カクヨムプライベートコンテスト Vol.03結果発表

f:id:kadokawa-toko:20190520122342j:plain 「カクヨムプライベートコンテスト Vol.03 ~カクヨム編集O篇~」にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。
選考にお時間をいただいてしまい、大変申し訳ありません。

難しくニッチなお題ながら102作品ものご応募をいただき、魔法の息づくファンタジーな世界、はたまた現代社会に魔法を仕込む設定、そしてミステリの骨子を担う謎解き、全作品それぞれの要素をじっくりと楽しみつつ、選考させていただきました。

カクヨムプライベートコンテスト Vol.03 ~カクヨム編集O篇~
お題:魔法×ミステリ

結果発表の前に、「賞・賞品」の追加、および今回の選考基準についてご説明させていただきます。

●賞・賞品:(※変更点を赤字で記しています)
大賞(1名):オリジナル図書カード 5000円分
特別賞(1名):カクヨムオリジナルノート+オリジナル図書カード500円分
気になったで賞(4名):カクヨムオリジナルブックカバー

●選考基準:
皆さま、「魔法らしさ」というと何を思い浮かべるでしょうか。
これは一つの考え方ですが、「魔法を使うためのお約束」がその要素を担っているのではないでしょうか。
例えば、杖を振る動作、魔法陣を描くときの作法、使う道具。ゲーム世界であれば、消費されるMP、アイテム、ジョブの制限など。
世界設定を含めて、「あ、確かにこの人魔法使ってそう」な仕草や言動が、「魔法」をよりリアルに引き立ててくれるように思います。

そんな魔法使いに対して課される「制約」が日常の1シーンにさりげなく混ざり込み、探偵の手によって異物として抽出される瞬間。それこそ「魔法×ミステリ」の相乗効果、面白さの現れるポイントではないかと考えています。

ということで、どの作品にも各要素ごとにそれぞれの良さがあったのですが、今回は「魔法の制約」にポイントを絞り、その扱いの巧さを軸に選考させていただきました。

また、面白かったものの特別賞に一歩届かなかった作品に「気になったで賞」をお贈りしております。

それでは、結果を発表します!

《大賞》

探偵は王女と踊る 作者 角増エル
【選評】
ただ面白いだけじゃないストーリー。隅々に仕込まれた鍵を見逃すな!

辛い過去から救ってくれた王女に対してひたむきに忠実なイマジカ、人には言えない秘密を抱えた英雄、やけに態度が刺々しい人形のような美女、声の出せない吟遊詩人などなど、「らしさ」のあるキャラクターたちの紡ぐストーリーが面白い!

それもそのはず、彼らの行動、キャラ、そして登場する道具にもちゃんと理由があり、そしてそれが事件を解くカギになるのです。

主人公のイマジカは〈真実の目〉という、一見謎解きミステリを一瞬で終わらせてしまう能力を備えていますが、これも魔法ミステリを上手く成立させるカギ!
とにかく読者にとってフェアな物語作りが心がけられていた作品でした。

「魅力的なキャラクター作り」「物語を彩る魔法とアイテム」、そして「ストーリーの構成力」。
この3点が上手く組み合わさった作品として、大賞とさせていただきました。

魔法ミステリといえばこんなロジック構築をするだろう。というポイントをしっかりと押さえつつ、きちんと自分のファンタジー世界へとストーリーを落とし込んでいる点が見事でした。

《特別賞》

魔法で人は殺せない5 作者 蒲生 翼
【選評】
魔法の法則とわずかな気付きが、犯人をあぶり出す!

魔法の法則、使うための手順が細かく定められ、現象よりもそのギミックの方に強いこだわりが見られたのが本シリーズ。
その5作目は、「魔法の使えない」密室で行われた殺人事件。
なぜ、そこでは「魔法が使えない」のか?
検証を重ね、ダベンポートがたどり着いた手がかりは、実は我々にも身近なところにあった……!

