第25話 魔法少女共同戦線
「皆さんこっちです!!闘技場の中央に集まってください!!」
セキセイインコのマスコットが羽根を腕の様に振り回す。
そこには約50人ほどの魔法少女が集まって来ていた。
「はぁ~いっぱい見に来てたんだね…」
辺りを見回し感心する『
「それはそうでしょうね、みんな自分以外の魔法少女の戦い方が気になるでしょから」
『
純粋にショーとして見ていたのは一般の観客だけだ。
「時間が無いので細かい説明が出来ません!! こちらの指示に従う様お願いします!!」
魔法少女たちに緊張が走る。
「まず防御魔法が強力な方、もしくは水属性寄りの方はいませんか」
数人が挙手をした。
その中の一人が…。
「…私…氷属性です…氷の防壁が…使えます…」
ギリギリ聞き取れる、か細い声で一人の魔法少女が申告する。
白いローブ、フードを目深に被り口元も布で覆っているので顔が殆ど見えない。
手持ちのマジカルワンドには美しい蒼の宝石が嵌っていた。
しかしさっきから身を屈めてオドオドしていてどこか挙動不審だ。
「え~と…あなたは?」
「…『
セキセイインコが何やら装置を操作して闘技場のほぼ中心の地面が正方形に開口、下から台座に乗った大きな宝玉がせり上がってきた。
「ではそこのあなた、こちらへ!そう、その辺りに…あなた方はこちら…」
セキセイインコの仕切りで並びが決められていく。
『
「今からあなた方にこの宝玉に魔力を込めてもらいます!!『
自分たちが何をやらされているのか分からないままセキセイインコの指示通り行動する魔法少女たち。
『
「『アイスバーンシールド』…」
『
ただその大きさは尋常では無く、闘技場全体を完全に覆い隠すほどの巨大な物だった。
「…凄く…大きい…普段は…こんなんじゃない…」
相変わらずのか細い声でつぶやく『
「この闘技場は有事の際には避難場所に使われる為、防御魔法が強化される様に作られているのです!! それも皆さんの協力があってこそ…
あっ!! そろそろ隕石が来ますよ!! ショックに備えて下さい!!」
セキセイインコが言う通り巨大な隕石はもう眼前に迫っていた。
衝突する隕石と『アイスバーンシールド』…闘技場全体が強烈に揺さぶられる。
魔法少女たちから悲鳴に似たどよめきが上がる。
「ひゃあ!! 凄い衝撃…!!」
「これは…!!そんなに長く持たせられませんわ…!!」
「…ああ…私の…アイスバーンシールドに…ひびが…」
全く緊迫感の無い『
実際シールドには無数の亀裂が入り、徐々に押されてきているのだ。
「頑張ってください!!観客が逃げ切るまではもたせてください!!」
セキセイインコの悲痛な叫び、だがこのままでは…。
「何情けないこと言ってんだい!!こんな石ころ一つ押し返せないでどうするよ!!」
「えっ…ミドリさん?」
何と先程の
コスチュームは薄汚れ引きずっている足が痛々しい。
しかし途端に勢いを取り戻したシールドが隕石を押し戻し始めた。
「アタイにはさっきの
そう言って自信満々の笑顔を向けて来る。
「…くっ!…」
その様子を少し離れた所から後ろめたそうに見ている『
逆に彼女は『
やがて隕石にも亀裂が入り始めシールドに接している面からもうもうと蒸気が立ち上がる。
「皆さんもう少しです!!もう少しで相殺しそうです!!頑張って!!」
インコがエールを送る。
しかしその時上空に人影が現れた。
「あっ!!あの子は…!!」
『
「『
禍々しい仮面に漆黒のマント…不気味に光を放つ巨大な鎌…。
忘れたくても忘れる事なんて出来ない…チヒロの仇…!!
