カクヨムコンテスト10 大賞受賞者インタビュー|鈴音 さや【ファンタジー恋愛部門】

カクヨムコンテスト11への応募者の皆さまと同様に、かつてコンテストに作品を応募し、見事大賞に輝いた受賞者にインタビューを行いました。
大賞受賞者が語る創作のルーツや、作品を書き上げるうえでの創意工夫などをヒントに、小説執筆や書籍化への理解を深めていただけますと幸いです。 今回は、カクヨムコンテスト10でファンタジー恋愛部門大賞を受賞し、2026年3月25日に書籍版が発売される『恋とはどんなものかしら』の著者である鈴音さやさんにお話を伺いました。 カクヨムコンテスト10 ファンタジー恋愛部門大賞
恋とはどんなものかしら(鈴音 さや)

kakuyomu.jp

──小説を書き始めた時期、きっかけについてお聞かせください。また、影響を受けた作品、参考になった本があれば教えてください。

小説を書き始めたのは二年ほど前でしょうか。
子どもの頃から本が好きで、大きくなって、Webで無料で小説を読めると知った時には驚愕でしたね。それからは何年もたくさんの作品を楽しませていただいておりました。
ある時、在宅勤務もあってぽっかり時間が空いたことがありまして。ふと、「自分でも書いてみようかな」と思ったのがきっかけです。
小説投稿サイトが楽しそうで参加してみたくなったのです。

これまでWebで拝読してきたたくさんの作品が基礎になっていますね。今作として参考になった本では、ライトノベル的な感覚として『夏への扉』、恋愛小説としては『高慢と偏見』『風と共に去りぬ』の影響が大きいでしょうか。前者は楽しくてハッピーエンド、後者は女性主人公が馬車などを使用する時代、人間関係や階級社会に翻弄されながらも快活に自分の足で歩いていく。一大ジャンルとなった悪役令嬢系ととても親和性の高い二作だと思います。
学生時代、数学から遠ざかりたい一心で英米文学を専攻しました。当時は単位をもらうために課題として取り組んでいたのですが、時を経て、小説を書いてみたらそれらは意外なほど深く自分の中に根を張ってくれていることに気がつきました。そして小説に限らず、これまで楽しんできた多くの漫画や映画、ドラマ、音楽なども様々に影響を受けています。
今後、また違う雰囲気やカテゴリの作品も書いていけたらいいなと思います。

──今回受賞した作品の最大の特徴をお教えください。また、ご自身では選考委員や読者に支持されたのはどんな点だと思いますか?

特徴は、「ヒーローが王子様じゃないこと」でしょうか。
異世界恋愛ではヒロインよりもヒーローの身分が下というのは、大きな差別化ではありますが同時にリスクでもあると思っています。それでも書いてみたかったので、書いちゃいました!

選考委員の方や読者の皆様が支持してくださった点は、私も是非是非お伺いしたいです!
感想欄などでは主人公のヴィクトリアさんを応援してくださるコメントをたくさんいただいたので、「置かれた環境の中で腐らないヴィクトリアさんの頑張りぶり」かもしれません。この度は素晴らしい賞と機会をいただき、ありがとうございます!!

──作中の登場人物やストーリー展開について、一番気に入っているポイントを教えてください。

自分の境遇に気づいたヴィクトリアさんが未来を変えるべく奮闘する横で、ズブズブと恋の沼にはまっていくヒーロー・シグルドとのコントラストでしょうか。
基本的にヴィクトリアさんの視点で断罪回避の物語としてすすんでいくのですが、並行してシグルドの恋物語が走っていく。
「婚約者の王子に冷遇される孤立無援の美しい公爵令嬢」と出会ってしまった男爵子息のアオハルぶりが、甘酸っぱさを醸してくれているのではないかと思っています。
二人の物語が合流していく流れ、未来を掴み取ろうとするヴィクトリアさんの中に恋の気配が忍び寄っていく様子が描けていたら嬉しいです。

──Web上で小説を発表するということは、広く様々な人が自分の作品の読者になる可能性を秘めています。そんな中で、ご自身の作品を誰かに読んでもらうためにどのような工夫や努力を行ったか教えてください。

まさに、カクヨムコンテストに参加したことですね。
KADOKAWAというオールジャンルの大手出版社様から小説だけでなくコミカライズの編集部様も何十と参加される、カクヨムの年に一度にして最大のコンテストです。Web小説に携わる方なら気にならないはずがない。サイトに訪れる方も増えますし、時期も年末年始の長期休暇にかかりますから、日頃はお気に入り作の更新分しか見ないという方も、他の作品に手を伸ばしていただける可能性が高くなります。『カクヨムコンテストの参加作品だから読んでみようか』という、コンテストの権威や集客力をお借りしない手はないな、と。

例えば新人ミュージシャンの方でも、ライブハウスにお客さんを集めるのは大変でしょう。ある程度の好意がなければ、会場に足を運ぶという行動を起こしてもらえないからです。しかし、たくさんの人が集まるフェスならば、『ついでにこれもちょっと見てみようか』と足を止めてくれる方が期待できるのではないでしょうか。
ましてカクヨムコンテストは、読者の方の評価で読者選考作が決まる参加型。読者様にとって、書籍化させたい作品を探す、選べるという楽しみもあります。カクさんだけでなく、ヨムさんもひきつける超大型フェスといえるでしょう。

