未知との対決

「ここなら十分に広いだろう」

深雪みゆきについていきながら作者組は街の地理把握を開始していた。

「いい場所だね。静かだし広いし」

「なんか私たちのとこの山みたいな場所ね」

雪梛せつな香澄かすみは抜刀して刀の状態を確認してから納刀した。

「そういえば雪梛たちは魔法が使えないの?指輪していないけど」

深雪は当たり前な質問をした。

「そうだね。会長もいるから改めていうと私はこの物語の作者だよ。そしてそれと同時に別世界からきた人間でもあるんだよね。私の世界は刀が主流で魔法は存在自体がなかったからね」

「なるほどねぇ。つまりは別の戦闘スタイルとのバトルがしたいから世界を生成したという感じでよろしいかなー?」

会長かいちょーもなかなか鋭いようだ。

「そうよ。私たちは自分たちの限界点を探している最中なのよ。いわばこの世界、次の世界でも最強になることが今の所の目標よ」

香澄が簡潔にわかり易くまとめてくれた。

「すごい壮大な話だな…とりあえずどの組み合わせで戦う?」

深雪は面白そうに雪梛に問いかけた。

「そうだね、私一人のそっち二人で香澄は観察でどうかな?余力があれば香澄ともやって欲しいんだけどね」

「いいのか?これでも私たちはかなり強い方なんだぞ。会長に関してはこの世界随一の刀使いだし」

深雪は困惑しながら言った。

「大丈夫だよ。香澄も異論はないよね?」

「もちろんよ。もしかしたらいい試合になるかもって感じかしら」

そのまま押し切って雪梛と深雪たちは間合いをとって構えた。

「ここでの禁じ手とかって何かある?」

「とくにないわよー。間合いをとったらもう戦場よ」

雪梛は内心ホッとしながら重心を低くした。

「深雪、気をつけな。かなりすごめの居合いがくるよ」

「え?」

深雪は魔法専門なので居合いと言われてもと思ったが雪梛への警戒を強めた。

タッ

雪梛は高速で会長との距離を詰めて流れるような抜刀をした。

会長は元から狙われるのをわかっていたかのように動きはじめて流れるようにまるで力が入ってないかのような動きでマイゾーンを回避した。

「「!?」」

雪梛と香澄は驚いて深雪に関しては速度が追いついていなかったようだ。

「すごいでしょーこの技。私は流体って名付けているんだけどねー」

会長はどこか自慢気に言った。

「すごいね。まさかまだ知らないような動き方に出会えるなんてね。じゃあそのお礼としてこっちも回避もしてあげるよ」

そう言って雪梛は納刀して脱力の構えをした。

「どこからでもどっちでも攻撃してきていいよ。多分完全回避できるだろうから」

そういうと会長は抜刀して深雪は指輪をつけている指を雪梛へと向けた。

「深雪は遠方からの射撃、近接は私に任せて。これはガチでやらないといけないかもねー」

「わかった。久々に真剣にいくとしよう」

二人は連携の確認を終えて配置へと移動した。

「魔法ていうのは気になるね。もちろん会長の剣の腕もね」

「ふふ、楽しい試合にしようじゃないの」

会長は納刀して雪梛に近づき雪梛の腹の拳を当てた。

「いいね。ここでもそれを使える人がいるとは。これは今の状態なら本格的に面白そうだ」

「これを知っているのねー。中々色々なことをしていそうね」

会長は会話が終わった瞬間に拳に体重を乗せてものすごく短い距離を超速で動かした。

その瞬間に雪梛は高速で吹っ飛んでいった。

「初手から無焦点ゼロポイントを使うなんてマジなんだね」

深雪は少し引き気味に言った。

「帰ってくるよー」

会長がそう言った瞬間に雪梛は超速で戻ってきた。

「すごい威力だね。まあ2、300m程度なんだけどね。ちなみに今のはパワードライブっていってなんかすっごい技だよ。まあそろそろ真剣に始めようよ。遊びはここまでだよ」

