雪梛…どうした?
「というわけでようやっと回ってきたね」
(信じられないよね。あんなにこのパート長くするとか言っていたのに結局この亜空間編がそろそろ終わるなんてね)
「で、どうするよ?まあ本気でやり合う予定ではあるんだけどこの刀じゃ持たないしこれ結構気に入っているんだけど」
極限向上は予想通りの質問に答えた。
(それなら心配はいらないよ。てんちょうがなんかくれるんだって強度だけ増した全くおんなじ刀を)
極限向上が指差した先には確かに刀があった。
「ふーん。まあなかなか気の利いたことができるじゃん。まあどうせあれでしょ、微妙な試合にしちゃったお詫びでしょ。まあそれなら香澄にもなんかあるべきだけどね」
雪梛は素振りをしながら言った。
(まあわたしにとっちゃわたしとの対戦だけでおつりがきちゃうんだけどね)
極限向上も刀を体に慣らしていた。
「にしても強すぎじゃない?一時間ってまさかここの一時間を切り取ったってわけ?」
(その通りだよ。まあここが異常地帯だからこそのわたしの特性が伸びやすかったんだけどね)
2人は刀を納刀して間合いをとった。
「雑談はここまでにしてじゃあ早速始めようか。なんかこのフィールドは死んでも死なないらしいからわたしが死ぬまでで異論はないね」
(もちろんだよ。もとよりいっぺんわたしには死んでもらいたいからね)
極限向上は羨ましいような視線を向けながら言った。
(じゃあまずはそのままの本気のマイゾーンをうってみてよ)
「いいよ」
雪梛は気を沈め無の境地まで辿り着いた後にゆったりとした動きで柄を握り、重心を低くすぐにでも動き出せる状態になって硬直した。
(やっぱり自分にマイゾーンをうたれるのはなんか違和感だな)
極限向上は観察眼による大幅強化を行なった見切りを発動させながら言った。
スッ
雪梛は静かにまるで音が鳴ってないように錯覚するほど滑らかに動き出しそして鞘から流れるように刀を抜刀していきコンマレイ1にも満たない時を経て刀を納刀した。
(確かにいい動き?かな。なんかやっぱりちょっと鈍っているね。まああんなに脳に制限をかけ続けてきたから当たり前っちゃ当たり前なんだけどね)
極限向上は見切りで軌道を把握していたため手刀による受け流しで軽く流したようだ。
「流石わたしだね。でもこれくらいなら別に見切り強化もいらないかったんじゃないの?」
(一応の能力の確認だね。自転車でもいざ本番でメカトラとか嫌でしょ?)
雪梛は頷きながら集中力を高めて一旦の刹那モードになった。
(さてそろそろ解除しな。刹那モードのリミッターをね)
「わかっているよ。そうしないと1ターン目で敗北になっちゃうからね」
雪梛は意識的に制限を解除しにかかり10秒ほどたっぷりかけて確実に解除した。
「これが正真正銘の刹那モードだよ」
(うん。特に問題は見受けられないね。じゃあこっちも使うからね)
極限向上は雰囲気が変わったかと思ったらすでに刹那モードになっていた。
「やっぱり全然違うね。まあこのまま一旦やってみるよ」
(さあ遠慮はいらないよ。まあ真剣な刹那のマイゾーンなんて何年振りなんだろうね)
「それだけ平和ってことだよ。ほんとに退屈極まりない」
雪梛は文句を言いながらマイゾーンの構えをとった。
(さあ傷一つを目標にしな。といっても本当に掠らせでもしたらわたしは引退ものだけどね)
極限向上は非常に落ち着いていてどこか観戦でもしているような雰囲気すら感じる。
パッ
本当に静かなスタートだ。
雪梛は先程よりの格段に速い速度で動いてまるっきり同じ動作を素早くやった。
そして納刀する直前に気配を感じて斬撃可能範囲から回避をした。
「すごいね。まあこれの特性を考えれば当たり前のことをなんだけどね」
(そういうこと。まあでも良かったよ。これならビターも瀕死まで持っていけるよ)
「馬鹿にしているでしょ。それじゃダメだって知っているくせに」
雪梛は久々の本気に高揚感を感じていた。
