対ATのパワーバトル
静かな山の中にいくつかの話し声が聞こえてきた。
朝の6時になった。
既に全員揃っていて準備運動をしていたところだ。
「
言映は大体予想がつきながらも聞いてみた。
「
「どんなの貸したの?」
「あんまりいじってないよ。ギア比を少しいじってブレーキを変えたぐらい」
「ギア比いくつにしたの?」
「スプロケ8-34のフロント60」
「バケモンじゃねえか」
言映は呆れながら言った。
「仕方ないでしょ。これでも1番安全なのを貸したんだから」
「このチャリってそんなにバケモンなのかしら?」
「いつの間に!私の背後をとるとはやるでは無いか」
「これで三回目ぐらいよ」
香澄は呆れ気味に言った。
「話をチャリに戻すとそのチャリは市販のチャリの1.5倍ぐらい速度が出る」
「それは……だいぶやばいわね」
珍しく香澄が引き気味にならながら雪梛を見た。
「あんまり文句言わないでよね。私のチャリが世界で1番ギア比がやばいと思うんだから」
雪梛はそう言うとチャリをまたいだ。
「香澄、目的地までよろしく」
「ええ、分かったわ」
出発しそうな香澄に言映は気になったことを聞いた。
「どのぐらい離れているの?」
「ざっと30kmぐらいかしら。あんまり遠くないから安心して」
「ついにあたしまで距離感がバグってきてしまったか」
そうして3人は6時30分頃に移動し始めた。
「このチャリ相当速いけどあなた達も相当速いじゃない」
香澄はサイクルコンピュータに記載されている時速を見ながら言った。
「うん。まあ今日はゆっくりめだからね」
「60kmでゆっくりめ?」
香澄は少し困惑しながら聞いた。
「そう。とはいってもこの巡行速度はプロでも出せないだろうけどね」
「なんでそんな速度だしてるのよ」
「仕方ないでしょ。こんな条件が整ったところで速度を出さない訳にはいかないでしょ」
珍しく雪梛が反論をした。
「そんなことはいいからさっさと向かってしまいましょう」
そう言って香澄は速度を少しばかり上げた。
軽く漕ぎやっと組織に着いた。
「どんな風に突撃するの?」
言映は3人で行ったら秒殺だから聞いた。
「ジャンケンで今日の戦闘者を決めましょう」
「分かった」「いいねー」
2人の同意が得られたところで早速ジャンケンが始まった。
「「「ジャンケンポン」」」
今回は言映が勝利した。
「よっしゃー1番乗りだぜー」
言映勝つと早速組織に向かって走り出していた。
入口から言映が入った瞬間もう戦いが始まった。
近距離に刀使いが3人、少し離れた場所に銃使いが2人と襲撃に慣れているスタイルだ。
「これは苦戦しそうだ〜」
言映軽い口調で敵に向かい始めた。
まずは近接から倒しにかかるようだ。
このとき言映は銃持ち3人と近接が重なるように立ち回った。
銃持ちは同士討ちを避けるために隙がある言映を撃てずにいる。
言映は相手がどのように攻撃してくるか避けながら見ていた。
これは雪梛に教わったことで複数人戦闘の場合相手のスタイルを見切って確定で生じる隙をきるのが良いと言っていた。
本人曰く相手が素人だと確定で連携ミスか穴が空いてるだそうだ。
(なかなかいい連携だけど1人が常に動いてるな)言映はそう思った。
相手はなるべく攻撃が途切れないように攻撃をしてきているから反撃を与えないためだと思っていたが違ったようだ。
1人が常に動いていることを相手に気づかせないためだったようだ。
ついに言映が反撃を始めた。
言映が動き続けている1人に狙いをつけて攻めはじめた。
DFと勘違いをしていたのか急な接近に戸惑ってしまい接近を許してしまった。
「てりゃ〜」
言映は二刀を平行に振り目と腹部をきりつけた。
