第29話 『吹雪の訪れ』
「居たぞ…奴だ…」
『
「あれは…一体何をしているのだ…?」
『
まるで意識が飛んでしまったかの様に時折フラフラと身体が揺れている。
しかし『
「多分あれはね…ずぶ濡れになって調子がでないんじゃないかな…炎属性なだけに…私もさっき炎に囲まれた時そうだったし…」
「なるほど…熱に関係する属性ならではの不調と言う訳か…
しかしこれはチャンスだ…今なら奴を倒す事が可能ではないのか…?」
「え~どうせなら逃げましょうよ…あなたは攻撃的過ぎるよ…」
武闘派の『
「話を聞いてくれ…今までの吾輩の言動と行動からそう誤解されても仕方ないと思っている…だが今回は吾輩の性格は関係ない…一刻も早くこの戦いを終わらせたいのだ…『
『
「…なぜ…そこまで彼女の事を?」
「以前…吾輩と『
『
黙って聞き入る『
彼女が加入したのがつい昨日だ、この時の事情を知らないのは致し方の無い事…。
「そのせいで『
「じゃあ…」
「そうだ…これは罪滅ぼしだ…こんな戦い早く終わらせて吾輩は『
「………」
『
以前自分がパーティーを組んでいた魔法少女を自分の実力不足のせいで大怪我を負わせてしまった事を…それ以来彼女は人に関わるのを極力避けて来たのだ。
『
自分もこのままではいけない…自分も一歩踏み出したい…!!
「分かった…私も協力する…」
「恩に着る…!!」
二人は力強い笑みをお互いに向け合った。
「『
「…了解…大気に漂いし冷たき者よ我が命に従い彼の者を凍りつかせ給え…『フリーズバインド』!!」
前に突き出されたマジカルワンドの蒼い宝玉が真っ白に光り輝くキラキラ雪の結晶が宙を漂う。
するとやや離れた所に立っている『
「………!!」
呆けていたせいで『
時すでに遅し、冷気は彼女の足元を凍り付かせ徐々に上に昇って来る。
そして遂には彼女の全身を凍結させてしまったのだ。
だがこの魔法が効率よく機能しているのは実は『
ずぶ濡れの服は凍結速度を速めるのに一役買ったのだ。
「いいぞ…!! 『レールキャノン』!!」
次に『
口径が大きいのは元より砲身もとてつもなく長い巨大な砲塔が地面から姿を現す。
標準は『
「恨むなよ? 無差別に人々を襲ってきたお前が悪いんだ…」
複雑な心境の二人…本来魔法少女同士が
(すべての罪は吾輩が背負う…)
「ファイア!!!」
『
巨大な砲弾が轟音と共に『
「…ああ…何てもどかしいのでしょう…」
木の根に嵌ってしまった馬車の車輪をしり目に『
男たちが必死に復旧作業に取り掛かっている最中だ。
ツバサと連絡を取ってから『ブックオブシークレット』にはとんと追加情報が現れなかった。
「まあまあお嬢さん…昔から短気は損気と言うではないか…焦りなさるな…」
低音でゆったりと話しかける御仁は大きな陸ガメのマスコットはカメキチである。
顔中皺だらけでいかにも長生きしているというのが見て取れる。
救援隊が組まれた時、自ら同行を希望したので来てもらったのだ。
「わたくしはもっと情報を知りたいのですわ…あの『
「ふぁ~…若者はせっかちじゃの~…」
「そんなに知りたければ50年前にあの者と戦った本人に聞いたらどうじゃ?」
「はぁ…何をおっやるの? もうその時代の魔法少女はいらっしゃらないでしょうに…」
カメキチの物言いに呆れる『
「アレなんですよきっと…」
疑惑の眼差しでダニエルが耳打ちする。
「ほれ…もうコールしておいたぞ…代わってくれんかの…」
そしてカメキチはマジカルカードリーダーによく似た端末を取り出しこう言った。
「…誰にですの?」
やっぱりアレですの?と『
「『
「何ですって!?」
カメキチはとんでもない大物と知り合いであった…。
『
すぐさま端末をひったくって通話に出る『
『カメキチさん…今日は何だい? もう南部せんべいが切れたかい…』
『
話している内容がとても俗っぽいのが気になるが…。
「あの…すみません…急に連絡を差し上げて…初めまして、わたくしは『
ガシャン!!