(まあカウンターを見ずに軌道理解して確実に避けれているのは素晴らしかったよ。まあわたしにはコンセントレムもハイテンションもいらないんだけどね)
極限向上は抜刀して中段構えをとった。
「最後に一つだけ答えてもらうよ。この並行世界のわたしだからこその質問だよ。人生ってどういうもの?」
極限向上は笑って答えた。
(知っているでしょ。極地へと上り詰めるための山だよ)
「ありがとう。これで自信を持って前に進めるよ」
雪梛と極限向上は間合いをとって中段構えで止まった。
刹那モードの特性で見切りを使うと相手が動いた瞬間に行動可能範囲が割り出されてそこから更に次の行動可能範囲や姿勢、さらにはどの程度の力が使われるかが瞬時にそれなりの精度で割り出されてしまうしまうため下手に動けないのだ。
「こっちからいくよ」
(好きにどうぞ)
雪梛は動いた。
その瞬間に超高度な試合が行われた。
雪梛は速撃を使って滑らかに動きほとんど全方位に注意を向けることが可能な状態で間合いを詰めてシンプルな斬撃を放った。
極限向上は雪梛が動いた瞬間に隙があまりないことがわかったためここは一旦回避行動からの先読み斬撃を選択した。
雪梛は極限向上が動いた瞬間にカウンターの線が消えたため回避をしてからの先読み斬撃を選ぶと判断して受け流しをする方向で動いた。
極限向上は雪梛が動いた瞬間に受け流しを取るとわかったためそこから来るであろうカウンターの受け流しの体勢へと注意を向けた。
雪梛は極限向上がカウンター受け流しを取るとわかった瞬間にカウンターを出しながら銃を取り出した。
極限向上は雪梛が銃を出した瞬間に受け流し後の隙を突かれると判断したためカウンターを取りやめてこちらも銃を出すことにした。
雪梛はミラーガンの可能性を考慮して更にもう一撃刀をふることにした。
極限向上は銃撃はないのがわかったのでカウンターへと移行することにした。
雪梛はカウンターが来るので回避特化の見切りで避けることにした。
極限向上は避けられることがわかっていたのでセミ状態の銃を1発だけ雪梛の肩に撃つことにした。
雪梛は銃弾の軌道まで完璧に把握していたためそこにミラーガンを撃ち更に極限向上の胸に1発撃つことにした。
極限向上はミラーガンと殺しの銃弾が来ることがわかっていたのでミラーガンをミラーガンした際の反射角度を計算した後に殺しの弾にもミラーガンが当たるようにして更に3発脳天、左胸、右胸に撃つことにした。
雪梛はミラーガン返しがきて更に久しぶりの死の弾がくると知っていたので全て1発で決められるように緻密な角度計算をして撃ってから納刀してもう一丁銃を出すことにした。
極限向上は1発で看破されるのがわかったため銃をしまってショートマイゾーンを使うことにした。
雪梛はショートマイゾーンの速度を見切ることができないため立体的視認を擬似的に発動して行動範囲を可視化してそこから更に一本の線を選んでそこにカウンターをすることにした。
極限向上は通常よりは速いショートマイゾーンを雪梛に放った。
雪梛は見事読みを成功させて銃をクロスさせて受け流しをしてからのゼロ距離射撃をしてその瞬間に銃を片方しまって抜刀した。
極限向上はゼロ距離射撃を衝撃吸収からの衝撃保留で抑えてから速撃でフルブレイクを刀で放った。
雪梛はギリギリ見切れたフルブレイクを受け流しからのカウンターでダメージを与えにいった。
極限向上はカウンターを入れに来ることがわかっていたのでそのカウンターを受け流してから距離を取ることを選択した。
雪梛はカウンター返しが来ることがわかっていたためそのカウンターを受け流してから距離を取ることにした。
全ての動作を終えて両者は納刀した。
「流石わたし。こんなに面白い試合は初めてだよ」
(それは同感だね。まあ超高度な読み合いになっていてやばいんだけどね)
両者心底面白そうにニヤけている。
「それじゃあ2ターン目といく?」
(いやその前にこんなやばい試合と変な技について解説すべきじゃないかな?)