相手は受け止めようとしたが目にとんできた刀に反射的に目をつむり刀の角度がズレてしまった。
上と下とでかけるべき力が変わってしまい後方に飛ばされてしまった。
「ダメだな〜。平行に振ってるんだからそこの間にジャンプでよけないと」
「それは流石に無理があるんじゃないかしら」
香澄にツッコまれていたが言映は後方の少し上気味に刀を振った。
「リーダーのかた……」
背後から叫びながら斬りかかってきた剣士の胸を正確にきっていた。
「で、まだ戦うってわけ?」
言映は1人の剣士と2人の銃使いに言った。
「いやー、命だけは」
そう逃げながら叫んでいた。
「呼ばれて飛び出てただいま参上」
「今度はなんだよ」
呆れ気味に声の方へ向いた。
「誰も呼んでないよ」
雪梛のツッコミに言映がふりむいた。
「雪梛の知り合い?」
「うん。一応」
「こりゃまた面倒になりそうだ」
とりあえず戦うかもしれないし会話を試みよう。
言映はそう考え話しかけはじめた。
「あなたの名前は?」
「まずは自分から名乗るものじゃないの?」
「そりゃ失礼した。私は言映、黒ロングは香澄、無表情は雪梛よ」
「あら、あの子は前から変わらずね。私の名前は朝月よ。あなたと同じAT型」
一点集中
集中破壊の朝月さつき(16歳 女 二刀)AT
呑気な性格だが注意深く見ている。
得意技は少ないが基礎がきっちり固まっているためほとんどの技に対応できる。
言映は少し驚きながら聞いた。
「なんであたしがATとしってるのよ」
「さっきの戦いを見ていたからよ。最初はDFかと思ったけど流し技を1個も使わないからもしかしたらと思っていたけどあたりだったってだけ」
「あんたも雪梛みたいな洞察力してんな」
言映はもはや呆れもせずに言った。
「この後私と戦うの?」
「実力も見切れない程あなたは弱く無いでしょ」
「全部お見通しってわけか」
実際言映と朝月が戦ったら勝率は高く見積っても言映が2割といったところだろう。
「でもあたしはやってみないと分からないんだよね」
「どうしてそこまで私とやりたいの?」
朝月は思った疑問を言映にぶつけた。
「今日の戦い当番はあたしだからってだけ」
「まあいいわ。ルールはどうする?」
「雪梛よろしく」
「なんで私なのよ。まあ考えるけど」
急に指名されたが雪梛は当たり前のように応じた。
「ルールはシンプルで相手に降参したら負け」
「死にかけでも降参しなかったら?」
「殺していいよ」
このルールで言映の緊張感が上がった。
実力差が大きい為瞬殺されると文字通り死ぬからだ。
最も朝月がそこまで非情な性格には見えないが。
「もう開始の合図出していい?」
「OKよ」
「じゃあ始め」
開始の合図とともに2人が相手へ走り出した。
まずは力比べをするようだ。
ガキィン
2人の刀は刃をクロスするように合わせてぶつかった。
すぐに後ろに跳躍して距離を取り朝月に問いかけた。
「なんで全力で来ないのよ」
「限界までもっていったほうが面白いでしょ」
朝月はそれが当たり前のように答えた。
(また変なやつが増えたな)
言映は少し呆れながら下半身にちからを貯めた。
「なんか技があるんでしょ。雪梛と互角ぐらいの。待ってあげるからいつでも来な」
「じゃあ遠慮なくいくよ」
そう言って言映は初月乱舞をうちはじめた。
「あの人とはどういう知り合いなの?」
疑問に思った香澄が雪梛に聞いた。
「昔に組織を壊してたら急に出てきて戦って仲良くなったぐらい」
「なんか滅茶苦茶ね」
そんな感じの人しか居ないのかと諦め気味に言った。
「朝月とは結構斬り合いをしててそこで私が上達したところはある」
「そこで何か技でも身につけたのかしら?」
「そこで見切りを習得した。元々気配感知だけは自力で身につけたけど見切りまではいかなくて朝月と斬り合いながら集中してたらなんか出来た」
「あなたはそれでも人間なの?」
「もちろん違うよ。それにあなたもね」
「あら、思ったよりもいいじゃん」
「あんまりなめてると痛い目みるよ」
言映はそう言いながら徐々に速度を上げている。
だが限界は近かった。
「あら、それでもう限界?想像を少し超えたぐらいね」
「なめるんじゃないわよ!」
言映がそう言った直後、既に上がらなくなっていた速度を上げてきた。
「お、いいじゃん。でも足の限界には気をつけな」
「……」
「あら、もうほとんど聞こえないぐらい集中して…いや、限界を超えているだけか」
言映自体に言葉は聞こえていたがその言葉を理解することが出来なかった。
血の回る速度が体に追いついてなく頭が回らなくなってきてしまった。
足がちぎれそうになりながらも加速してくる言映をみて
「このまま待つと負けちゃいそうだからそろそろ終わらせてあげるわ」
そう言うと朝月は更に集中力を高めて攻撃のタイミングをはかり全力できりつけた。
バキィン
刀が折れないのが不思議なぐらいの勢いでぶつかり周りに突風が起きた。
朝月の全力とほぼ同格の威力だったがあと一歩言映の威力が足りなかった。
「ぐはぁ」
人智を超えた反射神経でギリギリ下がり何とか致命傷を回避した。
「ふぅ、久々に負けるかと思っちゃったよ。まさか2度もこんな光景に出会えるなんて」
片膝をつき疲労しながらしかし顔は嬉しそうに笑いながら言った。
「言映を病院につれていこう」
「ええ、そうね」
2人はそんな会話をしながら準備をしていた。
出発前に雪梛は朝月に話しかけた。
「朝月は一緒に来る?」
「そうね、私も見てもらおうかな」
そう言って朝月は立ち上がり雪梛たちについて行った。
「なかなかな怪我じゃない。久々に見たわ。こんな状態で生きている人」
病院の先生は少し驚きはしたがそれよりも珍しいものをみている感じで運んでいた。
4人は4、50分ぐらいかけて街の方まで戻ってきた。
言映のチャリは雪梛が分解して持って帰ってきた。
「朝月さん?はもう大丈夫なの?」
怪我をしていたのに言映を見に来ていたから香澄は聞いた。
「私は大丈夫よ。あなたも分かるでしょ?この程度の怪我をしすぎると治りが早くなるの」
「あなたは私の事を知っているのかしら?」
「そりゃもちろん。ほとんどの人は強い銃使いをあなたしか知らないぐらいだから」
香澄は少しこの言い方を疑問に感じた。
「その口ぶりだと、あなたは他に私と同じぐらい強い銃使いを知っているのかしら?」
「おっと、少し口が滑ったようだね。まあ、そんなことより言映の心配をしてあげたら?」
「そうね。でも医者の邪魔にならないようにちょっとばかし外で話しましょ?もちろん雪梛もくるわよね?」
「うん。そうさせてもらうよ」
朝月ともう少し細かく話をしたかったがそれは外に出てからでも大丈夫だろう。
そう思い香澄は2人と共に外へと向かった。
3人は歩きながら近くにあるカフェへむかった。
「いやー、人とゆっくり話すのは久しぶりだなぁ」
3人は飲み物を注文した後話し始めた。
「それは冗談でしょ。人と話すのが大好きなんだから」
余りにも冗談のように言っていたから雪梛が指摘した。
「バレたか。まあそんなことより、香澄さんはさっきの続き話したいんでしょ?」
「ええ、そうよ。」
「なんの話しをしてたの?」
同席していなかった雪梛が2人に聞いた。
「私と同格レベルの銃使いがいるっていう話しよ」
「そうそう。今から話すから聞いて欲しい」
そう言って朝月は少し間を開けてから話し始めた。