大きな音の後、端末の奥で何やらカチャカチャ音が聞こえる…まるで慌てふためいている様だ。
『おほん…初めまして、私は『
再び話し出したその人物の声は明らかに若い女性の物に変わった。
非常に怪しかったが行き詰っている現在、藁にもすがる思いで事情を話し始めた。
『あら…『
「はい、今現在もわたくしの友達の魔法少女が戦っていてとても危険な状態なのです…ですからお願いします!! 『
『…では単刀直入に結論から言うわ…彼女が頭に被っている仮面を破壊しなさい』
「仮面を破壊する…それが『
『
これをツバサたちに伝えられればこの戦いに終止符が打たれるはずだ。
『そうよ…私達の時は仲間の一人がうっかりその仮面を被った事で起きた事件だった…そして仮面を壊して奴を倒したのよ…あの仮面自体が『
「では早速みんなに伝えます!! ありがとうございました!!」
『あっ…ちょっと待ちなさい!!』
「はい?何でしょう…」
意気揚々と通話を切ろうとした所を『
『ただ気を付けてほしい事があって…あんまり仮面以外の所に大ダメージを与えてしまうと彼女、
ツーツーツー…。
通話はここで切れてしまった。
その後すぐに森全体を揺るがす振動が起き、とてつもなく大きな咆哮が響き渡った。
「…何ですって? そんな…」
『
「どうなっている!! 何故あんなものが現れたんだ!?」
「こっちが聞きたいよ!! 私達…確かにアイツを倒したよね?」
『
それがどうだ…身の丈15mはある巨大な龍がそこには居るのだ。
龍と言っても先に戦った事のある守銭奴ラゴンとは違い身体が細身で長いタイプ…しいて言うならば東洋系の龍である。
しかも全身が炎に包まれており常に燃え盛っている。
「くっ…こうなったら徹底抗戦だ!! 『
ミニチュア戦車隊が
身体に岩石の砲弾が触れた途端に焼失しているのだ。
「じゃあこれならどう!? 『ブリザード』!!」
『
奴の身体の炎が消えていく…これは効いているのか…と思っていた矢先、再び炎が燃え盛り吹雪を蒸発させていった。
「…そんな…!!」
唖然とする『
自分が最も得意としている魔法が打ち破られてしまった…。
魔法属性の相性から言えば吹雪の魔法の方が上の筈なのだ。
それを覆すと言う事はこの炎の龍はよほどの魔法力を有すると言う事になる。
立ち尽くす『
この体勢はドラゴン系のモンスターのステータスの一つ…ブレス攻撃の予備動作…!!
「…ああっ…」
戦意を喪失した『
そこへ振り下ろされた
「馬鹿っ!!逃げろっ!!」
横から『
そのまま二人でもつれて地面を転がる。
間一髪…一瞬前まで『
「あぐううっ…!!」
『
彼女のブーツが…両足が焼け焦げてしまっていた。
どうやら『
「どうして…!! 私なんかを助けるからこんな…!!」
『
「…吾輩もやれば出来るじゃないか…ははっ…」
力無く笑う『
「マスターーー!!!」
タカハシも心配そうだ。
「『
逃げる事を勧めた『
いつも逃げるのが最優先の『
「…逃げないよ…私は!! ここで戦って…勝ってみんなと一緒に帰るんだ!!」
そっと『
『
「貴様…?」
彼女の全身から真っ白な冷気が勢いよく立ち昇る…触れる物全てを瞬時に凍らせそうな勢いだ。
「出でよ!! 偉大なる氷の守護者、『アイスロックゴーレム』!!」
大地が地震の様に揺れる…すると『
彼女を乗せたままどんどんと高さを増していく…そして
土砂が全て剥がれ落ち現れた物は純白の巨人であった。
氷で出来た大小の岩が組み合わさった武骨な身体…その頭上に彼女は乗っていた。
「私の友達を傷つけた報いを受けるがいい!! 行けアイスロックゴーレム!!」
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