「あれが…そうなのか…?」
『
かなり距離が有ると言うのに何という威圧感…他の魔法少女たちも騒めき始める。
「………」
『
「…一体何をしようというの…?」
『
敵対している者が取る行動は当然…。
「『アンプ』…」
『
「…うううっ…もう…だめです…」
『
さながら火山弾である。
「きゃあああああ!!!!」
「いやあああああ!!!!」
逃げ惑う者、その場に座り込み泣き出す者、不幸にも火球が辺り倒れる者…闘技場は阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
「『エール』!!」
『
それを何度も何度も繰り返す。
やがて全ての火球が降り終わった頃には闘技場は元の形が分からない程に破壊しつくされていた。
「………」
その様子を口元一つ動かさず空から見下ろす『
「『スカウト』!!」
虚を突いて『
「少しあなたの事を調べさせていただきますわ!!」
「…!!…」
全くの無表情を通していた『
「『ラピッドファイア』」
マジカルサイズを『
「きゃあああああ!!!!」
火柱と煙幕が彼女を包む。
「金ちゃん…!!コイツ…!!『エアリーアロー』!!」
『
『
切れ端がゆっくり落下してくる。
「………」
またしても無感情でこちを見つめてくる『
「あっ…!!逃げた!!『スカイハイ』!!」
すぐさま『
仕方なく一度着地し、マントの切れ端が気になったので拾う事にした。
「金ちゃん!!大丈夫!?」
「何とか…無事ですわ…」
額と左腕から出血している…これは無事と言ってはいけないレベルだ。
「大丈夫…こんな傷…あの時に比べたら大した事ありませんわ…」
あの時とは守銭奴ラゴン戦の怪我の事だ。
確かに両手足の複雑骨折に比べたら大した事無いのかもしれないが…お嬢様も逞しくなったものである。
「今回復できそうな人を探して来るから、ここで待ってて!!」
『
「おい貴様!!何のつもりでこんな事をした!!」
『
声がした方へ向かった彼女の目に飛び込んで来たものはわき腹から大量に出血して倒れている『
火球に追い詰められ逃げ場を失った『
「…何って…魔法が使えなくなってるお前を守っただけだろう…」
弱々しい呼吸でそう答える『
「さっきまで決闘していた者同士だろう!! そんな事をする謂れは無いはずだ!!」
尚も感情的に食って掛かる『
「同じ魔法少女の仲間を守るのに謂れなんか関係ないね…違うか…?」
「…うくっ…!!」
『
「ミドリさん…しっかりして!!」
「あ~ツバサか…ちょっとまずいかもな~」
弱々しく笑みを浮かべる『
「じゃあ早く『ライフディストリビュート』をかけなきゃ…!!」
『ライフディストリビュート』…瀕死のツバサや半身麻痺のカオル子を完全回復させた驚異の回復魔法だ。
「ああ…あれね…実はあの魔法は自分には掛けられないんだ…」
「そんな!! そんな事って…」
「見ていてくれたかい? アタイの戦いぶり…最後まで諦めなければ何とかなるものさ…アンタも友達を…必ず見つけてあげな…」
『
残酷な現実…
『
(駄目だ…このまま泣いたら今までと何にも変わらない…。
また私に力が無いせいで友達を失うなんて…そんなの絶対嫌!!
お姫ちゃんお願い!! 力を貸して…!!)
「…死なせない…ミドリさんは…絶対に死なせない!!」
『
そして彼女の口から唱えられるはずの無い魔法が発せられた。
「水よ!!その癒しの力をもって彼の者の傷を癒したまえ…『ヒール』!!」
何と風属性である『
『
「…ツバサ…アンタ…」
「まさか…そんな!?」
『
普通、魔法少女は初めに決まった属性と無属性の魔法しか使えないのが決まり事なのだ。
三つ以上の属性魔法を使う魔法少女なぞ彼女らは知らない。
「ありがとうツバサ…凄いなアンタは…」
『
『
但しそこはレベルの低い『ヒール』だ…傷は取り敢えず塞がった程度、痛みはまだ残っている。
「私…無我夢中だったんだ…きっとお姫ちゃんが助けてくれたんだね」
『
それを見て赤面する二人…ツバサの笑顔に何か暖かい物を感じて胸が高鳴ってしまった。
「…悪かった…」
「えっ?」
「貴様と友人の事を侮辱した事を許してほしい…済まなかった…」
深々と頭を下げる『
複雑な心境でしばらく彼女を見つめていた『
「…分かった…許してあげる…今度からはちゃんとみんなに協力してね」
「承知した…」
さっきのやり取りを見ていて『
「あっそうだ…!!これなら金ちゃんも治療できるかも…!!ちょっと行って来るね!!」
言うが早いか『
その様子を二人は温かい目で見送った。
「こんな…酷い…」
『
消火活動が終わった闘技場のフィールドが仮の診療所になっているのだが、天井の無い地べたに毛布を敷いただけの粗末なベッドに怪我人が寝かされている…さながら野戦病院だ。
「…奇跡的に死者は出ていないそうですわ…でも…」
『
彼女も今は三角巾で左腕を吊っている状態だ。
そして現状で無傷に近い状態の魔法少女は…
『
『
の二人…。
『
今再び『
その対策の為マスコット達には非常招集が掛かっていてこの場には居ない。
…ひいい…ひいい…。
「…ちょっと金ちゃん…今何か変な声が聞こえなかった?」
フィールド内を見回っている二人の耳に不気味な鳴き声が聞こえた。
…ひいい…ひいい…。
「…確かに聞こえますわね…こちらからでしょうか…」
目先には瓦礫同士が支え合って三角形になっている所があった。
恐る恐るそこの隙間を覗くと…真っ白くて丸い物体があった。
「何これ…?」
『
「ひゃん…!!」
ゴチン!!
「あいたたた…何するんですかもう~!!」
瓦礫の隙間から出て来たのは『
さっきの白くて丸い物体は彼女のお尻であった。
触られた拍子に驚きで身体が跳ね、瓦礫に頭をぶつけたのだ。
「あなた…何でこんな所に居るのですか?」
「あんな…恐ろしい相手と戦うのが…怖くてずっと…隠れていました」
何と臆病な…と言いかけた『
すぐ他人を責めるのが自分の悪い癖と自覚していたからだ。
この心境の変化も全ては仲間たちと死線を乗り越えて来たからに他ならない。
「よく無事でいてくれました…今は一人でも仲間が必要なのですわ、さあこちらにいらして?」
「…あ…はい…」
見た所『
「あっ…いたいた!! ツバサ!! お嬢さん!!」
ユッキーとダニエルがこちらに駆けて来る。
「どうしたの?そんなに慌てて」
「『
「うん、分かったよ…行こう金ちゃん!ブリブリさん!」
「分かりましたわ…ってそのブリブリさんて『
「うん!ブリザード・ブリンガー…だからブリブリさん」
「そんな…酷い~」
涙目の『
それはさておき魔法少女たちはユッキーの案内で一路『
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