「丁度今から2ヶ月前位に凄腕の銃使いが組織破壊に向かったって話を聞いたんだよ。そんな話を聞いたらいても立っても居られなくて直ぐに出発したんだよ。そしたら丁度戦ってる所を見ることが出来てね凄かったのよ。戦いぶりを口で説明できないのが悔しいけど香澄と同格かなって思ったんだよ」
少し悔しそうに語り終えた朝月に香澄が質問した。
「その子が次に狙いそうな組織って分かる?」
「お、早速聞いてくるね。好戦的な噂はホントなのね。あたしも丁度調べ終えてて大体の目星は着いてるよ」
その回答を聞いて香澄は少し笑った。
「じゃあ明日早速行きましょう。直ぐに準備をしなさい」
「ちょっとまって」
静かに聞いていた雪梛が抗議の声を上げた。
「どうしたのかしら?何か問題でも?」
「言映の回復まで少し待たない?別に特段大急ぎでないと行けないわけでは無いでしょ」
そう言われた香澄は少し考えてから発言した。
「確かにあの子にも見せないと後で文句でも言われそうだわ。だとしてもどのようにその子に会おうかしら」
3人は少々考えていたが雪梛が1つ案を思いついた。
「朝月、その子の連絡先は?」
「あー!すっかり忘れてたその手があったか」
「そんな初歩的なところから見逃すとは…」
「じゃあこれで安心だね。言映の回復でも待ちながら暇つぶしをしよう」
「そうね」
3人はそんな会話をしながら家へと帰って行った。
「もしもし、朝月と申しますが…」
「…あー!この前あった強そうな人?」
「多分その人です」
言映と戦ってからはや2週間。
朝月は銃使いに連絡を取っていた。
「で、急にかけてきた来たけどどうしたの?」
当たり前の質問を朝月に投げた。
「あたしは今香澄と一緒にいるのよ」
「それは私の知っている香澄さんで?」
「そうその通り。あの銃を使う」
「それがどうかしたの?」
「あなたと戦いたいらしいんだ。是非戦ってくれないか?もちろんそちらに余りに利点を用意するような事は出来ないけど」
少しだけ朝月は遅く喋った。
「ぜひ戦わせて下さいな。香澄さんと戦えるなんて利点がありすぎだから」
「そう言って貰えて良かったよ」
ほんの少し安堵しながら言った。
「何処に何時に行けばいいの?」
「それは…」
「香澄さん!あの子と連絡が取れて場所も決まったよ」
嬉しそうに朝月は香澄に話した。
「香澄でいいわよ。それで、何処に何時に行けばいいのかしら?」
全く同じ風に聞かれて少しばかしおかしくなった。
「明日の10時30分に約30km地点の組織」
「何時ぐらいに出るのかしら?」
「まあ、9時30分位でいいんじゃない。準備運動を少ししたいでしょ?」
「そうね。そのぐらいがちょうどいいわ。2人には私が連絡しておくわ」
少し弾んだような声で香澄が答えた。
香澄は返事をすると雪梛の家に向かい始めた。
そう言って歩くこと5分程。
ピンポーン
ガチャ
「珍しいね、香澄から来るなんて」
雪梛は全く珍しくなさそうに答えた。
「どうせつくならもっと上手くなさいよ」
「それで?要件は」
「明日の9時30分にここから30km程度離れた組織に向かうわ」
「30kmか、近くの組織は無くなっちゃったからね」
最近は雪梛たちが暇つぶしで潰し過ぎてここらの反社会勢力が無くなってしまったから探すと少し遠くなってしまうのだ。
「弁当でも作って持ってく?」
「それがいいわね。戦闘後は12時を回ってそうだから」
そうしたら雪梛は支度をすると言って部屋に戻って行った。
(私も何か作ろうかしら)
そう考えた香澄は雪梛と行こうと扉の前で待っていた。
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