第38話 天使とラストダンスを…
「まあ…皆さんご無事で!!」
湖岸で三人が到着したのを出迎える『
「なあ…ツバサはどうしちまったんだ?」
到着するなり『
「…まずはこれを見て下さいな…『ビッグスケール』!!」
『
大画面には『
「…この姿は一体?」
「きっとツバサさんが『クリエイト』の魔法で編み出したオリジナル
「『クリエイト』? …聞いた事無いね…」
『
「え~と、それはですね…」
「金ちゃん!!」
「…ツバサ…さん?」
消耗した身体で必死に歩いていた『
「さっきはごめんなさい…!! 私、最後までお姫ちゃんの事諦めないから!!」
「…ツバサさん…良かった…」
『
「ついさっきね、『
喜々として自分のカードリーダーを彼女に見せる。
「…『
『
「それで今からさっそく金ちゃんを治してあげようと思って…」
「…えっ…それは在り難いですけど…」
「『クリエイト』!! 『ヒール』!!」
特に気を遣わずに魔法を唱える『
彼女のステッキの先端が温かい光を灯したまま何も起きない…いやこの光が『ヒール』なのだ。
ここに念を投じる事で新魔法が生まれる。
(とにかく金ちゃんの体力を回復してあげたい…)
『
すると今度は光が赤に変わりステッキから電子音声が流れる。
『『リバイタル』ノマホウガデキタ~ヨ!!』
「何か魔法が出来たみたい…」
「…はぁぁ…」
『
目の前で新魔法の誕生に立ち会ってしまったのだ…彼女の胸が高鳴った。
造り出した本人は特に何とも思ってなさそうだが…。
「じゃあ今から体力を回復させてあげるね…『リバイタル』!!」
『
ポカポカと春の陽気のもと日向ぼっこでもしている様な心地よさだ。
「はぁ…気持ちいい…」
口元が緩み危うくよだれを垂らしてしまいそうになった。
「…どう?」
「…うん!! 体調が元に戻りましたわ!! …ありがとうツバサさん…」
「…えへへ~」
微笑み合う二人。
「あっ…こうしちゃいられない!! みんなが気になるから先に行くね!! また後でね金ちゃん!!」
『
「頑張って!! ツバサさん!!」
『
「そうか…新しく魔法を
顎に人差し指と親指を当て興味深そうに聞き入る『
「きっとこの二段変身も『ブースト』や『エール』などの能力強化魔法とプラスアルファ的な何かを混合した物かも知れないですわね…」
『
「…でもツバサさん…マジ天使ですわ~あっ画像を保存しなければ…」
「お嬢…」
カオル子のツバサラブは筋金入りだった…ダニエルも呆れるしかない。
『私達ハマスターデアル『
そう言って三人の『
「ファミリア《使い魔》とはよく言ったものだ…ってあいつら今おかしなことを言ってなかったか?」
「…皆さんの魔法は後で返す…? 何の事だい…?」
「…ちょっと待って!! まさか…!!」
『
「…無い!! 吾輩の『レールキャノン』の魔法が…!!」
「アタイのは『アイビーウイップ』が無いな…」
「…私は…『アイスソード』を持って行かれた…」
何と分身体『
「ウフフ…中々やりますわね…」
『
「『ウェザー』!!」
戦闘の開幕に『
見る見る上空に暗雲が立ち込める。
「…まずは雨を降らせて湖の温度を下げようってのかい? それを今やるなんてアタシも舐められたものだね!!」
爪を振りかざし向かって来る『
クルリと回転しロッドの柄の部分を『
「ギィャアアアアアアアア!!」
そのロッドの先端には『エアバースト』の魔法が込められていたのだ。
「『ゴールドラッシュ』!!」
更にコインの追い打ち、貫通した物が殆どだが数個が『
「この!! 『ジェットストリームスパイラル』!!」
一瞬たじろいだ『
『
「『スパイラルアロー』!!」
しかし『
「きい~っ!! 何て子なの!! このアタシが何も出来ないなんて…!!」
心底悔しがる『
「もう何をやっても無駄です…大人しくチヒロさんを解放して投降するなら悪いようにはしません…」
落ち着いた大人びた口調で降伏を促す。
これがあのすぐに落ち込んで泣きべそをかくツバサだったと誰が思うだろう。
しかし『
「そうだ…アタシにはまだチヒロと言う切り札があるじゃないか…
これをやってしまったらアタシはもう元の姿には戻れないが仕方が無い…」
彼女の腹の中に居るチヒロが下から盛り上がって来る肉の壁に包み込まれゴリゴリと骨を砕く音が響かせ縮んでいく。
これではまるで『
「いやぁ…!! あなた…!! 一体何をしてるの…!!?」
先程まで冷静だった『
「…人質作戦はもうお終いよ~ん!! アタシは今からチヒロと完全融合してより完璧な超絶魔法生命体になるのよ~ん!!」
不敵な笑みを浮かべる『
身体にはすぐに変化が現れた。
顔が段々化け猫から人に近い形状にグニャグニャと変形していく…。
長い髪が伸び顔の変化が収まると…その顔はチヒロその物であった!!
体型も先程までの化け物じみた物では無く人間の女性に近い物となった。
しかし大きな手足と爪は健在でそこだけ異彩を放っている。
そして長い尻尾の先は鋭利な矛先の様に尖っている。
言わば『
「…何て事なの…!!」
動揺を隠せない『
しかし『
高速飛行で詰め寄りその大きな手で『
「ぐうっ…!! しまった!!」
「こうなってしまえばこっちのもの…!! さあ…くたばりな!!」
『
「きゃああああっ!!! …ガフッ…」
悲鳴を上げ吐血する『
「ウフフフ…その大怪我で下の熱湯に落ちたらどうなるのかしら…」
グロッキー状態の『
「楽しみね…!!!」
そして思い切り下に向けて振り落とした。
物凄い速さで落下する『
しかし間一髪!! 『
「この人形共!! 邪魔をするな!!」
あとちょっとでとどめを刺せるところを邪魔され激怒する『
『マスター…大丈夫デスカ?』
「…ありがとう…私は今から自分を治療するから…あなた達は少しだけ時間を稼いでくれないかな?」
『イエス…マスター』
『
その途中一人目の『
右肩に光の粒子が筒状に集まると、大砲に変化したのだ。
頭には『
次に二人目の『
三人目の『
「…なっ…何なの?! この子達は…!!」
その異様な光景を目の当たりにし動揺する『
『エターナル・ワン』が大砲を発射…難なくそれを避ける『
その先に待ち構えていた『エターナル・ツー』の手から出した長い蔦に絡め取られ身動きが取れなくなった所を『エターナル・スリー』によってアイスソードで切り付けられる。
「…このっ!! 鬱陶しいのよアンタたちは~!!」
渾身の力で蔦の拘束を打ち破る。
しかしエターナル達の絡みつく様な攻撃が続く…。
「よ~し…みんなその調子よ…『ハイヒール』!!」
『
この『ハイヒール』の魔法は『ヒール』の強化版だ、より重度の怪我も短時間で治せる優れものだ。
決して踵の高い靴の事では無い。
「…そろそろ頃合いかな…?」
『
雲は黒ずんだ雨雲に変わり始めている。
「白猫さんが二段変身したのは予定外だったけど…当初の作戦通り行くわ…」
空からゴロゴロと音が聞こえる…雷が発生するのだろう。
「やるなら今!! …風よ!! 猛々しき天空の王者よ!! 邪悪なる彼の者に轟く鉄槌を下し給え!!…『ウインズオブサンダー』!!」
上空の雲がスパークし一瞬空が明るくなる。
「みんな逃げて!!」
『イエスマスター』
エターナル達は一斉に散開、『
その刹那、空からひと筋の雷光が一閃!!
「キャアアアアアアアッ!!アババババババッ!!!」
震える大気…。
雷が『
閃光の中で痙攣しながら悲鳴を上げている。
先に身体に埋め込まれたコインが雷を呼び寄せる役割をした訳だ。
『
『
普通の怪物ならこれで仕留められそうなものだが、そこは超絶魔法生命体…回復して再び上空へと舞い戻って来た。
「…やってくれたじゃないの…今のは流石にアタシも死ぬかと思ったわ!!」
肩で息をして物凄く醜悪な表情で睨んで来る。
「…やはり…この程度では倒せないか…でも電撃の目的はそれだけじゃないのよ!!」
(…ツバサちゃん…?)
チヒロの声だ…しかしどこから聞こえてくると言うのか…
「良かった…!! 目が覚めたんだね!? お姫ちゃん!!」
確信していたかのような『
(僕はどうなってしまったんだ…)
チヒロの声は『
『
本来ならばチヒロの身体が原型を留めている状態で行いたかったのだが、結果オーライと言った所だろう。
「待ってて!! 今助けるから…!!」
『
(…無理だよ…もう僕の身体はひとかけらだって残っちゃいない…
きっとそんなに掛からずに僕の精神も消滅してしまう…)
しかしチヒロから発せられた言葉は拒絶であった。
「大丈夫!! 私が絶対何とかするから…!! 信じて!!」
(…ツバサちゃん…)
力強い『
「アタシを無視して何を勝手に盛り上がっているのかしら~ん? 頭に来るわね!!!」
チヒロの顔をした『
「完全に融合したアタシとチヒロを引き剥がすのは無理よ!! そのままお友達を大事にしてあなたが死ねばいいわ!!」
両手を振りかぶって『
ナイフの様な鋭い爪が迫る!!
「最後まで打てる手があるうちは諦めない!! …『カミカゼ』!!
『
空中で交錯する『
制止する二人…そして暫しの静寂…。
「ゴバァッ…!!」
口から青い体液を吐き出す『
身体の中心に大穴が空いており、ガクリと力が抜ける。
「『ピックアップ』!!」
振り向きざまに『
すると『
この魔法は術者が求めるものを選別して取り出す物で、
『サーチ』、『ダウジング』、『アナライズ』を『ミキシング』の魔法で合成して造り出されているのだ。
この粒子はチヒロを構成していた物で、
チヒロの意識を覚醒させたのはこの魔法を効率よく行うためでもあった。
そして集まった光は徐々に人型を成していき、『
チヒロだ…一糸纏わぬ姿のチヒロは意識が無い状態で、身体が女性化している以外におかしな所は無さそうである。
「…そんな…馬鹿な…こんな事が出来るなんて…お前はまさか…!!」
『
身体の一部分を占めていたチヒロが抜き取られたからだろう…
恐らく超再生能力も失われていると思われる。
「…やはり…お前だけは生かしておくべきでは無かったわ…」
不快な捨て台詞を残し、腹に大穴が空いた『
「…お姫ちゃん…お姫ちゃん…」
『
「…うっ…う~ん…」
ゆっくりと目を開けるチヒロ。
「…ツバサちゃんなの…?」
恐る恐る訪ねて来る。
「…うん…うん…!! お帰りなさい!! お姫ちゃん!!」
「ツバサちゃん!! ツバサちゃ~ん!!」
形振り構わず抱き合う二人…。
「良かった…本当に良かったですわ…うわああああん!!」
モニターで見ていた『
「ふぅ~…大した奴だよツバサは…!! それに比べてアタイと来たら…」
「ああ…あやつには最大級の賛辞を贈ろう!!」
「…ツバサ…見直した…」
三人も抱き合う二人を優し気に見守る。
その後も『
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