第18話:冒険者の日常の結末と浪花節? ~俺のわがまま~
――アルスフェルド子爵家・別邸・クォイラ本拠地
クォイラはティンパファルラと話していた。
「どうでしたか? 大学教授は?」
「うーん、つまらなかったけど、いい経験になったよ。やっぱり冒険者が一番だね、なんといっても経験値という実学と自由度が桁違いだ、お金も入るし」
「ルザアット大学教授職を簡単に蹴るのは貴方位のものですよ、ティンパファルラ」
「ま、知恵の樹があれば、学術という意味では困らないからね、ってな訳で、クォイラ、報酬先払いよろしく」
「はいはい、分かっています。知恵の樹を我が家名での使用を許可しますよ」
「~♪ これでやっとアマテラス時代のアクセス権限が戻ってきた訳か、しかし変わったねえ、君が家名を使うようになるとは、あれだけ嫌っていたのに」
「ま、カミムスビとしての活動に、我が家名はとても便利ですので」
「まあ、我がクラン長がアンポンタンじゃ、しょうがないよね~、ってほら、何をぼーっとしているの?」
とクォイラの後ろに立っている俺を見る。
「ボクのお茶が無くなりかけている、気が利かないねぇ」
「…………うす」
と紅茶を注ぐ。
「久しぶりだねぇ、ガクツチ、一度も連絡を寄越さない不義理はヘタレな君だからしょうがないさ、許してあげる」
「…………あざっす」
「ああそうそう、聞いてのとおり大学教授についてなんだけど辞めて来たよ、思ったよりも退屈だったんでね、生徒達もヘタレばっかりだし、という訳で今は晴れて無職だ」
「…………それは大変っすね」
「まあ1人、モノになる君がいるからいいか、ふふっ」
「…………その目辞めて」
「ガクツチ」
すっとクォイラは、ワイングラスを差し出す。
「…………うす」
とワインを注ぐ。
さて、俺は今、クエストの打ち合わせという事で呼ばれてここにいる、その筈なのに。
何故か執事の格好をさせられている。
そう、参加と称されて、いきなり着替えさせられたのだ。
ティンパファルラは俺をじろじろと見る。
「しかし、イケメンには程遠いなぁ、執事に尽くされるのは女の浪漫なんだけどなぁ、やはりイケメンじゃないと駄目か」
「すみませんねイケメンじゃなくて(#^ω^)ピキピキ」
「あ、そうだ、ガクツチ、あの例の、なんだっけ、ガクツチの好きな貧乏飯」
「異世界ベルムス巻っすね」
「アレ食べたい、作って」
「ざ、材料が、その、はは」
「買ってくればいいじゃない」
「そんな「お菓子を食べればいいじゃない」みたい感じで言われても」
「ガクツチ」
今度はクォイラに呼ばれる。
「な、なんでしょう、お、お、おじょうさま」
「うーーーーん、やっぱりイケメンじゃないと何も感じませんね」
「すみませんねイケメンじゃなくて(#^ω^)ピキピキ」
「材料ならここに用意してありますよ」
と近くの棚を指さす。
「……用意いいっすね、おじょうさま」
といそいそと作る。
「お待たせしました、おじょうさま」
「あーん」
と口を開けるティンパファルラ、くっ、これは致し方ないか。
「どうぞ、召し上がれ」
と口に入れてモグモグと食べる。
「うん、程々にまずいね、変わってない」
「いやぁ、美味しいと思いますけどね、って話が進まない感じがするんですけど、打ち合わせをそろそろ」
「やる事なんてないでしょ、アマテラスの時と一緒だよ、言ったでしょ? ハーレム許す代わりにボクの奴隷になるって約束覚えてない?」
「そんな約束してないっすわ~(#^ω^)ピキピキ」
「まあでも、お互いに知り尽くしているしね、いやん」
「あのさ、それなんだけどさ、ずっと気になる物があるんだけどさ」
と俺の視線の先。
ティンパファルラの後ろに滅茶苦茶デカい2メートル四方のリュックが置いてあった。
「これ、なんすかね?」
「荷物持ちを頼むよ」
「あの、これを?」
「冒険に必要なものすべてと、今回の学術調査関連で必要なものが入っている。壊さないでね」
「い、いや、そうじゃなくて、これを、持っていくの?」
「そうだよ? 君が持つんだよ?」
「えーーーーーーー!!!!」
「力仕事は男の仕事でしょ?」
「いやいやいやいやいやいや、ティンパファルラさんや、貴方そこら辺の男よりもよっぽど」
「君に比べればだよ」
「あのー、えっとクォイラさん」
「なんでしょう」
「よろしければ、このリュックをストレージ魔法で」
「すみませんカグツチ、実はこのストレージ魔法」
「2人用なんです」
「なんでそのネタお前が知っているやねーーん」
と虚しく木霊したのであった。
とまあいい、まあこんな扱いを受けるのは承知の上できたのだ。不義理は本当だからな。
「ティンパファルラ」
「なんだい? 学術調査についてはボクの指示に従ってもらうけど」
「その点について、俺のワガママを一つ聞いて欲しい」
「伺いましょう」
「俺のわがままは、、、」
とファル(俺はこう呼ぶ)に頼むが、、、。
「はーーー、まあいいけど、君も相変わらずだねぇ」
と呆れたような感心したような声を出したのであった。
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