私の実感として、コンテストの参加作品だけでなく既存作品も読んでいただける波及効果もありました。
読者の方につながる線をつくる、その線が面に広がる可能性を高める手段の一つとして、カクヨムコンテストへの参加はとても有効だと感じています。

──受賞作の書籍化作業で印象に残っていることを教えてください。

編集様に上下巻での制作をご提案いただけてとても嬉しかったです。
かなりの増量になるのですが、まずはWeb版のどこで上下の区切りとするかを話し合いました。そこから上下巻それぞれに必要な加筆文字数が確認できました。
Web版のテンポや流れを守りながらエピソードを増やしていく感覚が掴めず迷ったこともあったのですが、「二時間の映画を三時間にしようとするのではなく、全十回の連続ドラマにするとして考えてみたら」とご助言をいただき、自分としてはとても理解できました。そこからも試行錯誤はありましたが、増やしたエピソードの分、ストーリーにもキャラにも深みや幅を持たせることができたのではないか、と感じています。
大変勉強になりました。

──書籍版の見どころや、Web版との違いについて教えてください。

書籍化の方針として、編集様からは「ファンタジー恋愛部門ですし、タイトルに恋が入っているのですから、恋の成分を増やしていきましょう!」とのご提案をいただき、頑張りました!
乙女ゲームらしい事件や、ファンタジーな事件でのヴィクトリアさんの活躍、Web版のその後の二人などにも大きく分量を割いております。王子や王家、シグルド側も深堀りしております。Web版をご高覧済の方も是非、是非是非!! かっこよくて可愛いヴィクトリアさんの益々の活躍をご確認ください!
(既読の方には、最後の見せ場をヴィクトリアさんに大増量したことを謹んでご報告いたします。よろしくお願いいたします)

──これからカクヨムコンテストに挑戦しようと思っている方、Web上で創作活動をしたい方へ向けて、作品の執筆や活動についてアドバイスやメッセージがあれば、ぜひお願いします。

私もまだまだ手探りで、制作についてこうしたら有用ですよといえる経験値や再現性を持っておりません、すみません……。
一つお伝えできるとすれば、Web小説サイトという環境がなければ、私は小説を書くことはなかったし、完結させることはできなかっただろうな、ということです。

スマホがあればどこでも時間の許す限りいくらでも読める。何年もそうしているうちに、ある日、書いてみたくなったのは前述の通りです。
メールアドレスを登録するだけで小説を書き、公開できる。これまでヨムで親しんできた場所は、カクも受け入れてくれる場所でした。
だけど、すぐに始めることはできませんでした。
「上手く書けるかな」「ちょっと恥ずかしいかも」。そういう自分に反論する自分もいました。「本名で書くわけじゃないし」「上手く書けなくても誰にもわからないし」。
Web上だからこそ、気楽に始められることに気づきました。

上手くいかなかったらブラウザを閉じればいいくらいの気持ちで始めました。そして、ここは小説を書く、作品を作り出すには最適な場所だとすぐに気がつきました。

労なく執筆・公開できる。誰かが読んでくれるかもしれない。いいねをしてくれたり、感想を教えてくれることもある。書籍化に通じるコンテストにもボタンひとつで参加できてしまう。カク側が望むレベルに合わせて段階的に整えられた、これ以上はないという環境。だけど、それだけじゃありません。

一番は、書くことを当たり前の日常にしているユーザーの皆様の中に身を置くことができる、ということでした。 私は自宅よりも塾の自習室のほうが勉強が捗るタイプでしたから。毎日どんどん物語が生まれていくことが当たり前のこの場所でこそ、「書いてみたい」からのふわっとした始まりを、連載の継続、そして物語の完結にまでつなげることができたのだと思います。
物語ができあがっていくのは楽しいけれど、やっぱり書くことは大変です。一人きりだったら日常の忙しさに流されて、どこかでフェイドアウトしていたかもしれません。
システムの機能も、切磋琢磨できるユーザーのいる環境も、Webから書籍として飛び出していくチャンスの多さも。ここにはカク人のための全てが揃っています。誰にも内緒だけど一人じゃない。誰かに励まされたり、誰かを模範にしたりできる場所です。
あなたの中に眠っている物語を取り出す始まりの場所として、是非、カクヨムを試してみてください。

この度は、記念すべき第十回目のカクヨムコンテストにおいて栄えある大賞を賜り、本当にありがとうございます! 読む楽しみだけでなく書いてみたいという気持ちも育ててくれたカクヨム様とユーザーの皆様には、いくら感謝してもしきれません。今後とも、カクヨム、そしてカクヨムコンテストの名に恥じることのないよう頑張ってまいります。
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カクヨムコンテスト10 ファンタジー恋愛部門大賞『恋とはどんなものかしら』は2026年3月25日より発売中です!

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