そう言って雪梛は抜刀した。

「そうだねー。今のであったまったでしょー」

会長も抜刀した。

その瞬間に雪梛は見切りを発動させて深雪からのレーザーのようなものを最小限の最効率で避けた。

「すごいな。中々初見で避けられる人はいないんだぞこの技」

「まあ私は人じゃないからね」

冗談かわからないことを言ってから会長に斬りかかった。

会長は流れるような動きの流体で雪梛の攻撃を回避している。

攻撃が当たらないことを察した雪梛はコンセントレムを発動させて斬撃の質をかなり高めた。

会長は回避が間に合わなくなったためようやく刃を合わした。

雪梛はあえてそのまま振り切ることにした。

会長は刃が合うと同時に同速度、ほぼ同方向に流体を使って流した。

雪梛はいつもとは違う感覚に違和感を感じたが一旦距離をとって即座にショートマイゾーンを放った。

会長は刀を身体に当てさせてその瞬間に流体流しを使ってノーダメに抑えた。

「すごいね。こっちにも結果だけ似たような技があるけどそれは極めて異質だね。水を斬っているかのような感覚だよ。」

「そっちこそすごいよー。なんか無駄がない割に結構早いじゃん。意識でも沈めてんの?」

両者わかっていながら言っているようだ。

「なんか私援護できなくない?」

「まあいいんじゃあないかしら。貴方もこっちで観戦する?」

香澄は暇そうな深雪に話しかけた。

「そうだね。じゃあ私もみているとしようかな。正直思っていた以上にハイレベルだったし」

深雪は香澄と一緒に二人を観ることにした。

「さて、このままじゃ埒があかないけどどうする?」

「あらあら謙遜しちゃってー。その気になれば私なんて瞬殺でしょ?」

会長は笑いながらもどこか裏が見えない調子で言った。

「本気じゃないのはそっちもでしょ。まあこっちがいえたこっちゃないけどさ」

そう言うと雪梛はコンセントレムを解除して身に纏わせている雰囲気を変えた。

「お、ようやっと現状の本気できてくれるのかなー?それじゃあこっちも」

そういうと会長は目を瞑って深呼吸をしてゆったりとまぶたを開き赤く光る瞳を覗かせた。

「会長も赤くなるんだね。なんかいいよねこれ」

「それはわかるわよー。なんかこの状態になると一切負ける気がしないわー」

会長は人差し指を雪梛向けて急にレーザーを出した。

雪梛は見切りで射線を把握していつもの回避をした。

「なるほどね。もしかしたらと思ったけどそれになると魔法が使えるんだね。まあ最も、それはただのおまけだと思うんだけどね」

雪梛はそう言ってから重心を低くして構えた。

「そこまでわかるなんてもしかしたらいい眼を持っているんじゃないかしらー?まあ私にはそれが有効だから多分そうなんだろうけどねぇ。さあきな雪梛。最速剣を私に見してごらん」

会長は雪梛の行動予測線を張ってそこからの流体流しを選択した。

シュ

雪梛は動きはじめた。

先程とは比べ物にならない速度で同じ動作をして会長をきりにかかった。

会長は流体流しが間に合わないと判断したため雪梛が動いた瞬間に刀を射線に合わせてそこからの流しを試みた。

パチ

刃合わせまでは成功したのだがいかんせん速度調節をしたことがないためかなりのダメージをもらいながら後ろに吹っ飛んだ。

「あら、案外あっさりじゃない。まあ受け流しを習得していないから当たり前と言っちゃ当たり前だけども」

香澄は思ったままの感想を言った。

「すごい速度だな。私があんなんもらったら敗北だよ。まあ普段の魔法戦闘じゃこんなバチバチの近接戦なんてないんだけどね」

そんな会話を聞き流しながら雪梛は会長の方を見ている。

「あいたた。ダメージを貰うなんて久しぶりすぎて痛いなー」

会長はいつもの調子で戻ってきた。

「やっぱりね。さてとここからがようやくといったところかな」

「そうだねぇ。あんまり長引かしても読者さんに申し訳ないからねー」

会長は人差し指から球体を複数作成して雪梛の周りにばら撒き自身は居合いの構えをとった。

「これだよこれ。未知とのバトルはいつでも楽しいね」

雪梛は球体の仕組みを観察眼で把握して立体的視認を疑似発動させて大体の把握を済ませてから会長の居合いの分析に入った。

「さあ雪梛は今の私の本気について来られるかな?」

会長は目を見開いた。

その瞬間に動いている球体からレーザーが発射されはじめた。

雪梛は事前に軌道を把握していたため見切りによる球体のレーザー発射点の動きを読み取りレーザーを確実に回避している。

スッ

レーザーを大量に正確に発射しつつも会長は音が非常に小さいスタートを切った。

流体を使用して水のように流れるかの如く無駄のない素早い動きで抜刀した。

刹那モード45%にも匹敵する速度で雪梛にきりかかっている。

雪梛は想定よりも格段に速い速度に計算を狂わされて受け流しを“失敗”した。

なんとか刃を合わせられはしたのだが吹っ飛んでいってしまった。

「!?」

香澄は珍しく驚きを表情に出した。

深雪はもはや見えないので反応すらできずにいた。

「ふふ、速かったでしょー?」

会長は笑いながら吹っ飛んでいった雪梛に声をかけた。

「すごいスピードだね。私の現状と互角の人が香澄以外にもいるとは思わなかったよ」

雪梛は身体をはたいてから立ち上がり納刀した。

「ここまでとしよう。じゃあ香澄、やっていいよ」

会長は雪梛の言葉を理解して雪梛と一緒に少し離れた場所に行った。

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