人は嘘をつく。しかし、法則は嘘をつかない。
信頼できる情報を繋げていけば自ずと犯人へと導かれる構成が、この作品の巧みなポイントです。

そして、幕間に挟まれるメイドのリリィとのほっと一息つくティータイム。リリィのキャラと美味しそうなお菓子が、ストーリーに華を添えてくれますね。

《気になったで賞》

双子は喫茶店で推理する 作者 淡島かりす
【選評】
「ピザ窯の中で発見された氷漬けの死体」というミスマッチかつインパクトのある出だしから始まる本作品。
しかし、マイペースな双子の魔術師はゆったりまったりと料理を楽しみながら、するすると事件を解決へと導いてしまいます。
ストレスなくライトミステリを楽しみたいあなたにぴったりの作品です。

本作品の特徴は何といっても「精霊瓶」というアイテム。
「空だった瓶に精霊が宿る」というロマンチックな設定と同時に、「魔法が使用されたかどうか」を示すインジケータ―の役割も果たしています。
「制約」の見せ方にも一工夫のある作品でした。

旅医者と空色タマゴ 作者 はとり
【選評】
ずっとその世界に浸っていたい、作り込まれたファンタジー!
児童書コーナーに置いてあるちょっと装丁の凝った海外ファンタジーみたいな作品が読みたいな、という方にオススメなのが本作品です。

ある朝、「この子を愛してください」という書置きと共に枕元に置かれていたのは、誰かが産んだらしい「空色のタマゴ」。
一体誰が、何のために?
主人公のラディアスと暗殺者のグラッドはこの子の親を探しはじめるのだが、どうやら王国の裏社会を牛耳る闇組織が関わっているようで……。

獣人族、魔族、翼族のような種族。精霊使いや暗殺者のようなクラス。
そうそう、ファンタジーといえばこれだよねこれ! と言いたくなるような魅力あるワードの数々。
隅々まできめ細かに練られた設定が魔法の息づく世界をリアルに作り上げており、気持ちよく読み進められるファンタジーでした。

そういえば、「魔法×ミステリ」「ブロマンス」そして「もふもふ」と、これまでのプライベートコンを全部満たしている作品でもありますね。

魔法使いの水梨さんは、赤嶺小百合を殺したか 作者 貴堂水樹
【選評】
その殺人が魔法使いの仕業だと、「僕」だけが知っている。

黒い噂に事欠かないご令嬢、赤嶺小百合が、因果応報というべきか全校生徒の目の前で不可解な死を遂げる。
どう考えても魔法によるものとしか思えない、白昼堂々の犯行。
しかし、この世に魔法使いなんているのか?

……実は、いる。
主人公の「僕」は、水梨さんの魔法によって一度命を救われている。だから、この世に魔法使いがいることを知っている。
動機がある人ならば山ほど。しかし、「僕」が知る魔法使いは水梨さん一人だけ。

果たして、命の恩人「水梨さん」は殺人に手を染めてしまったのか。
それとも、何か大事なことを見落としているのか。

学園青春モノを背景に、気付かないようでいてすぐ近くにある魔法、そして自分だけが知る秘密、とワクワクする要素が詰め込まれた作品でした。
始終ミステリアスな水梨さんをはじめ、キャラクターが魅力的だった本作。同じ登場人物で繰り広げられる別の事件もぜひ読んでみたいです。

人たらしの設楽くん~ワールドエンド要塞の殺戮 作者 羽野ゆず
【選評】
ちょっとコミュ力に自信のある主人公の設楽くんは、ヒロインの書いたミステリ小説をロクに読まずにテキトーな感想を書いてしまったばっかりに、報復としてその世界へと送り込まれてしまう。(!?)
そこは、化け物が跋扈し、わずかな人間と異能力者だけが生き残った世界。
ただでさえ命が危ないというのに、逃げ込んだ閉鎖空間ではやっぱりヒロインの意図通り猟奇的殺人が起こる。
外にも中にも殺人鬼。解決できなかったら、死ぬしかない!?

終末世界、異能、そして価値観も、創作世界ならではの「濃さ」で繰り広げられる、一味違う推理劇でした。
某学園裁判ゲームのようなビビッドな世界観がお好きな方にオススメの作品です。


●賞・賞品:
大賞:オリジナル図書カード 5000円分
特別賞:カクヨムオリジナルノート+オリジナル図書カード500円分
気になったで賞:カクヨムオリジナルブックカバー

受賞者には、別途カクヨム運営よりご連絡いたします。
運営メールが受け取れる設定になっているか、ご確認くださいませ。


改めまして、ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

昨今では、ゲームのイベントに謎解きが取り入れられたり、TRPGやリアル脱出ゲームが注目を集めているなど、「謎」に対する需要は形を変えながらますます増えていくように感じます。
そこには、新たな「面白いミステリ」作品へのヒントが隠されているかもしれません。
書き手にとって難しい、と言われがちなミステリではありますが、本コンテストが新たなミステリ作品に挑戦するきっかけとなれば幸いです。
次回イベント・コンテストの開催もどうぞお楽しみに!


▼「魔法×ミステリ」応募作品の一覧はこちら
kakuyomu.jp