第三章 強大な敵
幕間2 守銭奴ラゴン大討伐のお知らせ
「この度はあなた方に多大な損害とご迷惑をお掛けした事をお詫び申し上げます!!本当に申し訳ありませんでした!!」
『スナック ワンチャンス』の床に土下座するピグ。
土下座と言ってもゴム毬の様な体だから腹這いになっているだけにしか見えないのだが…。
その頭の先にはユッキーがカウンター席に腰かけていた。
「頭を上げなよピグ…正直、あんた達には言いたい事が沢山あるが…
一番の被害者であるウチのマスターが今回の事は手打ちにするって言うんだからオレはそれに従うよ」
ピグの方に敢えて顔を向けずヒマワリの種にかぶり付くユッキー。
本人も言っていた通り内心はまだ彼らを許してはいない様だった。
「私のマスターは過去に友達絡みで酷い目に遭ったらしく、ある意味人間不信に陥っているんです…
しかも私は彼がやろうとしている事を止められなかった…」
ユッキーの隣の席に着き芋焼酎を煽りながら悔やむピグ。
「…しかし本当に居るんだな…少年魔法少女…噂には聞いていたが、お目に掛かったのは初めてだ…」
少年魔法少女とは何とも矛盾した呼称である。
このままだとピグは延々とネガティブトークを語りそうだったので、敢えてユッキーは話題を変えた。
実際この話は是非とも関係者に聞いてみたかった事だ。
「ええ…私も彼と初めて会ってから暫くは全く気付きませんでしたよ…
何せ普段からワンピースだのミニスカートだの普通に着こなしてましたから…
その格好で学校にも通ってますし…」
ガタガタッ!!
「…マッ…マジ?」
ユッキーは動揺して盛大に椅子から転げ落ちてしまった。
「ジェンダーフリーを謳っている学校らしく、異性装にも寛容なんだそうで…」
「…そうか…人間界も大概だな…
まあ『週刊 魔法少女』を本屋で見つけられるてる時点で魔法少女になる資格があるんだからしょうがない…」
ユッキーはグイッと一気にミルクを飲み干す。
「ただ女性固有のとある器官がない分、少年魔法少女は魔力が低めだと言われています…程度の差はあれど、女性は生まれながらに魔力を有していますからね」
ユッキーはこの前『
彼女が男であったのならそれも合点がいくという物。
そして彼が討ちもらしたカキン虫を『
ここ数日のツバサの魔法の上達はめまぐるしく、ある意味普通ではない成長ぶりなのだ…そこにユッキーは一抹の不安を覚える。
「………」
「どうかしました?」
「いや…何でもないよ…」
パートナーが優秀なのは良い事だ。
この事についてユッキーは考える事を辞めた。
ブーン!ブーン!
ほぼ同時にユッキーとピグの懐にある携帯端末が鳴る。
「ん?何だ?」
ユッキーが端末の画面を見ると…
【全魔法少女のパートナーに通達】
ファンタージョン東地区にて四大カキン獣の一体。
『守銭奴ラゴン』が来襲。
被害甚大!!全魔法少女は総力を持って『守銭奴ラゴン』の討伐にあたって欲しい。
以上。
と書いてある。
「何だって!!守銭奴ラゴンが現れた?!」
ユッキーの端末を持つ手が震える…。
「…遂に…遂にこのチャンスが来たか…」
「!!ユッキー殿…」
ピグはユッキーの顔を見て戦慄した。
いつものとぼけた愛嬌のあるリスの顔では無く、
まるで鬼の様な憎悪を讃えた形相をしていたからだ。
「ママ!!お代はここに置いていくよ!!」
「は~い!!毎度ありがとうございます~」
カウンターにイェンを置いてユッキーは慌てて帰っていった。
「…ユッキー殿…」
只ならぬ雰囲気に不安を隠せないピグ。
と…そこにまた端末が唸る。
【追加情報】
現在、『
本日までに12人の魔法少女が被害にあった模様。
重傷者多数、命に別条なしも所持金を強奪されたとの報告有り。
現在調査中に付き魔法少女は注意されたし。
「これは…一体?まさか魔法少女が魔法少女を襲っていると言うのか?」
またしても奥のテーブル席からこちらを見ている黒フードの不気味な客が居た。
ファンタージョンに何やら大変な事が起りそうな気配がしていた。
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