第20話 『森の守護者』
「はぁ…はぁ…」
鬱蒼とした森林を二人で移動する。
『
チヒロ探索を開始して今日で十日目…一向に手掛かりが掴めずにいたからだ。
「…ツバサ…言いにくいんだが…もうやめにしないか?」
フラフラの『
「やめる? 何で? まだお姫ちゃんは見つかってないんだよ? 何でそんなこと言うの?」
振り返るなり矢継ぎ早に言葉が飛び出す、既におかしなテンションになっているのだ。
そうは言うが彼女の目は虚ろで目の下にはくまが出来ている。
また前に向き直り何かに取り付かれたように辺りを見回す『
これは何とかしなければ…そうしないとあのタカハシが言っていた事が現実になってしまう…しかし今のユッキーには妙案が浮かばなかった。
せめて誰か一緒に行動してくれる魔法少女がいたのなら…。
ピーピーピーピー…!!
けたたましい警告音が響き渡る…。
これは予め展開させていた『サーチ』の魔法が敵に反応した時に発せられる音だ。
「どこだ…?ツバサ気を付けろ…敵が近づいているぞ!!」
「うん…」
元気の無い返事が返って来る。
その直後『
「わあっ…!!」
『
コンディションが万全なら『スカイハイ』で飛んで逃げられていたはずだった。
「ツバサ!!」
ユッキーのいる辺りも地面がさらさらと崩れて来たので慌てて『
「何なのよこれ!! …まさかこれって…!!」
彼女は地面に埋もれたままどんどんすり鉢状に陥没した穴の底に流されている。
『
キシャアアアアア!!!
穴の最深部から飛び出して来たのはアリジゴク型のカキン虫であった。
首をこちらに向けて奇声を発し威嚇してくる。
しかもそのカキン虫には額に当たる部分に大きなバツ印の傷があったのだ。
「あの傷は私が『カマイタチ』で付けた傷…?」
そう、このカキン虫こそ以前『
『
「きゃあああ!!!」
激痛に悲鳴を上げる『
その拍子にマジカルステッキを落としてしまった。
彼彼女にかぶり付いたまま頭を持ち上げるアリジゴクカキン虫。
『
「ああっ!!ツバサ~!!」
戦闘能力の無いユッキーは見ている事しか出来ない。
「ガハッ…!!もう…ダメ…ごめんねお姫ちゃん…金ちゃん…」
身体を締め付けられた事により吐血する『
ツバサは死を覚悟した。
「『アイビーウィップ』!!」
何処からともなく魔法の詠唱が聞こえ、突如地面から現れた鋳薔薇の蔦がアリジゴクカキン虫を絡めとった。
ギョアアアア!!!
奴の強靭な顎も左右から鋳薔薇の蔦が引っ張る、すると解放された『
「どうなっているんだ…?」
ユッキーが辺りを見回すと茂みから一人の少女が現れた。
「やっと捕らえた…コイツと来たら見つけてもすぐ地面に潜って逃げちまうんだもの…」
その少女は勿論魔法少女であった。
頭に花の冠を被りピンクのサラサラロングヘアー、淡い緑のワンピースはスカートの裾が花びらを模した形をしており、まるで妖精のお姫様だ。
右手首には手袋と一体化したマジカルカードリーダーが取り付けられており、彼女は魔法少女にしては珍しく杖状のマジックデバイスを持っていない。
「さ~てアンタはもうお終いだよ!! それ!!」
彼女がパチンと指を鳴らすと、アリジゴクカキン虫を締め付けていた鋳薔薇が益々締め付けを強め遂には身体を切断してしまった。
キュアアアアアン…。
断末魔を上げいくつもの輪切りにされてしまったアリジゴクカキン虫は黒い粒子となり大気中に消えて行った。
「ありがとう…助かったよ…」
ユッキーは妖精風の彼女に深々と頭を下げた。
「いいって事よ!! 困った時はお互い様だ!! それにアイツにはアタイも随分苦戦させられた口でね…」
麗しい見た目に反して言動はまるで「姉御」とでも呼んでしまいたいほど力強い物だった。
「おっと!! こうしちゃいらんね~!!お嬢ちゃんをさっさと治療してやんね~と…!!」
ポンと手を打ち急ぎ気絶している『
『
吐血もしている以上内臓にも何かしらのダメージを負っているのも間違いないだろう。
「もうちょっとだけ頑張りなよ~いまお姉さんが治してやっからよ!!」
そう言って両腕を天に向かって伸ばす姉御。
スーッと深呼吸…。
「偉大なる生命の樹よ!! その豊かなる生命力をこの者に分け与えた給え!!…『ライフディストリビュート』!!」
魔法を唱えながら『
その手から植物の蔦が伸び見る見る『
するとどうだろう…腕と身体の傷が跡形も無く消えていくではないか。
「こっ…この回復魔法は…!!」
ユッキーは目を見張った、あれだけの重傷を負っていた『
『
「あのっ…!!」
「ん? 何だい小リスちゃん」
「今初めて会った方に失礼かとは思うんですが…オレの話を聞いて頂けませんか!!」
ユッキーはこれまでの経緯をなるべくかいつまんで姉御に話した。
「…それで…少しの間だけでいいんです…力を貸してくれませんか!!」
改めて頭を下げるユッキー。
「いいよ!!」
姉御のあまりの即答ぶりに拍子抜けしズッコケる。
「ただこっちにも急ぎの要件があるんだが…それを手伝ってくれるってんならな…それでもいいか?」
「はい!!」
ユッキー自身も精神が限界に来ていたのでこれはありがたい申し出だった。
正直今のツバサの暴走を止める自信が無かったのだ。
「アタイは『
「オレはユッキー、こっちに寝ているのがマスターの『
『
「実は…もう一つ頼みたい事がありまして…」
「何だい? 言ってみな」
ユッキーはイチかバチかのある賭けに出る事にした。
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