに吸い上げられた様にそちらに送られていった。
「上手い!! これならこの盆地内にある水を無理なく運び出せるぞ!!」
『
空に掛かる螺旋の水の橋…実に奇妙な光景である。
程なくして台風は去り盆地には豪雨が降った翌日程の水たまりしか残っていなかった。
「やったね!! お姫ちゃん!!」
『
「…エヘヘ…上手くいって良かったよ!!」
満面の笑みを浮かべる彼女(彼?)。
湧き立つ魔法少女たち。
こうして『
ただ…『
「これでやっとみんな揃って現実世界に帰れるね!!」
これ以上無いほどウキウキしている『
平和に仇為す敵を倒し、チヒロの救出も出来た…これ以上の大団円は無い。
ツバサが変身しているのはこの姿でないと
「ねえ皆さん…折角ですから
「わ~い!! 賛成!!」
「フン…たまにはそう言うのも悪くは無いか…」
「へえ…お嬢様のお屋敷ってのはさぞ豪邸なんだろうね~一度見てみたいとは思ってたんだ」
「…休む所があるなら…言ってもいいよ…」
「うおおおおっ…!! 激闘の後に生まれる友情…最高に熱いっス!!」
『
「…そんな…気を使わなくていいのに…カオル子さんは大袈裟だね」
そうは言うが『
「よ~し!! ここはアチキ達マスコットにお任せあれ!!」
マスコット達は共同でいつものより大きな
淵には沢山の花の装飾が施されている。
「よ~し!! 私達が一番乗り!! 行こうお姫ちゃん!!」
「うん!!」
手を繋いで先頭を行く『
「そんなに慌てると転んでしまいますわよ?」
クスリと笑い二人を見守る『
「とうちゃ~く!!」
しかし手を繋いで一緒に来たチヒロの様子がおかしい…
急にうずくまりゼイゼイと胸を押さえて苦しそうにしている。
「…!! どうしたの?! お姫ちゃん!!」
「…分からない…ただ物凄く呼吸が辛いんだ…」
遂には床に突っ伏してしまったチヒロ。
「まあ!! 大丈夫?! チヒロ!!」
少し遅れて到着したカオル子がすぐさま駆け寄る。
「どうしましょう…!! 早くベッドのある部屋に運ばなくては!!」
次々と到着する仲間たちもどうしていいかわからない。
「…スト~ップ!!」
ここでユッキーが大声を張り上げる。
みんなが一様に驚き動きが止まる。
「今すぐお姫さんをファンタージョンに戻すのよ…!!」
「…えっ? どうして?」
「いいから…!! 説明は後でするから…!!」
不思議がるツバサをよそにカオル子とマトイが両側からチヒロを抱え再びファンタージョンへと
「…あれ? …治った…?」
キョトンとするチヒロ…一体何が起きたと言うのか…。
周りも何が起きたのかさっぱりだ。
「…やっぱり…」
「何がやっぱりなの?」
難しい顔をするユッキーにツバサが問いかける。
「その説明は私がするよ…」
『
「実はさっきその子がマジックデバイス無しで変身した時から疑ってたんだけど…その子…
「
みんなが一斉に口にするその言葉はあのよくおとぎ話に出て来るあの…。
「そう…
「ええっ!?」
「魔物は空気中に含有している魔力が無ければ生きて行けない…
私達が空気を吸わなければ生きて行けないのと同様にね…
だから大気中の魔力含有量が極端に少ない現実世界には出て行けないんだ」
「…それでは…チヒロは…」
『
「もう分かったかもしれないけど…その子はもう現実世界では暮らせない…」
「そっ…そんな…」
チヒロの目から涙が溢れ出る…後から後から溢れ出て留まる事を知らない。
「恐らく…『
同情の眼差しで『
「…ごめん!! ごめんなさい!! 私が…魔法がもっと上手だったらお姫ちゃんをこんな目に合わせなくて済んだのに!!」
「…ツバサちゃん?!」
突然『
「別にツバサちゃんが悪い訳では無いよ…涙を拭いて…」
「…でも…でも!!」
「こうやって生きてみんなと…ツバサちゃんと再会できて僕は幸せだよ? 僕の為に命を懸けてくれる友達が沢山出来た…それだけで十分…こればかりは課金しても手に入らないからね」
涙を流しつつも気丈に微笑む『
「僕はこれからファンタージョンで暮ら事になるけど…これからはいつでも会いに来てね…」
「…うん!! …うん!! 必ず会いに来るから…!!」
二人は固く約束を交わす。
例え何があってもふたりの友情は永遠なのだ。
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