雪梛は面白そうに笑いながら頷いた。
「それもそうだね。まあこの見切りの特性はさっき解説があったからいいとして、この試合の内容は見切りによる先読みを先読みして一手先が常に変わり続けるからいかにしてこれを読み続けるかとそれを崩せるかが鍵となる試合だね。そしてさっき極限向上が使ったショートマイゾーンは発動時のロスを最小限にしつつも平常時の本気マイゾーンよりはちょっと速いっていうまあ見切り崩しの一つだね。まあ他にも相当上手く使えばビリヤードでも予測不可状況を作り出せるんだけどね。まあ具体的な使い方としては弾数と反射回数を莫大に増やしてそこからのキーをたくさんにサブキーからの相手の撃った弾すらも取り込む包囲網を完成させることができればまあいけるんじゃないかな」
(まあそんな芸当ができるのはこの世界じゃ香澄だけじゃないかな?)
香澄もまた脳の使用率の制限をかけ続けていたから多分できるだろう
「まあとはいえそろそろ2ターン目といこうじゃないか。それか何か面白い条件でもつける?そうしたらようやっとガチのバトルができるんじゃないかな」
(流石に見抜かれるよね。まあマイゾーンを使っていない時点でバレバレなんだけどもね)
2人は間合いをとって脱力して両腕をぶら下げている。
「あと2ターンで終わりかな?」
(まあそうなるかね)
今度は極限向上から動き始めた。
先ほどの雪梛のように良い体勢のまま接近してストレートを放った。
雪梛はストレートが来ると知っていたのでそれをあえて喰らって衝撃吸収を選択した。
極限向上は回避しないことを知っていたので立体的視認を擬似発動させて進行方向を見切ることを選択した。
雪梛は攻撃をわざとしてこないことをわかっていたので期待に応えるために速撃を10発身体に打ち込んでからマイゾーンの姿勢をとった。
(さあきな。それでようやっとわたしのマイゾーンに追いつけるレベルだよ)
「どいつもこいつもイカれてんな」
雪梛はマイゾーンの速度だけで動きそのまま極限向上に全火力が乗ったパンチをおみまいにかかった。
極限向上は速度上昇に力を使うかと思ったが読みを外したようだ。
しかし早くなってはいないので動いた瞬間のパワーからの速度を瞬時に割り出してパンチの到達時間に受け流しを発動させた。
ドーン
極限向上は吹っ飛んでいった。
「読みがちょっとだけ甘かったね。まあ過信というか慢心というかなんだけどね」
(まさかそんなに重量感を乗せることが可能とはね。まあ打撃戦最強格の衝撃透過で流したから特に問題はなかったんだけどね)
極限向上は身体を払いながら立ち上がった。
「まあ経験したことのないことに関してはしょうがないんじゃない?なにせ最強と最強の戦いなんだからね」
(それは確かにそうなんだけどね。まあ速度からのパワーの予測自体は可能だったんだけどわたしの受け流しの限界点を知りたかったってのもあるからね)
どうやら命の安全性よりも好奇心が勝ってしまったらしいようだ。
「どうする?このまま2ターン目継続する?」
(いやいいかな。十分楽しめて新たな発見もあったからね。じゃあ3ターン目の準備といこうじゃない)
2人は納刀したまま間合いをとって重心を低くして柄を握った。
「一発勝負だよ」
(当たり前だね)
2人は一寸も動かずに時を待った。
「雪は普段は穏やかに」
(しかし時折吹き荒れる)
「この吹雪の中」
「(貴方は前が見えるかな)」
シャ
雪梛の胸が斬られてこの戦いは終了した。
雪梛と極限向上は超速の刹那のマイゾーンを同時に放ったが極限向上は雪梛の読みよりも格段に速かった。
これが致命的ミスとなって雪梛は久々に敗北した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます