え…まじで?

次の日の早朝、雪梛せつな香澄かすみ、そして朝月は草原に来て身体を伸ばしていた。

「ほんとにやるのかしら?会長かいちょーの勘違いよきっと」

朝月さつきは少し焦りながら言った。

「自分の教え子の観察眼を疑っているの?そういう事だよ」

雪梛に見事に逃げ道を塞がれた。

「今回は私が戦うわよ。本気で行くからその気でいてちょうだい」

香澄は脳の使用率をゆっくりと解放していき更に色付きになり準備万端のようだ。

「貴方、その状態でいいのかしら?」

「どういう意味かしら?あたしはこの状態が最善よ」

香澄は観察眼で朝月を観たが確かに嘘はなさそうに感じた。

しかし何やら観察眼がぼかされている気がした。

「何かしらこれ?貴方、なんだか歪んでいるわよ」

朝月は香澄にそう指摘されて流石に観念したようだ。

「よく気づいたわね、合格よ。そこまで来たご褒美といってはなんだけれども見してあげるわ。ホントの解放状態を」

朝月は気を沈めて無の境地までいき、1分間ほどかけて気配をガラッと変えた。

「凄いね。これは確かに会長の言った通りかもね」

雪梛は驚きながら朝月を見ている。

「確かに解放しているけどまだ慣れていないわね。準備運動は私が付き合ってあげるわ」

「ありがとうね紅葉。それじゃあ遠慮なく行くわよ?」

朝月は紅葉に確認を取ったあと手刀を爆速で振り空破斬を放ってきた。

紅葉は見切りで最小の最高率回避をしつつ朝月に警戒を向けた。

朝月は紅葉が回避しきった瞬間に重心を低くして準備を開始した。

紅葉は立体的視認を発動して起動を絞りそこから雪梛と同速と仮定してそこに手刀による受け流しカウンターを選択した。

朝月は居合いを開始しながら観察眼で紅葉の次の行動を把握して受け流しの選択をした。

紅葉は朝月が受け流すことを知っていたので一旦距離を取ることを選択した。

朝月は紅葉のカウンターを流しながら紅葉が距離を取ってくると分かったので紅葉の移動先に空破斬を放つことにした。

紅葉は空破斬を見切りで回避仕切った直後に流体無焦点で急接近をすることにした。

朝月は紅葉が急接近してくることが分かったため衝撃吸収のやり方を記憶の中の雪梛に観察眼をかけて確認しながら行うことにした。

紅葉は急接近からの超ショートブローの無焦点を朝月の腹に放った。

朝月は爆速で吹っ飛びながらも紅葉の接近を待った。

朝月の予想通りに紅葉は流体無焦点で追いかけてきていて地面にめり込ませようとしているようだ。

「甘かったわね」

「!?」

朝月は紅葉が触れてくる瞬間に先程の衝撃吸収した分を解放して紅葉を弾き返した。

弾き返した直後に衝撃透過の準備を整えて斜めに地面に着地した。

ザザー

「あたしもやってみようかな」

朝月はそう言うと脱力して足に集中し始めた。

ドン

「無焦点」

もはや香澄のコピー並の精度で再現に成功させた。

朝月は紅葉を吹っ飛ばした方角へと吹っ飛んでいった。

その頃紅葉は衝撃透過で着地して次の一手を考えていた。

しかしその時風を感じため思考を一旦やめてホルスターから銃を取り出して朝月が吹っ飛んでいった方向に撃ち始めた。

朝月は飛んでくる銃弾を手刀で受け流しをしながら紅葉の近くへと着いた。

「すごいわね本当に。まさか衝撃吸収を最初にやっているとは思わなかったわ」

紅葉は朝月の技の判断能力を素直に評価している。

「たまたまよ。それよりもいいの?色取りにならなくて」

朝月はわかっていながら言った。

「冗談はよしてちょうだい。あの時は死線を潜ったかかのような感覚だったのだから今じゃ厳しいわ」

紅葉は銃をホルスターにしまいながら言った。

「あら?続きはどうするのよ?まさかここでおしまいってわけじゃないわよね」

「そのまさかよ。まあ続きは雪梛とでもやってちょうだい。私は疲れたのよ」

香澄はらしくないことを言いながら雪梛の方へと戻っていった。

朝月は鍛え抜かれた眼で香澄の感情を読みとってから着いていった。




「待たせたわね。次は貴方の番よ」

「何でそんな悔しそうにしてんの?もしかして新技が最も容易く破られたとか」

「もちろんよ」

なぜか胸を張りながら言った。

「さっきはあんなに遠回しな言い方をしていたのに…まあいいわ。雪梛、あの時の死合の続きといこうじゃない」

「もちろんだよ。久々に面白いものが見れそうだね」

雪梛はスマホを取り出してメモを開き何やら文字を書き込んでいるようだ。

「よし。じゃあちょっと準備するから待ってて」

そう言って雪梛は気を沈めて即座に刹那モードになりそこから脳の使用率を解放して吹雪となった。

「早いわね。もしかしてもう自在に操れるのかしら?」

「まあこのぐらいだったらね」

吹雪は少し周囲を確認してから重心を低くして構えた。

「あの時とは比べ物にならないのよね。楽しみだわ」

朝月は面白そうに口元を歪めて抜刀し受け流しの準備をしている。

「やあ香澄ー。見にきたわよー」

「随分と面白いことをするわねあの子は」

先程雪梛はスマホで会長をここにくるように設定しておいたのだ。

スッ

不意に吹雪は動き出した。

超速で朝月に接近し、流れるように鞘から刀を出していき朝月の胸元を狙った。

朝月は立体的視認を疑似発動して大体の軌道を見た後に脳内でマイゾーンを再生してそれに対しての見切りによる回避を選択した。

吹雪は避けられると知っていたため振り切った後そのまま納刀せずに片足を軸として回転してそこから無月乱舞へと派生させることにした。

朝月は懐かしい技を使ってくると知っていたためこちらも対抗と言わんばかりに演舞:新月斬を使うことにした。

吹雪はまた刀にヒビが入ることを警戒したのか途中で中断して硬直状態にした。

「あら?最後までやらなくていいのかしら?それともここからが本気的な?」

朝月納刀して吹雪に問いかけた。

しかしわかっていそうな朝月は無視して吹雪は亜空間を生成しそこから桜吹雪を受け取った。

「これじゃないと話にならないからね。ここからが本気だよ」

吹雪は使っていた刀を亜空間に投げ入れて閉じ、腰に桜吹雪を拵えて抜刀した。

「やっぱりこれはいいね。あの頃を思い出すよ」

「吹雪、貴方まだ本気を隠しているでしょ?」

朝月にそんなことを言われて吹雪は苦笑いしながら答えた。

「いや流石に厳しいよ。私もまだそこまで強くはないからね」

吹雪は誤魔化したが朝月は更に詰めてきた。

「あたしの眼をバカにしているのかしら。見えているわよ隠れているのが」

吹雪は観念して脳をクリアにして回転速度を上昇させた。

「流石に誤魔化せないか。とはいえ最後のはブラフでしょ。私だって観察眼の欺きの方法を知っているんだから」

雪帰りの雪梛は何やらやばいことを言っている。

「ようやく観察眼すら同じ領域にきてしまったのね。まあ教え子が師を超えるなんてあたしはとっても嬉しいわ」

朝月はにっこりと雪梛に笑いかけた。

その瞬間に雪梛は危機を察知して見切りによる回避をした。

先程まで雪梛がいた場所に空破斬が来ていた。

「どんな速度してんのほんとに。こういうのを待っていた」

雪梛はにっと笑って見よう見まねで手刀を高速で振り下ろし空気を裂く空破斬を放った。

朝月は見切りで回避をして抜刀して剣先を地面に向けて構えた。

雪梛も抜刀してこちらは中段構えで立っている。

「思い出すわね。貴方に見切りを習得させていた時のことを」

「今じゃ朝月の自慢の観察眼すら習得しちゃったからね」

雪梛がセリフを言い終わると朝月は急接近して来てシンプルな斬撃を放ってきた。

雪梛は見切りと流体で回避をして回避し終わった瞬間に無焦点で朝月を吹っ飛ばした。

朝月はまたも吹っ飛ばされながら雪梛がどう出るのか楽しみの待っているようだ。

雪梛は先程の紅葉と全く同じようなムーブをとるようだ。

雪梛は無焦点で朝月を追いかけていき朝月に追いついたらそのまま接触を試みた。

両者触れた瞬間に弾けると知っているのでうかつに触れないし触らせないようだ。

雪梛は無焦点で空破斬を放ち朝月の注意を逸らした瞬間にもう1発空破斬を放った瞬間に接触を開始した。

朝月は二つの空破斬を避けるのに手一杯で雪梛まで回らなかったようだ。

雪梛は接触した瞬間に無焦点で突き落とそうとした。

朝月は反撃が間に合わずに落ちていってしまった。

(このまま衝撃透過で終わらそうかな)

雪梛はそんなことを考えながら落下を開始した。

その瞬間にしたから気配を感じて衝撃吸収に予定を変更した。

「その技じゃ耐えられないわよ?」

「え?」

朝月は爆速で上昇して来て雪梛に全力のパンチをお見舞いした。

「貫けー!」

「ぐはぁ」

雪梛がダメージをもらった。

あの雪梛が雪帰りの完全なる本気の雪梛がダメージをもらった。

朝月は笑いながら急降下していった。

雪梛は上に吹っ飛ばされながら現状確認をした。

ダメージは腹部の鈍痛だけのようだ。

思考能力から運動能力まで全て落ちていないようだ。

雪梛は落下しながら次の行動を考えていた。

着地して雪梛は待っていてくれた朝月に話しかけた。

「久しぶりにダメージもらったよ。何やって来たの?」

「あら?もう分かっているんじゃないかしら?単純にパワードライブに全乗せしただけよ」

だけと言っているが実際には超高負荷がかかって体が破裂するんだが…

まあ衝撃透過でいい感じに減らしたのだろう。

「この戦いは朝月の勝ちだよ。今度は最終までやろうね。そしてどうするのこの後?帰っていくつもり?」

朝月は少し考えてから回答した。

「そうね。当分はこっちにいるわ。そして今度は死ぬまでやろうね。雪梛」

二人はとりあえず会長と香澄の元に戻っていった。

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